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書籍化【完結連載版】聖女の姉ですが、妹のための特殊魔石や特殊薬草の採取をやめたら、隣国の魔術師様の元で幸せになりました!  作者: かのん
第二章

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9話

 私の視線は、鳥の視線と真っすぐに重なっていた。


 ゆっくりと、ピシピシと音を立てながら水晶にはひびが入っていく。


 それに、アイリーンが笑い声をあげた。


「聖なる鳥様が目覚めたわ! ふふふふ! さぁ! 私の力をもっと受け取って!」


 そう言うとアイリーンの光が鳥の方へと送られていくのが見えた。


 キラキラと光るその美しい光は、鳥へと吸い込まれていく。


 そして次の瞬間、鳥は悲鳴を上げるようにして叫ぶと、錯乱するように暴れ始め水晶は砕け散った。


「な、何故!?!」


 ゼクシオはそう叫び、アイリーンが唇を噛んで苛立った声を、こぼす。


「なんで……なんでよ」


「アイリーン様! 原因は分かりませんが、聖なる鳥様を現段階で連れて行くのは難しそうです。一度退避しましょう! このままではここが崩れます!」


「なんでよ! もう! もう!」


「アイリーン様!」


「わかったわよ! お姉様。じゃあね」


 次の瞬間、アイリーンはネックレスに唇をあてる。すると、ゼクシオと共に、アイリーンの姿が忽然と消えてしまった。


「シェリー!」


 アスラン様は私の元へと駆けてくると、鳥からの攻撃を魔術で防ぐ。


 片腕でアスラン様に抱きかかえられた。


「とにかく、鳥を保護するぞ! 何かすごく興奮しているが、原因は先程の光か!?」


 アスラン様の言葉に、私は魔物に対峙した時に投げつける、鎮静の特殊薬草の団子玉をポシェットから取り出すとそれを鳥に投げつけた。


 団子玉は鳥にあたった瞬間に砕け、鳥は煙に包まれると一瞬動きを止める。


「アスラン様! 鎮静作用によってしばらくは動きを止めていると思います」


「団子玉か! シェリー! 静寂の特殊薬草もあるか!?」


「あります! どうぞ!」


「助かる!」


 アスラン様は手際よく片腕で魔術陣を出現させると、そこへ特殊薬草を加え、そして私が追加で出した浄化の特殊魔石も加えていく。


 アスラン様はそこで魔術式を構成して混ぜ合わせ、魔術陣を完成させていく。


 魔術陣が輝き、鳥の上空で発動し始める。


 次の瞬間、魔術陣が発動しきらめいた。


「ぴえぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」


 鳴き声と共に、鳥の周囲に煙が立ち込め始め、そして気がつくとそこには、可愛らしい手のひらサイズで、真ん丸のふわふわとした小鳥がいた。


 ふらふらとこちらへと飛んでくると、小鳥は私の手の平の中でぺたっと体を転げさせた。


「ピヨ」


「え? ……鳥さん? え? 鳥さん……可愛い」


「まさか……かなり、縮んだな」


「ピヨ」


 私とアスラン様は、小さくなった鳥をまじまじと見つめた。


「うーん。先ほどまでの力は消え失せているし、ふむ。危険はなさそうだが」


「そうですね。とても可愛らしいだけです」


 私とアスラン様はじっと鳥を見つめていたのだけれど、ぐらりとした揺れを感じ、周囲を見回した。

 鳥の悲鳴のような声で発生した魔障が、かなり広がっている様子である。


「とにかく一度、ここから退避しよう」


「そうですね」


 アスラン様は、周囲を見回してから平坦な所でカバンの中から小瓶を取り出しそれの蓋を開けた。


「吸収開始」


 そう呟いたと同時に、その場に広がっていた魔障がその小瓶の中へと吸い込まれていく。


 数秒もしないうちにその場に広がっていた魔障のほとんどがそれの中に吸い込まれ、そして最後にキュルルッポンという音と同時に蓋が閉まった。


「すごいですね」


 私がそう言うと、アスラン様が首を横に振る。


「広範囲は無理なので、まだまだ改良が必要なのだ。だが、このくらいならばある程度は魔障が解消できただろう」


「これなら、街へ流れることもなさそうですね。それにおそらく魔障の原因は……」


「そうだな」


 私とアスラン様の視線が鳥へと向かうと、鳥はなんのこと? とでも言いたげにピヨ?と鳴いて首を傾げた。


 可愛い。


 私は鳥ちゃんを胸元へと入れようとすると、アスラン様が驚いたように目を丸くした。


「何を!?」


「え? あ……鍾乳洞の中に他にも毒性のものがあるかもしれないので、出来るだけ吸い込まないようにと思いまして」


「あ……だ、だが」


 私は胸元へとぽんっと鳥ちゃんをしまい込むと、アスラン様に言った。


「一度外へ出ましょうか」


「あ……あぁ」


 アスラン様は何か言いたげな表情を一瞬向けるが、とにかく一度外へと出る方が先だろうと判断し、私と共に歩き始めた。


 途中、もぞもぞと鳥ちゃんが動くものだから、私はくすぐったくて変な笑いが零れる。


「ふはっ。ちょっと、くすぐったいよ。動かないで」


「ピヨピヨ」


「……シェリーやはり……出した方がいいのでは?」


「あ、ふふ。大丈夫です。行きましょう!」


 アスラン様は終始こちらを気にしている様子だったけれど、くすぐったいだけで問題はなかった。


 私達は鍾乳洞を出ると、ほっとひとまず息をついた。


 私とアスラン様はマスクを外し、大きく深呼吸をした。


「はぁぁぁぁ。空気が薄いけど美味しいですね!」


「そうだな」


 鍾乳洞の中では薄明りしかなかったので、太陽の光が気持ちがいい。


 私とアスラン様がしばらく太陽の光を浴びていると、胸元にいた鳥ちゃんが外へと飛び出してきた。


「ぴーよー!」


 楽しそうに空を鳥ちゃんが飛んだ瞬間、空を覆いつくすほどの大量の鳥が空にあらわれると、くるくるとその場を旋回した後に、飛び去って行った。


 突然の鳥の大群に、私もアスラン様も驚いたけれど、鳥ちゃんだけは上機嫌でピヨピヨと鳴いていたのであった。


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2巻出せるなんて思っていなかったので、すごくうれしいですー!

読者の皆様のおかげです。ありがとうございます!


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