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二十話

「はぁ、命を救ってもらい運命の女性かと思ったのだが、フラれてしまったか……シェリー嬢は王族にもしやいい印象はもっていないのかい? 王族というだけですり寄ってくる女性もいるというのに」


 こうした男性は息をするように女性を口説く。アイリーンの婚約者であったヨーゼフ王子のことを思い出してしまった。


 私はどう答えようかと思いながら、口を開いた。


「いえあの、私の妹のアイリーンの婚約者はヨーゼフ王子殿下なのです。なので、その」


 この話はアスラン様に模したことがなかったなと思い私はちらりとアスラン様を見た。


 アスラン様にあまり聞かれたくない話だなと思った。


 好きでもない男性の話をアスラン様の前でしたくないなと思った自分の心に、私はぐっと息を詰まらせた。


 アスラン様を意識している。それに自分で気づいてしまうとじわじわと顔に熱がこもる。


 私のその様子に違和感を抱いたのか、アスラン様の眉間にまた皺が寄った。


「情報としては知っていたが、その時、何か?」


 何と答えればいいのだろうかと迷いながら、私は、出来るだけ語弊が生まれないように答えた。


「私は平民ですし、ただの採取者でしたし、ヨーゼフ様からはアイリーンと結婚した後には妾になるようにと、そのように命じられておりました」


 毎日のように言い寄られたことや、時には貞操の危機を感じたこともあった。


 そう思うと、本当に国を出てよかったと思う。


「ただ、私としては、それは遠慮したかったので冗談として受け流していたのですが……」


 アスラン様は静かに頷いた。


「言いにくいことを話させてしまいすまない。……隣国も一夫一妻制のはずだがな。はぁ。ジャン。まさか君もそのようなことはしていないだろうな」


 ジャン様はどこか動揺した様子を一瞬浮かべたのちに、慌てて首を横に振った。


「いやいやいや。言っておくが私は真剣な恋愛しかしない。シェリー嬢に先ほど言い寄ったのは運命だと思ったからだ!」


 その言葉にアスラン様は睨みつけるように一瞥する。


「……いい加減してくれ。君の伴侶は地位の確立した女性でなければならないことは分かっているだろう」


「わかっているさ。はぁぁ。分かった。もう二度とふらふらしない」


 まるで誓うように片手をあげてそういうジャン様にアスラン様はため息をついた。


「今後シェリー嬢に言い寄ることはしないでくれ。シェリー嬢が相手に好意がない以上は迷惑でしかないからな」


 私のことを思っての言葉に、なんだか恥ずかしく思っているとジャン様は頷き、真剣なまなざしで私のことを見ると言った。


「君の嫌がることはもうしない。私はそもそも君に感謝を伝えるためにこの場を設けたのだ。はぁぁ。先ほどのことは謝罪する。すまなかった」


 王族の方がこのようにすぐに謝ってもいいのだろうかと思うけれど、恐らくこの場が公の場ではないからこそなのだろうと私は考えると頷いた。


「謝罪を受け入れます。ふふふ。大丈夫です。冗談だと分かっています」


 ジャン様は何故か少し悲しそうにな瞳をしたけれど、小さくため息をついてから表情を切り替えそして言った。


「さて、改めてだが、私の命を救ってくれたことを礼を言う。ありがとう。君のおかげでこの世界に命をつなぐことが出来た」


 私はその言葉に笑みを浮かべた。


「採取者になってこのように直接お礼を言われるなんて、あまり機会がなかったので役に立てたことが嬉しいです」


「心より感謝する。謝礼についてはアスランと協議した上で君の元へと振り込まれる」


 私は謝礼なんて必要ないと断ろうとしたのだけれど、アスラン様に目で止められた。こうした場で謝礼を断るほうがもしかしたら失礼にあたるのかもしれない。


「……ありがとうございます」


 そう言って頭を下げると、ジャン様はほっとしたようにうなずいたのであった。


 その後しばらくは机の上にお菓子が並べられ和気あいあいとした雰囲気が続いていたのだけれど、私はその場の雰囲気から、これはおそらく先ほどのお礼だけで話が終わるわけではなさそうだと、思い始めていた。


 おそらく、どこかで次の話題へ移るきっかけをジャン様は探している。


 一体なんだろうかと私が思った時であった。


 ジャン様は紅茶を飲み終わり机の上へと置くと、静かに口を開いた。


「……あと一点……実は話がある……」


 その言葉に、アスラン様も初耳だったのか、ジャン様の方へと視線を向けて動きを止めている。


 なんだろうかと思っていると、ジャン様はゆっくりと息を吐いてから口を開いた。


「……先ほど、話しがあがり、話すべきか迷ったのだが……来月の我が王国の舞踏会へとレーベ王国側よりヨーゼフ王子と聖女アイリーンが参加するという旨の手紙が届いた」


 私はその言葉に、驚いてそのまま固まってしまう。


 先ほど会話に出てきたからこそ、ジャン様は言いにくくて、言えなかったのであろう。


 アスラン様はその言葉に息をつき、それから静かにあたまを押さえた。


「……言い淀んでいたのはこれか。なるほど、たしかに先ほど会話に出たものだから、言いにくかっただろうな……」


 先ほど私が思ったことと同じことをアスラン様が呟き、私は、どう会話を続けたらいいのか分からず黙り込んでしまった。


虹を見ると、良いことがありそうな気持になりますね、なので、虹を見たい時にはホースから水を噴射させて虹を作るといいですよ(●´ω`●)

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