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【6/12書籍発売】転生令嬢は乙女ゲームの舞台装置として死ぬ…わけにはいきません!  作者: 星見うさぎ
第3章

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噛み合わない証言

 


「お見苦しい姿をお見せして申し訳ございません。こうしてメルディーナ嬢が無事と確認できただけで十分です。この度の罪、いかなる刑も受け入れる所存です」


 ひとしきり涙を流した後、ニールはそう言って頭を垂れた。体は押さえ込まれたままなので文字通り頭だけを深く深く下げたのだ。


 意味が分からない。私の無事?私が無事じゃなかったのはセイブスでのことだわ。


「待て、待て。そう自分で全て結論付けずにきちんと話をしてくれるかい?君の話次第ではメルディーナやイーデンにもそれ相応の処罰を下さなければならない」


 ハディス殿下はちらりとこちらを見ながらそう言った。恐らくこの人は多分本気で私やお兄様を処罰する気はないだろう。

 だけど、普通に考えればこうしてセイブス王国の騎士が城に侵入しようとした時点で私やお兄様も共犯で、何か良からぬことを企てていたと思われても仕方ないのだ。

 ニール……ここまで愚かではなかったはず。


 ふとリオ様に聞いた話が頭をよぎった。もしかして、こうしてニールが以前より短絡的に見えるのも、リリーを止めることが出来なかったのも、濃くなりすぎているセイブスの瘴気の影響を受けている……?


 ハディス殿下の厳しい言葉にニールは顔を青ざめさせ、はっと息を呑んだ。


「いえ、メルディーナやイーデンは関係ありません……!全ては私1人の愚かさが起こした行動です。セイブスの他の人間ももちろん関係ありませんっ……!」


「落ち着け。何度も言うがまず話を聞きたい。お前はこの2人がくれば話すと言ったね?とりあえず全てを話してもらおう」


 そういうとハディス殿下はニールを押さえ込んでいた兵に拘束を解かせる。攻撃の危険性はないと判断したのだろう。剣はすでに取り上げられているようだし、恐らく他に武器を持っていないことも確かめられているのだろう。


 ニールは後ろ手に捕らえられていた手を解放されても跪いた体勢を変えない。


「まずお前は何の目的でこのアーカンドの城へ侵入しようとした?」


「メルディーナ・スタージェス侯爵令嬢がここアーカンドで生きているとの情報を得て、彼女が本当に生きているならば救出を試みたいと思っていました」


「つまりお前はこのアーカンドでメルディーナが捕らえられている可能性があると考えた?」


「……はい」


 不敬だと分かる内容も口にしている。取繕わず真実を話すと覚悟しているのだろう。

 それにしても、私を殺そうとしたのはセイブスなのに、アーカンドで捕らえられていると思って救出を試みようとした?話だけ聞いているとむしろ生きているならば殺すために私を探していたと言われているように思える。けれどニールのあの涙が嘘とは思えず真実を分からなくさせる。


「アーカンドがメルディーナを害そうとするはずもない。……しかし、お前にはそれが分からないだろうな。それにしてもメルディーナを殺そうとしたのはむしろセイブスだと聞いているが?」


「いえ!セイブスは必要に迫られた行動をとったまで。彼女に疑われたような罪がないのであれば、決して彼女の命を脅かすつもりではありませんでした!今はセイブス王国側とメルディーナの間に誤解があると思うのです!私は……メルディーナが逃げ出したことにも理由があると、ずっとそう考えて……」


「理由だと?」


 低く唸るような声を出したのはリアム殿下だった。

 私のために怒ってくれているのかと思うと複雑な気分だ。ずたずたになったままの心が軋むような気がする。


「リアム、お前は冷静に話せないだろう、ここは私に任せろ。陛下からもこの場を預けられている」


 ハディス殿下の隣に座る陛下はじっとニールを見つめ続けている。


「必要に迫られた行動とやらも気になるが。殺されかけ、生きたいとボロボロで逃げ出したメルディーナの行動にどんな意味があったと想像しているのか是非聞かせてもらいたいものだね」


「殺され……?先程から、よく話が見えないのですが……」


 ニールは本気で戸惑っているように見える。これも演技?それとも……?


「まず初めに伝えておこう。メルディーナは何の罪も犯していない。お前はなぜ分かるのかと言いたいだろうが、それは確実だ」


 本当に人を殺そうとした者の魔力がこれほど聖なる力に満ちたままでなどいられるわけがないからね、とハディス殿下は私にむかって微笑んだ。

 涙が出そうだ。あれほど誰もが私を疑う目で見つめた。アーカンドで皆が信じてくれているのは分かっていたけれど、こうして言葉にして言い切ってくれることがここまで嬉しいと思わなかった。


 私が愛し子という事実もその信頼を後押ししているのかもしれないけれど、「愛し子だからそんなことをするわけがない」と妄信的に信じられているわけでもない。

 今回は魔力を見ての判断だけれど、少なくとも確実な事実を見て判断してくれていると分かる言葉だった。


「その上で問おう。彼女は侯爵家の令嬢であり、王族の婚約者でもあったのだろう?なぜ問答無用で地下牢へ入れた?裁判や確かな調査も行わず、毒に死にかけた彼女の治療すら放棄したのはなぜだ?私にはセイブスの人間が意図的に彼女の命を奪おうとしたとしか思えない。事実、逃げ出さなければ彼女は生きてはいなかっただろう」



 ハディス殿下の言葉に、ニールは目を見開いた。





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― 新着の感想 ―
[一言] 私が昨日書き込んだ予想が見事に外れて喜んでいます (^o^;。でも、まさかニールがメルディーナの救出のためだけに命を懸けるとは思いませんでした。それほど強い罪悪感やら後悔やらを抱えているとい…
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