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書籍化【完結連載版】聖女の姉ですが、妹のための特殊魔石や特殊薬草の採取をやめたら、隣国の魔術師様の元で幸せになりました!  作者: かのん
第三章 外伝 アスラン

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外伝 アスラン 12


 ガートレードは、眠りに落ちたアスランをじっと見つめてほっとするように息をついた。


「無事で本当に良かった……そして……ドミニク、先ほどのアスランを見たか」


「ん?」


「この子が……私を信用してくれたように感じた」


 ガートレードの姿をじっと見つめていたドミニクは笑いをこらえるように口元に手を当てた。


「なんだ。嬉しいのか」


「あぁ、嬉しいね。初めての弟子、そして我が子だぞ」


 我が子という言葉に、ドミニクは目を見開く。


「お前……籍に入れるってのは聞いていたが、本気で親になるつもりなのか」


 驚いたと言うようなドミニクの言葉に、ガートレードは呆れたように言葉を返す。


「当り前だろう。そうでなければ籍を入れないさ。これからこの子の信頼を、私は勝ち取っていきたい。こんな喜びがあるなんて、人生とは素晴らしい物だと感じたよ」


「……結婚して、血のつながった子を残す道もあるだろう? お前ならば結婚などいつでもできるのに」


 ガートレードは肩をすくめた。


「私と現国王は異母兄弟だ。だが、私は妾の子。だからこそ私は亡き母によって生まれてすぐに魔術師の弟子として王家を出された。王家の諍いに巻き込まれたくはない。だからこそ血筋は残したくないのだ」


 王家という血とはまるで呪いのようだ。


 そんな言葉にドミニクはため息をつく。


「そうだな……さて、じゃあ泣いて震えているだろうジャン達を俺は見にいってくる」


「あぁ。私はアスランを部屋へと運んでくる。怪我の治療もしなければな」


 分かれ、ガートレードはアスランの部屋のベッドに彼を寝かせる。


 手の治療を医師が行い終わると、そこへジャン、ゲリー、リードの三人がやって来た。


 部屋へと入って来た三人は、ベッドに横たわるアスランを見てほっとした様子だった。


「無事で……よかった」


 ジャンの言葉にガートレードはうなずく。


「あぁ。皆無事でよかった。だが、あの魔獣が突然現れたのはあまりに不自然。ジャン、こちらに向かって立ってくれ」


「? はい」


 ジャンの正面にガートレードは立つと、上着の内ポケットから魔術具を取り出し、それをジャンに向けた。


 その瞬間、けたたましい音が鳴り始め、それが一番強くなる位置をガートレードが調べると、洋服の内側に、何かが縫い付けられていた。


 ガートレードはナイフでそれを取り出すと、ため息をついた。


「どうやら、ジャン殿下が命を狙われているというのは当たりのようですな。これは魔術具であり、あの竜にこの魔術具を狙うように仕込んでいたのでしょう」


 ジャンの顔色は悪くなり、椅子に座り込むと呟いた。


「そんな……でも、では何故アスランを途中から狙ったのですか?」


「……この子は、私が知る中でも歴代一魔力が多い。故に、その血は魔獣にとっては最高の餌なのですよ。このことはご内密にお願いします」


「……わかった」


 ジャンはそう言うとうなずく。


 ゲリーとリードがドミニクの方へと視線を向けて言った。


「殿下を狙ったのはだれなのでしょうか」


「このまま誰に狙われているカモ分からぬまま、ジャンを城へは戻せません」


 ドミニクは頭を掻くと、大きくため息をついた。


「まぁ、それについてはこちらで調べよう」


「殿下。屋敷全体に守護の魔術陣を展開させましたから、もうこの庭は安全です。せっかく来たのですから、遊んでいっては?」


「いえ。アスランを見舞ってきます」


「……そうですか。では私とドミニクは少し調べてまいりますね」


「はい」


 ガートレードとドミニクは外へと出ていき、部屋の中にはアスランと三人が残ったのであった。


◇◇◇


 全身がだるい。


 瞼を開けると、傍にジャンとゲリーとリードの姿があった。


 部屋に先生が運んできてくれたのだろう。


「……目が覚めたのか。アスラン。すまなかった。私のせいでこんなことになって」


 ジャンの言葉に、僕は首を横に振る。


「別に大丈夫だ。それよりも怪我がなくてよかった」


 怪我をしていたならば、先生が悲しむかもしれない。だからよかった。


 するとジャンは僕の手を握り締めた。


「アスランは命の恩人だ」


 その言葉にゲリーとリードも続く。


「本当に。本来なら俺が剣となり盾とならなければならないのに……すまない。そしてありあがとう」


「ありがとう。アスランのおかげだよ」


 僕はなんだかむず痒いような気持ちになった。


 人から感謝されるというのはこういう気持ちになるのだなとそう思った。


 その日は三人で部屋でその後、お菓子を食べたり話をしたりして過ごした。


 先生がよく頑張ったと褒めてくれて、僕に食べなさいとたくさんお菓子を持ってきてくれたのだ。


 これは、お客さん用ではないから食べてもいいんだなと思って食べた。


 とても美味しかった。


 ここに来てから美味しい物ばかり食べさせてもらえる。


 甘いものは特に好きだ。だから、とても満ち足りた気持ちになった。


 この時の僕は、ジャン達と同じ学園に通うことになるなどと一切思っていなかったのであった。


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