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47-3.獣

 あれは半年前、牛が一匹戻ってこなかった。その牛はよく戻ってこないことがあったから誰も重く受け止めていなかった。その時16歳だった娘が探してくると言って森まで探しに出た。

我々はあの森を知り尽くしているし、牛は娘によく懐いていた。だれも心配していなかった。

しかしその娘も牛も戻ってくることはなかった。次の日に村の皆で森を探し回った。

するとズタズタにされた牛の亡骸が見つかった。嫌な予感がしてその周辺を探し回った。

それが彼女の遺体なのかはわからない。確かめようがなかった。だが、状況から察するに無造作に地面の穴に詰め込まれた肉片が彼女の遺体であることは明白だった。

我々は彼女の遺体を持って帰り村の敷地内に埋葬した。しかし、それがいけなかった。

奴は我々を獲物を勝手に持ち去った不届者だと考えたのだろう。

奴はしばらくしてから村を襲撃してきた。その時に婆さんがやられた。

我々はそれから武器を調達して軍にも救援を要請した。しかし、軍は結局来ず反乱軍も首都が近いせいで呼ぶことができなかった。なので自分たちで戦うため森側の柵も強化して見張りもつけた。男たちは戦う訓練をした。

だが、奴は我々の対策のはるか上をいっていた。

朝、我々が起きると見張りだった男が喉笛を噛み切られて死んでいた。見張りが我々に知らせを送る前に殺されたんだ。それに、厳重に強化した柵も簡単に破壊されてしまっていた。

当然俺たちはますます対策をした。見張りも増やしたし、全ての行動を集団で行うようにした。

だが、そこから二ヶ月なにも起こらなかった。至って平和だった。

それ故に我々の気持ちは緩んでいた。

次に殺されたのは私の妻だった。畑仕事中、ほんのちょっと、ちょっとだけ。数分目を離した隙に妻はもう…すまない。

それまで我々はこの惨劇を起こす者の正体を見ることすらできなかった。しかし、先週我々は奴の正体を見た。

先週の昼間だ。昼間だぞ。白昼堂々と奴は村に押し入って運悪く逃げ遅れた子供とその母親がやられた。我々は訓練通り武器を持って多少の犠牲を出してもこの場で仕留めると意気込んで二人の遺体を貪り食う奴を囲んだ。

だが、我々はそこから一歩も動くことができなかった。奴はあまりにも恐ろしすぎた。

全身がゴワゴワした黒い毛に覆われていて、全長は三メートルくらいあった。四足歩行でクマと狼を足して二で割ったような外見だった。

我々は足がすくんで一歩も動くことができなかった。その中を奴は悠々と森へ帰っていった。

そして今晩も家畜のブタが襲われた。

この村で今起きている凄惨な事件の説明が終わった。俺もロスも絶句していた。抱いていた仔豚でさえもじっとしていた。

「ひどい…ですね。」俺は言葉を搾り出す。

「そうだろ。」

「もしかして俺たちが泊めてもらった家も…」俺は察してしまった。

「想像通りだ。」男は目をふせる。

「だからな。旅人さん。あんたらは早くこの村を出なさい。巻き込まれる必要はない。」男は優しく俺たちを気遣う。

ロスが俺に目配せする。気のせいかもしれないが仔豚も俺に目配せしたような気がした。

「それ、俺たちがなんとかしてみせますよ。」俺はそう言い放った。

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