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書籍化【完結連載版】聖女の姉ですが、妹のための特殊魔石や特殊薬草の採取をやめたら、隣国の魔術師様の元で幸せになりました!  作者: かのん
第三章 外伝 アスラン

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外伝 アスラン 16

 死ぬかと思った。


 本当に、これまで色々な体験をしてきたが、ある意味今回が一番大変だったような気がする。


 女性とはこのような苦行に毎日耐えているのか。すごすぎる。


 全身を現れほぐされマッサージされ洋服を何着も試着し、試して着替えて試して決定したかと思えば髪型それから化粧に装飾品。


 全て整うまでにすでに3時間が経過している。


 お茶会は昼食時の12時スタート。朝八時に城に到着では早すぎるのではないかと思っていたがまさかまさかこんなに時間がかかるとは思ってもみなかった。


 お茶会が始まるまであと一時間程度残っているが、現時点で満身創痍である。


「……疲れた」


 そう呟きながら侍女に案内されてジャンの元へと連れていかれた。


 部屋をノックして中へと入ると、ジャン、リード、ゲリーの三人はいつもよりも小奇麗な恰好をしていた。


 侍女は部屋には入らずに下がり、僕達だけが部屋に残された。


「疲れた。お茶を一杯くれないか」


 僕がそう呟くと、三人が目を見開いたまま固まっている。


 聞こえなかったのだろうかと思い、もう一度口を開こうとした時、ジャンが頭を抱えた。


「くそ……可愛すぎるだろう」


 リードとゲリーは僕の近くへと来るとその周囲をくるくると回りながら言った。


「すごい可愛い。どこかのお姫様みたいだ」


「本当だなぁ。お前、本当にアスランか?」


 失礼なやつらだなと思いながら僕はため息をつくと、勝手にソファへと向かい歩いていくと腰を下ろして言った。


「大変だったんだぞ」


 リードが僕の為にお茶を入れてくれた。それを僕は一気に飲み干すと、ジャンが笑った。


「見た目はお姫様だが、所作はだめだな」


 ジャンの言葉に僕はむっとすると、背筋を伸ばしソファへと座り直すと、紅茶を持つ手も優雅に変えた。そして視線は少し伏せながら、紅茶を音を立てずにソーサーへと戻す。


 それからすっとジャンへと視線を向けた。


「ぐ……」


 ジャンが胸を押さえてその場に膝をつく。


 僕は勝ったと思いフンっと鼻をならす。


「所作もちゃんと本で学んできた。問題ないだろう」


 ゲリーが顔をひきつらせながら言った。


「……天才って末恐ろしいな」


「天才?」


「お前のことだよ。アスランって、記憶力も魔術師としても天才じゃないか。まかさ無自覚か?」


「僕は天才などではない。それで、僕はこれで問題ないだろう?」


 ジャンは姿勢を立て直すとうなずき、参加者リストをアスランへと手渡した。


「確定した参加者のリストだ」


 僕はそれをぺらぺらと全て見ていくと言った。


「覚えた。特に気を付けて見てほしい人物はいるか?」


「……うそだろ。もう覚えたのか」


「あぁ。それで?」


 ジャンは驚いた様子だったがすぐにある人物について机に資料を乗せた。


「四大公爵家の一つ、ヴォルフガング公爵家のメーガン嬢だ。年は僕の一つ上。藍色の髪に金色の瞳の少女さ」


 僕は彼女の似顔絵をじっと見つめた。


 ジャンは言葉を続ける。


「この前の私の暗殺未遂事件によって、父は僕に早々に強い後ろ盾を得てほしいと考えているようだ。そしてヴォルフガング公爵家が最も有力な候補。私としては少し怪しいとみている」


「怪しい?」


「あの事件を機に父上は、ヴォルフガング公爵に進められて、婚約者選定を急ぎ始めたからな」


 なるほど。


 貴族社会というものは難しいのだなと僕はそう思った。


「まぁ、とにかく僕は情報収集するとしよう。それでいいんだろ?」


「あぁ。よろしく頼むよ。今度お礼をするから」


「わかった」


 友達として協力したということならば、先生はきっと友達と仲良くしているのだと喜んでくれるだろう。


 僕はそう思い、気合を入れ、お茶会に参加することにしたのであった。


 ただ、お茶会への参加は思ったよりも大変だと、入り口からその様子を見て僕は気づいた。


「皆様ごきげんよう。あら、そのネックレス、奥ゆかしくて素敵ですわね」


「あらありがとう。気品があるでしょう?」


「ドレスもとてもふわふわして可愛らしいわ」


「貴方も大人っぽくて素敵」


 皆笑顔で会話しているのだけれど、どうにも楽しそうとは程遠い。


 女性は男とは別の生き物である。


 本に載っていた一文を僕は思い出し、なるほどと納得した。


 あの輪の中には入れない。


 少し遠い位置の入り口からその様子を見ていたのだけれど、皆の視線が一斉にこちらを向くのが分かった。


 その視線はこちらを射殺さんとするような殺伐としたものだった。


「あの子……誰かしら」

「可愛いわ」

「妖精さんのようだわ」

「嘘でしょ……あんな子知らない。か……可愛すぎる」

「同感ですわ。可愛すぎます……」


 まるで標的に定められたような心地がして、背筋が寒くなった。



女装アスランめちゃくちゃ可愛いでしょうね。


漫画を描いてくださっている絵庭先生と紗嶋先生が外伝アスランの絵をX(Twitter)で描いてくださいました!もしよければ見てみてください。可哀そう可愛いです(´∀`*)ウフフ

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