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十九話

 次の日から私は変わらずに出勤し、アスラン様や他の皆からは大丈夫かとかなり心配された。


 私は甘いものも食べて、元気いっぱいになったので大丈夫だと答え、皆の優しさがくすぐったくて、幸せだなと感じた。


 特にアスラン様はあれからことあるごとに心配してくれて、一緒に昼食を食べに行ったりお菓子を買ってもらったりという事が増え、こんなに人から優しく接してもらうことが初めてだったので、なんだか、むずむずとするような感じがした。


 ただ、私がそれで喜んでいると、ベスさんに“お菓子をもらっても、知らない人にはついて言ってはだめよ?”と忠告された。


 今まで姉としてアイリーンに忠告することはあってもされることのなかった私は笑ってしまった。


 そして数日たち、私はアスラン様と共に、現在王城へと来ていた。


 お菓子につられたからではない。


 ジャン様は回復し現在問題なく公務にあたっているとのことであった。状況もだいぶ落ち着いたとのことであり、内密にだけれどこの前のお礼がしたいとの話を受けて城の客間で待機している。


 少しの待機時間の後にジャン様は姿を現した。


 顔色は健康的に戻っており、その表情は明るく部屋に入ってくるとすぐに私の元へと駆け寄ると跪いて手を取られた。


「シェリー嬢。会いたかった」


「へ?」


 金髪碧眼の王子様が目の前に跪く姿に、どこか他人事のように思いながら目の前で起こる光景を呆然と見つめていた。


 ジャン様は私の手に口づけを落とす。


「ひょえぇぇっ!」


 突然のことに思わず手をぱっと万歳するように私はあげ、一歩後ろに飛びのいた。


 アスラン様は眉間にしわを寄せると声をあげた。


「……ジャン。うちの採取者にどういうつもりだ」


 怒気を含んだすごんだ声に、私は殿下に対してそのように言っても大丈夫なのあろうかと慌てると、ジャン様はふっと笑みを浮かべた。


「男の嫉妬は見苦しいぞ。命を助けてくれた乙女に感謝を伝え好意を示すのは、悪いことではないだろう?」


 その言葉に、ジャン様は女性慣れした殿方なのだなと私は判断すると、小さく呼吸を整えてから、姿勢を正した。


 こういった類の女性に慣れている男性は、理由なく触れてくるし理由なく口説いてくる。


 そういうものなのだ。


 そういう生き物の男性であると分かっていれば対処も出来るし心を揺れ動かす必要もないと思える。


「アスラン様、大丈夫です。ジャン様、体調の方良くなったようで安心いたしました。先ほど私が命を助けたようにおっしゃいましたが、全てはアスラン様いてこそ。私など、ただ採取しただけにすぎません」


「いや、君の功績が多いに決まっている。君がいてこそだ」


 はっきりとそう告げると、アスラン様はすぐにそう言って下さった。優しいなと思う。


ジャン様は驚いたように一瞬目を丸くした後に、ジャン様は眉間にしわを深く寄せた。


「……シェリー嬢。私は自分の顔には自信があるのだが、何が悪くて君にそのように壁を作られたのか聞いてもいいだろうか? 命を救ってくれたシェリー嬢に好意を抱いているのは現状本当なのだが」


 静かに私は笑みを浮かべると、一歩後ろに下がってから頭を下げた。


「私のような平民の女に、そのような言葉勿体ない限りです。ですが先ほど言った通り私はあくまでもただの採取者ですので」


 鉄壁を作り上げる私に、アスラン様は吹き出すのを我慢するように手で口を押えた。


 けれどすぐに我慢しきれなくなったように笑い声をあげた。


「ふっくくく。シェリー嬢。私は、君に驚かされてばかりだ。くふふふ。まさかジャンが女性にあしらわれる日が来るとは! っはははは、だめだ。腹が痛い」


 爆笑し続けるアスラン様に私は驚いていると、ジャン様は肩をすくめてからため息をついた。


「どうやら私はシェリー嬢の中では恋愛範疇外なようだ。それにしても、アスランの笑う姿はいつぶりに見るだろうか」


 その言葉に、私は首をかしげてしまう。


「アスラン様はよく笑われる方ですが。……あ、すみません。あの、恋愛範疇外というか、ジャン様はおもてになるでしょうし、そもそもジャン様の方が私など相手にするわけがないと思います」


 自信をもってそう告げると、ジャン様が私に一歩歩み寄り間合いを詰めると、私の腰に手をまわして引き寄せた。


「ほう。では範疇内だと告げれば、私の愛の告白に応えてもらえるのだろうか」


 私が思わず固まると、先ほどまで笑っていたアスラン様がジャン様の肩に手を置き、笑みを消して言った。


「いい加減にしろ。それ以上冗談を続けるのであれば、黙ってはいられないぞ」


 アスラン様の言葉にジャン様はにやりとした笑みを浮かべる。


「冗談でないと言えばいいのか?」


「現在のローグ王国の現状であればジャンにシェリーが正妻として嫁ぐのは不可能。そのような男にシェリー嬢を渡すとでも?」


「シェリー嬢がもしかしたら私のことを好いてくれるかもしれないではないか」


「あ、いえ。私そもそもジャン様にそのような気はありませんし、一夫多妻制とかは無理ですし、そもそも王族の方が自分のことを本気で好きになるわけがないと弁えております」


 私がはっきりとそう告げると、ジャン様は呆然とした様子で腰に回していた手を放した。


 アスラン様はまた吹き出すのを堪えており、ジャン様の肩をバシバシと叩くと、にやっと笑った。


「残念だったな。よし、ではそろそろちゃんと話をしよう。シェリー嬢、一度座って話をしよう」


「はい。アスラン様」


 アスラン様に倣って私はソファーへと腰掛けた。


 呆然としていたジャン様は少ししょぼんとした様子で、私達の前へと腰掛ける。


 なんだか私は言ってはいけないことを言ったのかなと、不安に思ったのであった。


 そんなジャン様に、アスラン様は小さく息を吐いて言った。


「……女性関係だけは本当にだらしないな。どうにかならないのか」


 ジャン様の表情がさらに悲し気に落ち込んだのであった。


スン(-_-)ってなるの好きなんですよ。主人公が、突然悟りを開いたスン(-_-)。

皆様知ってます? クリスマスまで、あと、一か月です。

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