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妖精たち

 


 うーんと唸っていると、ロキは不思議そうに首を傾げた。


「そもそも、俺と出会ったばっかりの頃は妖精達とも遊んでたじゃないか」


「えっ?」


「あれ?覚えてない?んー、メルはまだ小さかったし無理もないかー」


 聞けば聞くほど、覚えがなさ過ぎて本当に私のことなのか疑問に思えてくる。特に……私が妖精たちに魔力を分けていたなんて、もしかして他の誰かがしていたことを私だと勘違いしてるんじゃ?

 そう思ったけれど。ロキの爆弾発言は続く。


「多分()()()()()メルと遊んだことあるやつ何人もいると思うよ?」


 ――この中にも?


 ほら、と私の顔の前から身を翻して、ロキが森の方へ振り向く。

 私が視線を向けるのを待っていたように、近くから遠くへ向けて順々にぽぽぽぽっ!と色とりどりの花がそこかしこに咲いていった。


 花の、甘く優しい匂いが広がっていく。



「うそ……」


 そして、いた。花の陰から、次々と小さなその姿を覗かせている。そわそわとこっちを見つめて様子を窺っている。


 ロキよりもっと小さくて、なんだか頼りなげな様子のその子達。ロキの様に銀色ではなくて、自分の隠れた花と同じ色にほんのりと発光している。


 思わず立ち上がり、1番近くにいた子の方に近づいて行く。そっとしゃがみ視線を合わせると、その子はびくりと体を震わせ、花の陰から上目遣いで私を見つめた。


 しまった。なんとなく側に来ちゃったけど、何も考えてなかった。



「えっと……こんにちは?」


 その瞬間、不安そうだったその妖精がぱっと明るい顔になり、花の陰から出てきた。

 ――と、それに続くように、あちこちから一斉に妖精たちが私の周りに集まってくる!


「わわ!」


「はは、皆嬉しそうだね!ちなみに妖精は言葉を喋れないけど、メルの言葉の意味は分かるよ」


 確かに、みんな目が輝いていて。


 す、すっごく可愛い……!!!


 まるでこっちこっちと言ってるみたいに妖精たちが私をチラチラ見ながら移動するので、とりあえずついていく。



「これくれるの?食べれるってこと?ありがとう!」


 木に生っている見たこともない果物を食べてみて!と渡されたり。


「わあ!こんなお花初めて見た!こっちも!すごく綺麗だね」


 こんなこともできるよ!とでもいうように自分と同じ色の色んな花を咲かせて見せてくれたり。


 にこにこと嬉しそうにあっちへこっちへ連れて行っては色々なものを見せてくれる妖精達。


 どんどん森の奥深くへ入っていき、同時にどんどん息がしやすく、体が軽くなっていく。

 まるで羽が生えたみたい。今なら空も飛べそうな程。これが本来の状態なの?何年も瘴気が濃くて体が重く感じていたから、今こうやって感じるだけ?


 体が軽くなる程に、今までがおかしかったのだと、セイブス王国に瘴気が溜まりすぎているのは事実なのだと納得していく。



 いつの間にか、ひらけた場所に出ていた。

 黒い狼さんと会っていた場所とは比べ物にならないくらい、大きな泉がある。

 その畔を取り囲むように鮮やかな花々がたくさん咲いていて。もちろん妖精達もたくさんいた。


 ずっと私を導いてくれていた子たちが、まるで「ようこそ!」と言っているように前に躍り出てにこにこと笑った。嬉しそうに辺りを飛び回る。

 泉の側にいた妖精もどんどん私の周りに集まり、また私を泉の方に連れて行こうとする。


「ふふふ、くすぐったいよ、ちょっと待って」


 微笑ましい光景だ。妖精達の放つ柔らかな色に包まれて、まるで夢を見ているみたい。

 ロキの周りにも妖精たちが集まって何かを話している?なんだかロキがお兄ちゃんに見えてきた。うーん、精霊は妖精の上位の存在だって言ってたし、あながち間違ってないのかも?


 ――お兄様、どうしているかな?私がいなくなった後、どうなったんだろう。……無事でいるだろうか。

 ふと不安がよぎり、顔を上げ現実に引き戻されるように遠くへ視線を向けた。



 咄嗟に体が硬直する。


 泉を挟んだ向こう側に……真っ白な。




 真っ白な、前世で言うライオンのような獣が寝そべっていた。




「ホワイト、ライオン???」


 遠目でも分かる。すっごく大きい。私を背に乗せて走ってくれたあの狼さんよりもずっとずっと大きい。



 思わず漏れた小さな呟きだったのに、私の声に反応するように、ライオンが頭を上げこちらを見た。


 その視線にひれ伏すように、周りを自由に飛び回っていた妖精たちが一斉に地に降り、頭を下げる。


 圧巻だった。



 ロキだけが、私の側に戻り寄り添うように肩に触れた。

「怖がらなくて大丈夫だよ?」



 ……ううん、怖くなんてない。

 なんて……なんて綺麗なんだろう。


 あまりの感動に、言葉が出ない。

 呆然と突っ立ったままの私を眺めながら、ライオンは体を起こし座りなおす。その動きのひとつひとつがすごく優雅で……見惚れ続ける私に、ライオンがゆっくりと口を開いた。




「――名を」


 しゃ、喋れるの!?!?






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