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書籍化【完結連載版】聖女の姉ですが、妹のための特殊魔石や特殊薬草の採取をやめたら、隣国の魔術師様の元で幸せになりました!  作者: かのん
第二章

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2話

 お菓子を食べ終わった後、私はアスラン様に呼ばれた。


 魔術塔の中はいつもごちゃごちゃとしているところがあり、定期的に掃除をしないと大変なことになるので、私はちらりと様子を見つつ、また時間を作って片づけなければと思う。


 アスラン様の机の上に地図が広がられた。それはローグ王国の地図であり、アスラン様はガレア山脈鍾乳洞の位置を指さした。


「この位置にて原因不明の魔障が発生しているらしい。シェリーの意見も聞かせてほしいとのことをジャンから言われたのだ」


「ガレア山脈鍾乳洞……実は師匠から手紙が届きまして、魔障が発生しているので気を付けるようにと書いてありました」


 その言葉にアスラン様は眉間にしわをよせ、考えこむように腕を組む。


「魔障か……魔術師としては現象としては知っていても、研究分野としてはかなり未開拓なのだ。知っていることを聞いても?」


「はい。師匠から習ったことと私の経験則からはお話は出来ます」


「ありがたい。では一度王城へ行きジャンの元へと向かいたのだがいいだろうか。疲れているだろうから明日行くようにしても大丈夫か?」


 私は今すぐにでも大丈夫なのになと思ったけれど、こういう時、アスラン様は絶対に私に休憩を挟ませる。


 今までは休憩を挟まず、自分の判断で動けるという時には採取を続けてきたが、アスラン様に急遽必要なものでない限りは、無理をする必要はないと諭され、それからは定期的にちゃんと休むようになった。


 こんなに好待遇でいいのだろうかとたまに思うけれど、アスラン様には、普通の採取者であれば一月かかる仕事を一週間で終わらせているのだから、焦る必要はないといわれ、時間の使い方を考えさせられる。


「私は大丈夫です」


 そう答えると、アスラン様は微笑みをうかべ私の頭を優しく撫でる。


 それが最近心地よくて、つい、頭を撫でる手に吸い寄せられていく。できればずっと撫でていてほしいし、ぽんぽんとして、そしてぎゅっと抱きしめてほしい。


 そう思いちらりとアスラン様を見ると、アスラン様が一言悩まし気な顔で言った。


「あまり可愛い顔で見ないでくれ」


「か、かかかか、可愛くありません!」


 私がそう叫んで、しまったとおもっていると、ベスさんが笑い声をあげた。


「アスラン様が甘々でおっかしぃ~」


 それに同調するようにミゲルさんが声を上げた。


「恋がしたいなぁ! 恋が! 春がやって来ないかなぁ!」


 そんなミゲルさんを諭すように、フェンさんが言った。


「そうだねぇ。そうするためには性根を一から叩きなおさないといけないからねぇ」


「お前辛らつだな!」


 いつも魔術塔の中は賑やかだなぁと思いながら、私は恥ずかしさが落ち着いてきてちらっとアスラン様を見た。


「私、ここに来れて本当に良かったです」


 そう言うと、アスラン様もうなずく。


「シェリーがここに来てくれて私も嬉しい」


 最近、気がつくと甘い雰囲気が流れるようになってきたような気がする。


 私はドキドキとしながら胸を押さえたのだけれど、アスラン様の机の上に乗せてあった特殊魔石の資料本に気付き動きを止めた。


「それは……もしや新刊ですか?」


「ん? あぁそうだ。シェリー嬢も読むだろう? 注文しておいたんだ」


「嬉しいです!」


 甘い雰囲気が一瞬で霧散する。けれど、それでもこうした資料本というのは魅力的でしょうがない。


 アスラン様の瞳もきらりと輝く。


「後ほどこの本についてお互いに意見を交わさないか?」


「いいですね。やりたいです」


 私達のやり取りに周りの三人が声を上げる。


「ひー! また講義が始まるぅ~」


「ちょっと二人共! 読むのは構いませんが、こちらまで巻き込まないでくださいよ!」


「たしかにねぇ。仕事進まないですよねぇ~」


 そういうけれど、三人はいつも仕事よりも自分のやりたいことを優先しているので、アスラン様は肩をすくめた。


「ならば、仕事として組み込んでやろうか」


「「「さぁ~て、仕事するかぁ」」」


 三人は素知らぬ顔で仕事を始め、アスラン様はため息をついたのであった。


 翌日、私とアスラン様は支度を整えると王城へと向かう。


 今回は王城内にある応接間の一室にてジャン様と話をする予定となっており向かったのだけれど、王城内はいつも煌びやかであり、少しおどおどとしてしまう。


 応接間へと案内され中へと入ると、すでにジャン様はついており、紅茶を飲みながらこちらに視線を向けた。


「おはよう」


「あぁ。おはよう」


「お、おはようございます」


 ジャン様は立ちあがると、私の手を取ると甲へと唇をつける。


「シェリー嬢に今日は会えて幸運な日だ」


 なんとも無駄のない動きだろうかと思ってみていると、アスラン様がハンカチでさっと私の手の甲をぬぐい取った。


 それを見ていたジャン様は笑い声をあげる。


「何とも嫉妬深い男だな。シェリー嬢。もしこの男が嫌になったらいつでも私の所へおいで」


「変なことを吹き込まないでいただきたい」


「嫉妬深い男は嫌がられるぞ」


 ジャン様の言葉に、私は思わず声を上げた。


「あ、いえ、むしろ好物です」


 しまったと思ったのは二人の目を丸くした瞳を見た時であった。


 私は両手で口をふさいだ。


 顔が熱くなっていく。恥ずかしくてたまらなくなり私がうつむくと、ジャン様が大きな笑い声をあげた。


「相思相愛とは幸せだな!」


「えぇ。幸せです」


 アスラン様がそう真顔で返すものだから私はいたたまれなくなったのであった。


 その後話題は魔障のことへと移り、私達は席に着く。


 私はポシェットの中からいくつかの小瓶に入った特殊魔石を取り出すとそれを机の上に置いた。


「魔障とは、魔石が砕けたかけらが空気中でぶつかり合い、魔石同士で衝突することでうまれるものです。ただ不思議なのは、この鍾乳洞は空気の水分量が多く、かけらが空中に散布しにくいはずなんです。ですから、比較的魔障が発生しにくい場所なんです」


「ではなぜ?」


「そのためには調査をする必要があると思います。問題なのはこの魔障が起きている位置です。この鍾乳洞の下流域には、小さな町があります。そこに魔障が流れ込んだら大変なことになります」


 そう告げると、なるほどとジャン様は考え、アスラン様が今度は口を開いた。


「シェリー嬢は何か原因があると考えているか? これは自然発生的なものなのだろうか。魔障を人為的に起こすことは可能か?」


「自然発生的なものが多いです。ただ、魔物がかかわっていることもあります。人為的に魔障を起こすことは……かなり難しいと思います。空気中に大量の魔石のかけらを散布させないといけませんし……そもそもこの魔石のかけらも扱いが難しいです。扱いを一歩間違えれば散布する前に大爆発を起こすこともあります」


 私は机の上に並べた魔石を指さしながら言った。


「これはガレア山脈鍾乳洞の魔石です。純度の高い特殊魔石が多く、その多くはぶつかることのないものばかりです。そもそもぶつかっても魔障を産む可能性の低い物が多いのです」


 だからこそ、どうして魔障が発生しているのか。


「現地で調査するのが一番確実だと思われます」


 ジャン様は私の言葉にうなずくと言った。


「アスラン、シェリー嬢、直接ガレア山脈へ向かい調査をしてほしいのだが、いいだろうか」


 私とアスラン様はうなずいた。


「もちろんだ」


「わかりました!」


 私達はジャン様に返事をし、ガレア山脈へ調査をしに向かうことになったのであった。


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