47-2.獣
「この仔豚、不衛生だから洗おう。」ロスは提案する。
「わかりました!」俺はそう言ってロスさんと仔豚を抱えて外に出る。
「あの二人仲良かったっけ?」シルヴィアは首を傾げる。
「動物は関わりのない二人を繋ぐのか。」チャックは腕を組んだ。
俺たちは嫌がる仔豚を二人で洗った。観念しておとなしくなった濡れ仔豚を布で包んで家に連れ帰ろうとした時、村の隅に人だかりができているのが見えた。
「あ〜、やられたか。」村人たちの悲痛な声が聞こえる。
「どうした?」ロスが声をかける。
「いや、あっ、その豚は?」村人が驚く。
「昨日の夜家に入って来ました。」俺は説明する。
「そうか。よかった。」責められると思ったが、村人は安心したような顔をする。
「何かあったんですか?」俺は尋ねる。
「いやね、今度は家畜をやられたんですよ。」村人の説明と共に雰囲気を察した村人が視界の隅に移動していく。
そこには無惨に惨殺されたブタが三匹倒れていた。
俺はあまりのグロテスクさに目を背ける。
「こいつは上手く逃げ切れたんやろな。良かった。」村人たちは口々に言う。
状況を見るに、この惨殺をした何者かが大きな豚を攻撃した。その間にこの仔豚が逃げて来たのだろう。血がついていたのはその時のものだろう。あの時俺に擦り寄ったのは助けを求めていたのかもしれない。あの時に気付いてあげればこうはならなかったかもしれないと、俺の顎に鼻を押し付ける仔豚を見て後悔した。
「でも人が死ななかったのが不幸中の幸ですよね。」俺はロスに言う。ロスもコクリと頷く。
「いや、死んでるよ。」村人が言う。
「死んでる?」
「今日は人間は死ななかった。”今日は”ね。」村人のセリフに俺は青くなる。
「すでに6人死んでる。」村人はそう切り出し今までの経緯を話し始めた。




