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十四話

 私は部屋の大きな鏡の前で、真新しいワンピースを着て、静かにポーズを決めたり、くるりと回ったりして、おかしくないかチェックをしていた。


 白いワンピースの腰元にはリボンが付いており、少し可愛らしすぎないかと思ったけれど、上に淡いサーモンピンクの羽織を着ることで、ちょっと落ち着いた雰囲気になったと思う。


 髪には、蝶のヘアピンをつけ、髪の毛も自分なりにセットしてみた。


 その時、部屋がノックされ、私はびくりとすると、屋敷で働いている使用人の女性が姿をのぞかせた。


「シェリーお嬢様。あの、少しよろしいですか?」


「はい。何かありましたか?」


 私が首をかしげると、女性は手に大きめのカバンを持っており、部屋に入ってくると言った。


「今日、アスラン様とのデートですよね? よければ、私にメイクさせてもらえませんか?」


「へ? め、メイクですか? あ、あの、私したことがなくて」


 確かにお出かけをするならばメイクをした方がいいかもしれない。けれど生まれて二十二年、私は恥ずかしながら化粧をしたことがなかった。


「嫌でなかったら、どうでしょうか? あの、ずっと思っていたんです! シェリーお嬢様とても可愛らしいから、きっとお化粧したらさらに可愛くなるだろうなって! ですからお願いします!」


 私は頭を下げられて慌てて言った。


「そんな頭をあげてください! あの、してもらえるなら嬉しいです。こここここちらこそよろしくお願いします!」


 私達は頭を下げあった後に笑い合い、そして私はその女性にメイクをしてもある事になった。


 彼女の名前はマリアで、年は十九歳。お化粧やおしゃれが大好きなのだと話をしてくれた。


 私は化粧を施されながら、こんなにも化粧とはたくさんの工程があるのだなと驚いていた。


 世の中の女性が可愛らしくてキラキラとしているのはこのように努力をしているからなのだと思った。


「さぁ出来ました。どうですか?」


 私は鏡に映った自分を見て、目を瞬かせた。


「え? 誰……」


 本当にそういっても過言ではないくらいに違って見えた。


 鏡に映る自分はまるで普通の女の子のようで、採取をしている時の埃と土にまみれた自分とは全く違った。


「はあぁぁぁ。とっても可愛いです! アスラン様の反応が楽しみですね」


 私はその言葉に、たしかに今の自分なら、堂々とアスラン様の横を歩けそうだとそう思った。


 いつもの採取者としての装いも嫌いではないけれど、たまにはこうして普通の女の子のようにおしゃれをするというのも良いななんて思った。


 そして時計の針はそろそろ予定の時間であり、私はカバンを持つと、もう一度鏡の前でチェックをした。


「シェリーお嬢様、楽しんできてくださいね」


「ありがとう。マリアさん。本当にありがとう! 行ってきます!」


「いってらっしゃいませ」


 私は部屋を出ると、下のロビーにてアスラン様が既に待っていることに気付き、慌てて階段を下りた。


「アスラン様! お待たせしてしまいすみません!」


 初めて履いたおしゃれなリボンのついた可愛らしい靴にはヒールはついていない。


 アスラン様が初めてのお出かけで靴擦れをしたらいけないと歩きやすい物を選んでくれたのである。


「いや、待っていない。……」


 顔をあげたアスラン様と視線が合い、私は恥ずかしさから視線を彷徨わせた後に、髪を耳にかけなおし、そして尋ねた。


「あの……似合っているでしょうか?」


 心臓が煩いくらいに鳴っている。


 マリアのおかげでいつもの十倍くらい見た目がよくなっているのではないかと思う。


 いつもよりはましなはずである。


 そう思ったのだけれど返事がなくて、緊張しながらアスラン様を見つめると、アスラン様は口元を手で覆い、そして視線を反らして固まっていた。


 耳が真っ赤になっていて、私はどうしたのだろうかと思っていると、アスラン様が小さく息を吐いてから、私の方へと真っすぐに視線を向けた。


「すまない……自分の中の感情が、初めてのものばかりで、処理に時間がかかった」


「え?」


「とても可愛らしい。うむ。私が出会ってきた女性の中で最も君は可愛らしいと思う」


「へ?」


 真っすぐにそう言われ、私はアスラン様に手を差し出されてそれを取った。


「行こうか」


「は、はい」


 心臓が煩い。


 私達は手をつないで馬車へと向かって歩き、そして初めてのデートに旅立ったのであった。


 そんな二人を見守っていた使用人一同は二人が出立したと同時に声をあげた。


「あの、あのアスラン様が笑顔で照れて! 初恋ですね! 甘いですねぇエェェ!」


「本当に、砂糖が、砂糖吐くかと思いましたよ」


「シェリーお嬢様も大変可愛らしい! あぁぁ。私どもはいつも平静を装わなければならない立場なのが口惜しい! 出来ることならば、全力で二人の恋を応援したい!」


 レイブンはそんな屋敷の使用人の様子に苦笑を浮かべ、それから手を叩くと、仕事に戻るように促したのであった。


「ついに春が着ましたか。さてさて、これからが楽しみですねぇ」


 屋敷の中は、二人には気づかれないように恋の応援ムードになっていたのであった。



 最近ふと思ったんですが、いつこたつだそうかなって思って、こう、ぎりぎりまで出さなくて、1月とかにもう寒くて無理ってなって出して、そしたら片づけるの面倒で五月くらいまで出てることあって……あれ? このこたつ、あったかい時期の方が、出てる時間長いなって……気のせいですかね?



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