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【6/12書籍発売】転生令嬢は乙女ゲームの舞台装置として死ぬ…わけにはいきません!  作者: 星見うさぎ
第2章

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聖女リリーの思惑

 

 メルディーナのいなくなった後のセイブス王国では、聖女リリーが王宮に与えられた部屋で侍女も下がらせて1人、顔を歪めて怒りに堪えていた。



「メルディーナ・スタージェスはどこに行ったのよ……!」



 聖女毒殺未遂でメルディーナが捕らえられた夜。これで全部上手くいくとあんなに嬉しかったのに。


(まさか、牢から逃げ出すなんて……!そもそもどうやって逃げたの?どこに逃げたのよ!)


 握りしめた手の中で、クラウスにねだった高級なドレスに皺が寄るが関係ない。ドレスはまた贈ってもらえばいいのだ。自分は「予言の聖女様」なのだから。


 あの夜、見張りについていたはずの騎士は平民出身の下級兵に職務を押し付け、その平民衛兵達は無様にも3人全員が眠っている状態で牢の側で発見された。


 クラウスがすぐに罪人の逃亡に気付いたようだが、後を追った騎士達もまんまと彼女を見失い、のこのこ戻ってきて宣った。


「あの時、確かに獰猛な獣の遠吠えを近くで聞きました。獣が徘徊する夜の森に入って、無事でいられるわけがありません!メルディーナ・スタージェスは恐らく食い殺されたことでしょう……」

「おいっ!」

「え?あっ……!申し訳ありません!聖女様の清廉なお心に影を落とすようなことを申してしまいました……!」


 清く美しい聖女様の耳に入れるには過激な言葉を使ってしまったと思ったようだが、そんなことはどうでもよかった。


(どいつもこいつも役立たずね……!)


 メルディーナ・スタージェスが死んだ?まさか!

 そうであったならどれほどよかったか。



「でも、もしもどこかであの方が生きていて、また私の命を狙ってきたらと思うと怖いのです……確実に安心だという証拠がなければ夜も眠れません」


 目を潤ませて、上目遣いで見つめると騎士たちは簡単に湧きたつ。


「ご安心ください!確かに遺体は見つかっていませんし確実に命を散らしたという証拠は見つかっていませんが、まず生きてはいないでしょう」

「そうです!万が一あの罪人が生きていたとしても、私どもが必ず聖女様をお守りいたします!!」


 口々に自分に侍るように近寄り、心底思いやっているような顔をする男たち。

 だけど、そうじゃないのだ。そういうことを望んでいるわけではない。この無能たちは、はっきり「死体が見たい、見つけてこい」と言わねば分からないの?


(それに、もしも私に危険が迫った時にはあんたたちじゃなくてクラウス様やニール様に守ってもらうわよ)


 本心を隠してにっこり微笑む。


「皆さん、ありがとう!とっても心強いです!」


 チヤホヤと甘い声をかける騎士達の向こうで、こちらを見守るニールは複雑そうな顔をしている。


(私の周りに騎士たちが侍ることに嫉妬しているの?それならそれでもっと感情あらわに周りを牽制して見せてよ!)


 ()()ばかりが積極的な現状。こんな状況では満足出来ようはずもない。

 クラウスもニールも、確かに自分を特別に思っているだろう。だが、それだけでは満足できない。本当ならもっと情熱的に自分を取り合い、甘く迫ってくる姿を見れるはずなのに……。


 そう、()()()()()()()()確かにそうだった。


(やっぱり、メルディーナ・スタージェスがシナリオ通りに動かないから少しずつ何かがおかしくなっているのよ)


 本来ならば、クラウスやニールに愛される聖女リリーに嫉妬し、醜い本性をむき出しにありとあらゆる嫌がらせに手を染め、あげく自分を殺そうとする悪役令嬢・メルディーナ。


 なぜかメルディーナは自分に嫌がらせをするどころか、最初からどこか距離を置こうとしているようだった。


(まさか、本当にあの女も転生者なの?)


 そんなことを考えるリリーこそ、前世「あなたに捧げる永遠の愛」という、大流行した乙女ゲームにハマった記憶を持つ転生者だった。


 メルディーナも転生者だとすれば、シナリオ通りに動かなかったことにも説明がつく。


 そのままでも多分、誰とでも結ばれたんじゃないかなとは思うけど……ただのぬるいハッピーエンドなんて物足りないものね。このゲームの何が良かったかを考えてみれば当然でしょ?


『選ばなかった相手もずっと自分を好きでい続けてくれる』という、皆の愛を独り占めしたいという乙女の独占欲を満たしてくれるラスト。

 そして、聖女として全ての人間に憧れられ、敬われ、大事にされる突き抜けた名声を手に入れられること。


(メルディーナが生きて、そして悪役にならなかった場合……どんなにハッピーエンドだって言ってもきっと私はあの女の陰に埋もれることになるわ)


 リリーにはその確信があった。だからこそ、シナリオをもとに戻そうとメルディーナを罠に嵌めるようなことをしたのだ。

 あのお茶会の時、もしもメルディーナが自らお茶を淹れると言わなければ、自分が毒を飲んででも罪人にしたてあげるつもりだった。自分は聖女。多少苦しんだとしても、自分に聖魔法を使えば毒で死ぬことなどないと分かっていた。


 それなのに……。



 メルディーナ・スタージェスはどこかで生きている。リリーには、そのことにも確信があった。


(だって、死んでいれば私にそれが分からないはずがないもの)


 どうにか彼女を探し出すことはできないか……。

 部屋でじっとしていてもイライラするばかりだ。クラウスの所にでも散歩がてら行こうかしら。

 そう思い立ち部屋を出る。


 王宮の廊下を歩きながら真剣に考え込むリリーは、攻略対象ニールが自分をじっと見つめていることにも気づかなかった。






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