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077 VSソリス&ルーン


 ソリスがこちらへ飛び掛かってきて、背後からメーネの雷撃魔法が飛んでくる。

 よく見ると向こうの方からルーンの援護魔法も飛んで来ていた。

 ソリスさえ避けられれば雷撃魔法はどうにかなりそうだと判断できた。


「アアアアアアアッ!」


 しかし一回のやり直しで上手くはいかない。

 また何度も何度もやり直す。

 光が溢れる。


「らァ!!」


 二十回ほどやり直した頃、俺はようやくソリスの体を捕まえ、地面に押し倒した。

 背後で雷撃魔法と別の魔法が撃ちあい相殺されていた。


「また……!」


 ソリスはギリギリと歯を鳴らして俺を睨んだ。

 俺は笑顔を歪めてそれに返す。


「今回は20くらいで済んだからマシだったよ!!」


 俺は彼女の体を向こうの方へとぶん投げる。

 空中では姿勢の制御が出来ず、彼女は部屋の端まで吹き飛んでいった。


「メーネ、暴れるなよ……!」


 俺は死体の少女を抱きかかえる。腕の中に抱くと、その小ささを実感して泣きそうになる。

 彼女は冷たい手で俺の頭をポカポカと殴ってくるが、魔法による反撃はない。

 体を接触させたことで自滅を免れなくなったと判断したのだろうか。偶然だが攻略法を見付けた気がする。

 俺は魔女を抱え、走る。

 後方からルーンの叫び声が聞こえる。


「エクスプロージョン!!」

「なにッ!?」


 範囲魔法。いつかにゴブリンを20体程一気に焼き尽くした呪文。

 マントで体を覆うとして気付く。

 ない。


「ガアアアアアアアアア!!」


 俺の背後で魔法が爆ぜる。

 爆風で体が吹き飛び、少女のことも離してしまう。

 直後、二度目の爆発魔法で少女の遺体が弾け飛ぶ。

 目を覆いたくなる光景。ルーンは爆炎でそれが見えていないのだろう。……いやわざとか。

 妹が爆散するところを見たくないから、範囲魔法で一体を攻撃して、見ないままに事を処理してしまおうとしているんだ。


「ルーンめ……覚悟が足りないぞ……!」


 俺はよろよろと立ち上がり、画面を表示させる。

 このダメージからして、あくまで標的はメーネらしく、俺を傷つけるつもりはないらしいことが窺える。

 ルーンの心情による爆炎。これは目くらましに使えそうだ。炎は自力でどうにかしなければならないが、一応考えがある。

 次の作戦を立てながら画面に触れた瞬間、炎から俺の防火のマントがこちらへ飛び込んで来た。

 ……いや、実際には違う。俺のマントに包まったソリスだ。


「させない!」


 ソリスが俺の指を掴む。

 間一髪。既に俺は画面に触れていた。

 光が溢れる。


「エクスプロージョン!!」


 背後からルーンの声が響いた。

 襲い来る爆発魔法。俺は腕に抱えた少女をエクスプロージョンの方へ向けた。


「メーネガード!!」

「アイスストーム」


 狙い通り。

 彼女は自身に影響のない範囲になら自衛の為に魔法を使う。

 彼女は氷結魔法を発動させると、爆発魔法を相殺した。

 次いでやって来る魔法も、メーネを向けることでガードする。

 俺は再び彼女を腕の中に抱きかかえると、広間の奥を目指す。まだ俺はそこへ行ったことがない。だが、そこに活路があるのを確信していた。


「リドゥ! メーネを離しなさい!! アタシたちはアタシたちで未来を選ぶのよ!!」


 背後から剣を携えたソリスが走ってきている。


「ソリス! お前たちは自棄になってるんだ! 大事なものがなにかわからなくなっているから、俺は二人を全力で止めてやる! 俺が二人を守るんだ!」

「何のことを……言ってんのよ!!」


 彼女が一層踏み込み、こちらへ飛んでくる。

 俺は左腕でメーネを抱え、右手一本でソリスの攻撃を受ける。


「ぐううう!」

「片腕でアタシのこと抑えられんのかしらね!!」


 刃が混じり、火花が散る。

 彼女は両手、俺は片手。結果は火を見るより明らかだが、俺は根性で耐える。


「させ、ねえよ」

「離しなさい、よ……!」


 グリグリと、徐々に俺の方へ剣が押し込まれていく。

 俺は左手で少女の体勢を何とか変えて活路を見出そうとする、が直後に均衡が崩される。

 剣が弾き飛ばされ、それに伴うように俺も吹き飛ばされた。


「ここが、俺の目的地か……」


 吹き飛ばされて広間の奥へと到達する。通路と同じ幅の扉があり、そこが目的地だと確信する。

 死体の少女は俺が吹き飛ばされたと同時に離してしまい、向こうの方へ転がってしまった。

 ソリスがその近くに立ち、剣を構える。


「ハァ、ハァ、ハァハァハァハァ……ッ!」


 彼女の呼吸が荒くなる。

 狂気に呑まれたソリスと言えど、この一瞬は耐えられない程の苦痛らしい。

 構えた剣を、中々振り下ろせないでいる。


「煌々練波!!」


 俺は練術を繰り出し、右手から光を打ち出す。

 気付いたソリスが光に刃を立てた。


「邪魔、しないで!!」

「させねえ、って言ってんだろおおお!!」


 更に練術を高め、俺は彼女へ距離を詰める。


「ルーン、アタシごとやりなさい!」

「……エクスプロージョン!!」


 ソリスが叫ぶと、またも向こうの方からルーンの爆発魔法が飛んでくる。

 ダメだ、間に合わない……!


「アイス、ストーム」


 ソリスとメーネに直撃するギリギリで。

 横たわったままの少女が、首だけをそちらに向けて魔法を唱えた。

 相殺しきれなかった爆風が二人を吹き飛ばし、それぞれの体が飛んでいく。

 幸いなことにメーネの体が俺の元までやって来る。今のタイミングでなければこうは行かなかっただろう。計算されつくしたようなタイミング、角度。本当にラッキーだ。

 本当に――?


「メーネ」


 小さく呼ぶと、彼女が首をこちらへ向けた。


「まさか、お前。意識が――」

「ライトニング」

「そんなことなかった!!」


 俺は慌てて剣を抜き取ると、雷撃魔法を受け流す。

 再び俺は彼女の体を抱きかかえ、扉を目指す。

 俺だけにしか気付けない。俺だから気付けたこと。

 彼女の体と密着して練術を使用して、やっと分かった。彼女の遺体に繋がる、まるで操り糸のような魔力の流れがあることを。

 そしてその流れが、この扉の向こうから来ていたことを!


「練術!」


 俺は扉を蹴破り中へ飛び込む。

 中には三人の男が禍々しい結晶の周りを囲んで立っていた。


「魔の導き……お前らがメーネを操ってんだな……!」

「驚嘆。このゾンビの猛攻を掻い潜り、我らの認識阻害まで打ち破るとは」

「俺じゃねえよ……お前ら、聞いて驚け。今から狂気にイカれた狂戦士どもがお前らをぶっ飛ばしにやって来るからな」

「笑止」


 結晶から嫌な魔力が流れており、腕の中でメーネが暴れる。

 ソリスとルーンが来るのも時間の問題だ。

 俺は俺の為すべきことを。俺の選択の為に全てを知らなければならない。




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