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13話

「師匠! 見てください! 私、今回これ、一人で採取出来たんですよ!」


 初めて採取した特殊魔石。


 それまでの間、ずっと師匠と一緒に採取してきたけれど、今回は師匠には頼らずに単独で採取することが出来た。


 これまで、師匠とは様々な採取場へと向かってきた。


 毒素が強い所、急激な斜面、人を惑わせるような森。


 採取者とは命がけの仕事だ。


 今日生きていることが運がいい。そんな風に言われる仕事であり、これまで師匠と一緒でなければ死んでいたであろう場面は何回もあった。


 怪我をしたのも一度や二度ではない。


 それでも歯を食いしばって師匠との特訓を繰り返し、ここまで来たのだ。


 褒めてもらえると思ったのに、私が自慢げに特殊魔石を見せると、師匠はそれをちらりと見た後に、私の額を指で小突いた。


「まだまだ。これ、採取時に急いで採取しただろう。削り方が荒い」


「あ……」


 私は小突かれた額を撫でながら、小さくため息をついた。


 褒めてもらえると思ったのにと、少しばかり期待していた自分に呆れてしまう。


 自分はもう子どもではない。


 子どもの頃ように褒められるために頑張っているわけではないのだ。


「……これで、少し、アイリーンの採取者になるのに近づきましたかね?」


 そう呟くと、師匠はため息をわざとらしく大きくつき、それから私のことをじっと見つめながら不満げに言った。


「お前が決めたことだ。文句は言わん。何度も言うが、文句ではない。ただ……お前はそれで本当に良いのかとは思っている」


 師匠の言葉の意味が分からず、私は首を傾げた。


「え? えーっと。はい。私の目標はアイリーンの立派な採取者になることなので!」


 胸を張ってそう言うと、師匠がまた大きくため息をつく。


 それから立ち上がり、私の頭をガシガシと撫でると小さな声で言った。


「お前が……もっと、幸せになれる……相棒がいればいいのだがな」


「え?」


「なんでもない。いくぞ」


「はいっ!」


 師匠の大きな背中を、私はいつも必死に追いかけた。


 今でも、やっぱりその背中には追い付けていないけれどそれでもずっと目標だ。


 私は、ベッドの上で懐かしい夢を見たなと思いながら目を覚ますと、体をゆっくりと起き上がらせた。


 それから、ふと、部屋の中に風の流れがあるのに気付き窓の方へと視線を向けると、そこに、月の光を心地よさそうに浴びながら、窓辺に腰掛ける白銀の髪の男性の姿があった。


 風に吹かれ、気持ちよさそうにする姿に私は驚く。


「え? 師匠?」


 私が驚いてそう言葉を呟くと、師匠は私の方へと視線を向けて、それから小首を傾げた。


「あぁ。起きたのか? すまんな。起こしたか」


「え? え? 師匠? 本物ですか!? え? 夢の続きですか!?」


 私がそう声を上げると、師匠は呆れたように大きくため息をついてから私の近くへと来ると、額を指で小突いた。


「お前は夢と現実の区別もつかんのか」


「いったぁ。師匠。それ、地味に痛いんですけど」


 私がこしこしと額を撫でながらそう言うと、師匠が部屋の中に置いてあった鳥ちゃんのかごに気がつきそれから眉間にしわを寄せる。


「……厄介なものを連れて来たな。久しぶりに会うな。バカ鳥」


「え?」


 師匠は私の寝ていたベッドに腰掛けると、私のことを腕を組みながらじっと見つめてくる。


「顔色はいいな」


「え? あ、はい。あ、師匠! 私、お給料このローグ王国に来てからかなり上がったんです! なので、お世話になった師匠にはぜひごちそうさせていただきたいです!」


 師匠が私の所に来ることはめったにない。


 この機会にお世話になったお礼をしたいと思い私がそう言うと、師匠は肩をすくめた。


「人間の食事はあまり口にあわん」


「え!? あ、で、では! 私が作ります!」


「お前が?」


「はい! アスラン様にちょっと……ちょーっとずつ、その、ほんのちょっとですが教えてもらって……アスラン様に指導を仰ぎながら作ります!」


 私の言葉に、師匠は眉間にしわをさらに深くすると、顎に手を当て、それから言った。


「……お前、本当にその男と恋仲になったのか」


「へ!?」


 私は、顔が真っ赤になるのを感じ、それから、あーとかえーとか呟きながら、観念したように小さくこくりとうなずいた。


 師匠に話をするなんて恥ずかしさしかないなと思い、ちらりと師匠へと視線を向けると、すごく微妙そうな顔を浮かべていた。


 どういう反応なのだろうかと思っていると、師匠はうなり声をあげる。


「……はぁ。やはり連れて行けばよかった」


「え?」


 師匠の言葉にどういう意味だろうかと私が思った時、鳥かごの中の鳥ちゃんが師匠に気付き、それと同時に鳥かごから飛び出たのであった。



私は以前、迷子のインコちゃんを拾い飼っていたことがあるのですが、鳥ちゃんって可愛いんですよね(●´ω`●)

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