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081 情報収集


「ガキ女、おもしれェマントだナァ。ちょっと見せろや」


 悪魔が血を流すソリスの体を持ち上げる。マントの様子を見ながら、彼女の傷口をグリグリと爪で抉る。

 ソリスは必死に歯を食いしばり、悲鳴を上げまいとする。

 ブチ、と頭の中で音がした。


「ルーン、ごめん!!」

「ダメだ! 君は戦うな!!」


 俺はルーンの静止に構わず、目を瞑り気を集める。高まった気は右手に集まり、光球となる。

 そして悪魔に向けてそれを放つ。


「煌々練波!!」

「あァ? また光魔法かよ」


 悪魔は面倒くさそうに手をかざす。ブラックウインド、と唱え黒い風が吹く。

 だが俺の練術は勢いを落とさない。


「なッ! まさか、練気かァ!?」


 そこで初めて悪魔が焦ったような表情を浮かべた。

 ソリスの体を離すと、両手で俺の攻撃を受け止める。


「魔炎ッ!!」


 ブワァッ! と悪魔の体から魔炎が噴き出す。

 それは悪魔の体を覆ったかと思うと、俺の光線を押し返し始める。


「オイオイオイオイ! まさか練気を操るガキがいるなんてナァ!! あーいや、練気を使うのはガキばっかだったか?」

「オォオオオオオ!!」


 更に気を練り、俺は勢いを強めていく。


「面白れェが、まだ単純な練気だナァ。ガキ」

「練気って……なんだ……!」

「そんなことも知らねェでこの力使ってんのかァ? まさか天然の練気使いか何かかよォ」


 悪魔が俺の問いに答える。


「こんな素のままの自然エネルギーじゃ、俺は倒せねェナァ。もっと練気について調べてから出直しナァ。最も……」


 魔炎が更に増え、俺はどんどん追い詰められていく。


「お前はここで死ぬけどナァ!!」

「ガあああああああ!!」


 魔炎が俺を包む。奴の体から放出され続けるそれに、俺は何とか練術で対抗するが、長くは持たない。

 早くやり直さなければならないが、それすらもままならない。

 これは、やばい……!


「「リドゥ!」」


 突然魔炎が止む。

 いや、違う。俺に向けられていた魔炎を二人が受け止めている。

 練術による抵抗力のない二人が、その射線上を塞いで俺を守っていた。


「ソリス! ルーン!」

「ぐううううう! 早くしろおおおお」


 既に瀕死だったソリスは声もなく倒れた。生きているかどうかわからない。

 残されたルーンもその体に魔炎を受けるだけで限界そうだった。

 俺は画面を取り出し、画像に触れる。

 光が溢れる。


「二人とも!!」


 俺はまた、得た情報を二人に伝える。





「結晶。魔炎。魔王の封印。光属性。練気。女神の転生者」


 森の中。禍々しい魔力が俺たちを探している気配がする。

 俺の集めた情報をルーンが整理する。

 まだ悪魔に見つかるまで数十秒時間がある。


「この辺りが限界かもしれない。いいか、リドゥ。ここから君は結晶を破壊する前まで戻れ。そして結晶を破壊しなかった場合、その悪魔が現れるかどうかを調べるんだ」

「もう……もう、いいのか」

「ああ。君には苦労を掛けたね」


 ルーンが俺を見て微笑んだ。

 彼らとしては、先ほど俺を抱き締めたところだろう。そんな彼らが再び俺を抱き締める。

 どれ程酷い顔をしていたのだろうか。俺の顔を見ただけで二人が行動してしまうくらいには、俺の表情は酷いものだったのだと思う。


「魔王やその配下と呼ばれる存在は君の力を知っている可能性が高い。何度も指を潰しに来たのがその良い例だ。あと、練術にはまだ先があるみたいだね。それを君はこれから探していかないといけない。魔王の配下に通じる可能性が高い力だ。僕たちもきっと協力するから、必ず見付けるんだよ」

「……うん」

「それと、アンタはこれから何度もやり直すことが多くなると思うけど、しっかり心を休めるのよ。折角過去にも未来にも行けるんだから、楽しいことも何回も繰り返しちゃいなさい」


 ソリスが笑って言った。それは……そんな使い方は、思いついてなかったな。


「前にも言ったけど、君さえ死ななければ僕たちはどんな未来も受け入れるよ。もし君が今の僕たちに近い僕たちと未来を歩みたかったら、結晶の問題を解決してからそのままに進んでくれても構わない」

「逆に、今回の件を丸々解決したいなら、それもまた意思を尊重するわ。……アンタが思い出の中で苦しまないことだけ、祈ってるわ」

「……ああ、ありがとう」


 俺は二人から離れる。

 ソリスとルーンが並んでこちらを見る。その顔はとても優し気で、愛情に満ちていた。

 禍々しい魔力が俺たちを捕捉し、茂みの向こうから悪魔が現れる。

 俺は画面を取り出す。


「いってらっしゃい、リドゥ」


 背後の悪魔に目もくれず、二人は俺に手を振った。


 光が溢れる。



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