4話
私とアスラン様は翌朝、太陽が昇る前に片づけをすませていく。一人での作業よりもやはり二人での方が効率的であり早いなと思う。
山の空気は澄んでいて、それでいて冷たい。
胸いっぱいに吸い込むと、体が冷えていくようなそんな感覚がした。
「行きましょうか」
「ああ。行こう」
私達は出立すると、霜が降りているのか歩くたびにしゃくしゃくとした音が響いて聞こえた。
気温自体は低すぎるわけではないのだけれど、恐らく地形と気候、そして地中に含まれる魔石の成分が関係しているのではないかと思われた。
私とアスラン様は基本的に上っていく際中は無駄なことはしゃべらない。
ただひたすらに前を向き上っていくのだ。
そして、鍾乳洞の入り口に立ったところでやっと私達は一息をついてから口を開いた。
「やっと目的地ですね。魔障が発生している可能性があるので、マスクを付けて行きましょう」
私がそういうとアスラン様はうなずき、お互いにマスクをつける。
このマスクはアスラン様が作ってくれたもので、これも優れものだ。呼吸が苦しくないと言うのが一番の特徴であった。
私は自分の周りに増えていく素敵な魔術具に、昔の何もない頃にはもう戻れないなと思ってしまう。
そして何よりも嬉しく思ったのは、以前よりも採取が格段にしやすくなったことだ。
このマスク一つにしても、以前までは、普通のマスクだったのでタイムリミットを決めて、自分の体調を見ながら採取を行う他なかった。
けれど、このマスクをつけられるおかげで、時間を気にせずに安全に採取をすることが出来るようになった。
魔術具というものは、採取者の能力をさらに引き上げる道具であり私はもっとうまく使えるようになりたいと最近は思うようになった。
私は足場を確かめながらアスラン様と共に鍾乳洞の中へと入っていく。
中は暗いので魔術具のライトをつけて進んでいく。
水の音が中から聞こえてくるので、恐らく水場もあるのだろう。
それならばなおさら魔障は起こりにくいはずなのにと思いながら歩いていくと、私は一度足を止めた。
「シェリー。どうかしたのか?」
アスラン様の言葉に私はうなずき、それから視線を彷徨わせると言った。
「アスラン様。見てください」
私はそう言うと、ライトを壁の方へと近づけた。すると、壁にうっすらと青白く輝く光る粉が付着しているのが見て分かった。
「灰簾石特殊魔石が砕けてそれが壁にこびりついています。これは魔障が発生していた証でもあります……でも、今は魔障が発生している感じはありませんね」
「そうだな」
今は空気中の水分量も十分にあり、それでいて魔障が空気中に散布するようなこともない。
だけれども魔障が起こった形跡は確かにある。
私とアスラン様は鍾乳洞の中をゆっくり進んでいった。暗い中、足場も悪いけれど、ゆっくりと確実に進んでいると、灰簾石特殊魔石が壁に付着している量が次第に増えてきている。
「おそらくこちらですね」
「……魔物がこの魔障の原因の恐れもある。シェリー。気を引き締めて行こう」
「はい」
私とアスラン様は緊張感をもって前へと進んでいく。
その時であった。
突然、音ではない無音の風圧のような衝撃が私とアスラン様を襲い、私達は驚きながらも身を低くしてその衝撃に耐える。
次の瞬間、壁に付着していた灰簾石特殊魔石の粉末が一気に空中に散布し、他の魔石のかけらとぶつかって魔障を発生させていく。
「やはり、何かしらの外的要因によって発生しているようですね」
私が衝撃に耐えながらそう言うと、アスラン様もうなずく。
「とにかく、この奥を見に行ってみよう」
「はい!」
私達は少しずつ少しずつ進んでいくと、風圧は突然治まり、その間に足を進めて行く。
奥へ行くとかなり広い空間があり、その中心部に美しい泉のようなものがあった。
ただ、深さのある泉ではなく、透き通る水が5センチほど溜まっているだけで、泉というよりも水たまりに近いのかもしれない。
そしてその中心部に、巨大な水晶が浮かぶ島のようにそこにはあった。
「あれは……」
しかもただの水晶ではなかった。
「鳥?」
美しい黄金色の鳥が、水晶の中に眠っているかのようにそこにはいた。
鳥ちゃん登場!
ぴよぴよ(*´ω`*)