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第3章~勉強会の中身はもうチグハグ!?~

 午後1時に始まった勉強会はあっという間に2時間が過ぎ、3時になった。当初は、嫌々ながら付き合ってやったという気持ちのサンガンピュールだが、あずみと一緒にいられることもあり、今は満更でもない表情をしている。たまに「にぱぁーーっ」という彼女らしくない笑顔を見せているのがその証拠だ。そして肝心の数学の課題ワークはちっとも進んでいない。それは数学の試験が行われる7日(火)の帰りのホームルームの時に提出するものだ。頭の中で妄想を広げている余裕は無いはずだ。

 美嘉「ゆうこ、どうしたの?」

 返事が来ない。サンガンピュールは親友・あずみとずっと一緒にいられるのが幸せだと感じているせいか、気持ち悪い笑みを浮かべたままだ。

 美嘉「ねえ、ゆうこってば!」

 聞いちゃいないと感じた彼女はとある行動に出た。

 美嘉「・・・しょうがないな。・・・でいっ!!」

 なんと自分の消しゴムを思いっきり投げた。右腕から放物線が描かれ、サンガンピュールの額に直撃し、その反動でサンガンピュールの後ろにあるあずみのクローゼットに近い場所に落下した。

 サンガンピュール「痛っ・・・何するのよ!!」

 クラスメイトから急に攻撃されたことを不意打ちにように感じた彼女はカッとなった。

 美嘉「だって全然返事してくれないんだもん!ずっとニヤニヤしててキモかったし!」

 サンガンピュール「何ぃぃ!?」

 不毛な言い争いで勉強会がぶち壊しになりそうになった。

 あずみ「ちょっと!」

 ここで生徒会書記が間に入った。

 あずみ「みんな、今日は何のために集まったんだっけ?」

 彼女の顔はニコニコしているものの、その視線は実に冷ややかだった。サンガンピュール、美嘉の両者にとっては怖く感じた。ここでは美嘉の方が早く状況を察した。

 美嘉「あっ・・・ご・・・ごめんね、急に消しゴム投げて」

 床に落ちた消しゴムを拾おうとした時、クローゼットの手前の床から何やらリボンらしきものが見えた。それを拾ってみると・・・。


 美嘉「ふっふ~ん、あずみ・・・何これ?」


 美嘉はドヤ顔になりながら右手にとあるものを握りしめていた。それは、ベージュ色をしたあずみのショーツだった。


 あずみ「な、な、な、何してるのよ!?」

 春「フフッ、珍しいね」

 あずみ「何がなの!?」

 取り乱したあずみの姿は実に珍しかった。

 美嘉「もうちょっとだけ見てみよーっと!」

 ここで美嘉がガラッとあずみの部屋にあるクローゼットを開けてしまった。すると下の棚からフリルのついた可愛い下着が何着か出て来た。

 あずみ「ちょっと、勝手に覗いちゃダメだよ!」

 温厚なあずみが珍しく声を荒げた。女の子にとって秘密の領域なのだから、それを侵犯されるといくらあずみだからと言っても平常心ではいられなくなる。あずみにとっては公開処刑そのものだった。

 美嘉「何これ、こんな可愛いの穿いてるの~!?」

 黄色い声が思わず漏れてしまった。

 あずみの下着は上下お揃いのデザインで、ピンク色メインの配色だ。ブラはAカップと小さいが上部のあたりには白いレースのフリルがついている。ショーツにもやはりフリルがついており、腰のあたりにはアクセントとばかりに黄色いリボンが飾られていた。

 春「うう・・・うらやましい・・・」

 エレン「両方ともピンクなんて可愛いね、それ!」

 あずみ「もう、みんな許さないよ!!」

 珍しく厳しい口調が出た。仲良しな友達から言われたい放題のあずみだった。


 これに対してサンガンピュールには、そんな「可愛い下着」なんて必要ないくらいな身体であった。つい先月にも、自分の身体を巡ってとある事件が起こったのだ。

 10月20日、木曜日のことだった。2年2組では2時間目に体育の授業が設定されている。事件はその体育の授業開始前に起こった。ひかり中学の場合、教室は男子の更衣室になるので女子は校舎の外にある女子更衣室に移動しなければならない。そこで体育着などへの着替えをするのだが、その時にサンガンピュールは必ずバカにされることがある。

 「あらっ、ゆうこって胸がないのね。つまんないね、ハハハッ!」

 どこの誰かから高笑いの声が聞こえて来るのである。

 「まるで男子じゃん。だったら男子のロッカーで着替えて来なよ」

 サンガンピュール「うるさぁい!!あたしがそんなことするか!」

 毎回こんな調子でサンガンピュールの華奢な身体をいつもバカにする女子がいる。その名は水山さゆり。1年時から引き続きクラスメイトになった彼女は中2にしてバストが85前後もある巨乳だ。ブラはおそらくDかEカップだ。

 クラスメイト「さゆりちゃんのおっぱいっていつ見てもおっきいねー」

 さゆりは当然、一部の女子クラスメイトからうらやましがられることもあるが、彼女は気にするそぶりが無いように見せる。

 さゆり「うらやましい?こんなの重くて邪魔なだけだよ。肩も凝るし」

 さらりと言ってのける。おそらく男子生徒が見たら、間違いなく興奮するであろう。

 一方、サンガンピュールの身体はというと・・・男みたいに胸が真っ平らである。バストは70に届いていないだろう。ロンドン旅行の際に落雷の直撃を受けてからずっとこの状態である。その影響で顔が丸っこいことになり、身長もほとんど伸びない。女性ホルモンの流れも止まってしまったのだろうか。

 あずみ「さゆりちゃん、言い過ぎだよ。傷ついてるよ」

 あずみが自分を庇ってくれたが、さゆりは気にすることなく言い返した。

 さゆり「ま~た優等生ぶって!自分がゆうこと同じような胸だからって同情することないでしょ!あっ、もしかして、内申のこと気にしてるんでしょ?先生の評価を気にしてるからそういうこと言っちゃうのかなぁ?ハハハハハハ・・・」

 言い返されたあずみもまた貧乳なのだった・・・。

 さゆりは慣れた手つきで黒いセーラー服を脱ぎ、ブラのホックをはずしてスポーツブラに着替えた。もうお手の物という感じか。いずれにしてもサンガンピュールの立場としては、ジュニアブラすら必要無い自分の身体を侮辱されたことは、女としての自分を否定されているようでもあり、彼女は悔しい思いをした。いずれにしてもまさに、心も体も男勝りの状態である。

 健康診断の時でもそうだった。新学年になった生徒が必ず参加しなければならない行事が健康診断であるが、サンガンピュールは他のクラスメイトと比較して身体が一回りもふたまわりも小さい。身長は約120センチといったところか。


 そんな中、あずみの部屋のドアがノックされた。

 あずみの母「みんなぁ、お疲れさ・・・って何これ!?」

 5人のためにおやつのケーキとジュースを持ってきた母親は、愛娘の部屋のドアを開けた途端に言葉を失った。美嘉があずみの下着を茶化し、エレンがはやし立てている。あずみは顔が真っ赤になっていて動揺している。これに対して春には注意する勇気が持てず、サンガンピュールは飽き飽きしている。そんな光景が広がっていた。まさに勉強会の中身がもうチグハグな状態だった。

 あずみの母「あずみ、少しは部屋を掃除しなさい」

 美嘉「ほーら、怒られてるじゃん」

 母から呆れられたように注意されたあずみは二重に恥をかくことになってしまった。

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