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十二話

 ジャン様はその後体力を回復し、無事に他者に気付かれることなく王城へと戻ることが出来たようだ。


 私はそれを聞いて安心し、結局呪いをジャン様へと向けたのは誰だったのだろうかと疑問には思ったけれど、それは私には手を出していい事柄ではないので胸の内にしまったのであった。


 私は朝目が覚めると支度を済ませて一度魔術塔へと向かい挨拶を済ませ、アスラン様から依頼されている一覧の中から、季節、気温、天気に合わせて採取しやすい物を優先的に決め、採取地へと向かい、採取する。そしてそれが終わると魔術塔へと帰り、今日の報告をして帰るという流れになっている。


 ただ、採取する者によっては明け方や真夜中というものもあるので、そうした時には申請書を出し、採取しに向かうのだ。


 アスラン様は安全面に十分に気を付けるようにと、私に緊急用の転送魔術具を持たせてくれた。かなりの高級品でしかも使い捨て魔術具なので、本当に緊急以外には使えないなと私は思った。


 そして私は勤務時間が終わるといつもはアスラン様と一緒に屋敷へと帰るのだけれど、今日は少し街に寄ってから帰りたいので先に帰っていてほしいという旨を伝えた。


「買いたいものがあるので、先に帰っていていただけますか?」


 なんだか最近一緒に行き帰りしているので、変な気分だなと思っているとアスラン様が首を傾げた。


「何か必要なものでも? それならば私も付き合おう」


「え? あ、でも大したものではないので」


 お出かけの為にピンを買いに行きたいなんて、恥ずかしくて言えない。もしも店が開いていたら洋服とかも買えたらいいな、なんてこと言えない。


 すごくお出かけを楽しみにしていると思われたくない。恥ずかしい。


 私達のやり取りを聞いていた三人は、にやにやとしながら楽しそうに会話に入ってきた。


「アスラン様ったら、本当にシェリーちゃんには優しいですねぇ~」


「僕達にもその十分の一くらい優しくしてほしい」


「あぁ~たしかにぃ。いや、でも男に優しくするのはちょっとねぇ~」


 三人の言葉にアスラン様はため息をつくと言った。


「シェリー嬢はきちんと君たちと違って仕事をこなすからな。発破を掛けなければ仕事ではなく研究ばかりになる君達とは根本違う」


 その言葉に三人は机の上に山住になっている仕事を手に取った。


「いやぁだなぁ。ちゃんと仕事してますよぉ?」


「そ、そうですよ。ははは。忙しいな。今日は残業かな」


「あああそうだなぁ。って、あれ、これってぇ、締め切り……わぁぁぁぁ」


 三人はバタバタと残っている仕事を始め、アスラン様はため息をつくと言った。


「遅くまで残るなよ。はぁ。ちゃんとしておけば君達の能力があれば時間内に終わるはずなんだがな」


 基本的に魔術塔はクリーンな職場であった。勤務体系はアスラン様が魔術塔長になった時点で一掃したそうで、人間はちゃんと寝てちゃんと食事をとらなければ正常な思考はできなくなると、働きやすい職場になったらしい。


 課せられた仕事が終わればきっちり定時で帰れる。ただし、仕事ではなくたまに趣味に走って研究に集中してしまう者もおり、そうした人達はたまに残業をしていた。


 三人は頻繁に残業しており、アスラン様は定期的に三人にお小言を言っているので、なんだかお母さんみたいだなと思ってしまう。


「アスラン様は大変ですねぇ」


 そう告げるとアスラン様は大きくため息をついた。


「魔術師とは基本的に没頭すると集中力がすさまじい生き物だ。けれどそうしていくうちに寝ることも食べることもおろそかにしがちでね、それでは正常な思考を抱けるわけもない。なので、管理職はそれを見守ることも必要なのだ」


「なるほど。大事な役割ですね。では、アスラン様、私は少し寄り道をして帰りますので、これで失礼いたします」


「あぁ……もしやついてきてほしくないという事か?」


 一瞬、しょぼんとアスラン様がいじけたように見えた。


 私は慌てて首を横に振った。


「ま、まさか! ついてきてほしくないのではなくて……ただ、恥ずかしくて……」


「……っ! そうか。なるほど、男性が一緒では生きにくい場所もあるか」


「え? えっと、いえ、そういう意味ではありません」


「?」


 私は結局誤解を生むよりはいいかと、恥ずかしいけれど仕方がないと口を開いた。


「あの、お出かけ用の服とか持っていないので……それをこっそり見に行こうかと、思いまして……今度アスラン様とのおでかけに……着たくて」


 最初はヘアピンだけでもと思ったけれど、こうなった以上、洋服なども欲しくて見るつもりだったと白状した方がいいだろう。


 私がそう言うと、アスラン様は表情をほころばせた。


「ならば、私が店を案内しよう」


「いいのですか?」


 アスラン様とお出かけをするために買い物に行くための買い物……。これは良いのだろうかと、私は考えるのであった。


 最近、Twitterでいろんな方と交流をするのですが、お互いに生活がある中で小説を書きまくっている同士に出会えて楽しいです(●´ω`●)

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