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書籍化【完結連載版】聖女の姉ですが、妹のための特殊魔石や特殊薬草の採取をやめたら、隣国の魔術師様の元で幸せになりました!  作者: かのん
第三章 外伝 アスラン

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外伝 アスラン 22

「相手は子どもだろう! とにかく捕まえて吐かせるぞ!」


「子ども! 逃げられると思うなよ!」


 騎士達は泥濘を抜け出すとこちらに向かって走って来た。僕は逃げながら先生達の方を追いかけようとしている騎士達に向かって電撃を放つ魔術具を投げつけた。


「うわぁぁぁ」


「な、なんだ!?」


 どれもこれも僕が先生に教わりながら試作品として作り上げた魔術具だ。


「うーん……範囲がいまいちだな」


 起動はしているのだけれど、思った以上に効果が薄い気がする。


 ただ、かなりの電気量が流れた様子で、ぴくぴくとして動かない人もいる。


 電流が一定ではない……これもまた改善しなければ。


「なんでだろう。特殊魔石の分量がたりなかったのかなー」


 まだまだ改良の余地はあるけれど、今の所足止めには効果的だ。


「何を言っている!」


「お前も魔術師だな! やはり魔術師などろくなものがいない!」


 先生達の姿はもう見えず、僕はそろそろ自分も離脱することを考えながら、周囲を見回す。


 すると、かなりの人数が集まり始めており、これはまずいなと思った。


「逃げられないぞ」


「痛い目に合う前に投降しろ」


 騎士達の声に、僕は肩をすくめる。


「痛い目には合いたくないな。あんまり合わせたくもないのだけれど……まぁ、怪我にはならないからこの魔術具を使うか」


「な、なにをする気だ?」


「こいつ変な魔術具を使うぞ! 気を付けろ!」


「……変じゃないのに」


 僕はそう告げながら煙幕の魔術具を作動した。


 ゴーグルとマスクをすぐに装着する。


 この煙には目やのどに刺激を加える物質を混ぜている。


「げほげほげほげほ! ぐえぇぇ、目が、めがぁぁぁぁ」


「痛い! 痛い! なんだこれは!?」


 騎士達が咳き込み、あまりの刺激に悲鳴を上げる中、僕は急いできた道を進んでいく。


 そして塀を乗り越えて外へ出たところで、先生がこちらに向かって引き返して走ってくるのが見えた。


「先生!」


「アスラン! 無事で何よりだ」


「はい。二人は?」


「安全な場所まで逃がした。合流地点へ向かうぞ」


「はい!」


 先生はわざわざ戻ってきてくれたのか。


 それが少し嬉しく思ったことは内緒だ。


 僕達はそのまま合流地点まで向かうと、すぐにローグ王国へと移動を開始した。すでに追ってはかかっているだろう。


「先生、僕が作った魔術具、全部起動しました」


 歩きながら小声でそう伝えると、先生はにっと歯を見せて笑った。


「そうか。上手く仕えたか?」


「はい。でも、投げつけるみたいな方法だと、距離があった場合が使いにくくて」


「なるほど、それならばそこを改善しなければな」


 すると、二人の魔術師も話に入って来た。


「あの魔術具をこの子が?」


「すごいな。お前、いくつだ?」


 そう尋ねられて、僕は少し考えた。


「えっと……わかりません」


 三人が黙った。


 僕は少し考えると、自分の記憶のある季節の巡りを数えていく。


「物心ついてから……5回くらいは、季節が廻ったと思います」


 先生が僕の頭をぽんっと撫でた。


 多分心配してくれているのだろうけれど、別に大丈夫だ。


「それよりも、お二人も魔術に精通している方なのでしょう? あの地下で実験していた内容とかも教えてください」


 そういうと、二人はふっと笑い声を立てた。


「こりゃあ、立派な魔術師に慣れそうですな」


「本当にですな」


 はははっと笑い合う二人に首をかしげると先生もうなずいた。


「えぇ。この子はいつかきっと、立派な魔術師となるでしょう」


 そう言われて、なんだか誇らしいような照れくさいような気持ちを抱いたのだった。


 ローグ王国へと無事につくと二人の魔術師はすぐに王宮に保護されけがの治療がなされることになった。


 二人は何度もこちらにお礼を言ってくれた。


 そんな二人の背を見送りながら、先生が言った。


「いいか。アスラン」


「はい」


「魔術師は不当な扱いを受けることが、今はまだ多い。だからこそ、もし仲間が危機に陥っている時には魔術師同士手と手を取り合うのが大事だ」


「今回のように、他国から助け出すということもですか」


「あぁそうだ。あらゆる手段を用いて、仲間を救う。私は、そうした活動もしている」


「……はい。僕も、手伝います」


 そう告げると、先生が笑った。


「ははは。頼もしいな」


 危険もある。だからこそ、先生は僕を巻き込んでいいのか悩んでいるような節があった。


 だけど、僕からしてみれば先生の手伝いならばなんでも頑張りたい。


 先生は、僕を助けてくれたのだから。


「では私は一度王城へと話を付けてくる。アスランは屋敷に帰り休みなさい」


「わかりました」


 僕は一人屋敷に戻ると、湯あみなどを済ませて寝室へと向かった。


 ただどうしても魔術具のことが気になって今日使った魔術具の試作品を取り出すと、改善した方がいい所をノートへと書きなぐっていく。


「……魔術って面白いな」


 そう呟きながら僕は魔術具の修正を行って言ったのだった。



鬼畜アスラン(/ω\)

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