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エピローグ

 被害者とその友人たちが病院で落ち合っていた頃と同じ時間帯、加害者であるドンレミ騎士団側の人間が、本拠地でもある水戸駅北口付近の雑居ビルに帰還した。その者とは、同志・カトリーヌだった。ドア横のインターホンを押して反応を待った。

 マルーンの勇者「はい」

 カトリーヌ「同志・カトリーヌです。帰還しました」

 マルーンの勇者「うむ、それでは合言葉を言ってみろ。結婚して25年目は銀婚式。50年目は金婚式。では、75年目は?」

 カトリーヌ「お葬式」

 マルーンの勇者「よし、入れ!」

 なんと不謹慎な意地悪クイズだろうか。入室許可をもらって帰還の報告をする。

 カトリーヌ「カトリーヌ、ただいま帰還しました」

 マルーンの勇者「おう、ご苦労」

 カトリーヌ「でも、今の合言葉、何とかなりませんか?」

 マルーンの勇者「しょうがねぇよ、同志・エドゥアールの発案なんだし」

 ここで別の部下が会話に割って入った。

 「他にもこんなネタもありますしね」

 マルーンの勇者「どんなものがあったんだ、同志・グレゴワール」

 グレゴワールは茨城県支部駐在で、カトリーヌ同様マルーンの勇者傘下の構成員だ。

 グレゴワール「例えば・・・。お母さんのお母さんはおばあちゃん。では、おばあちゃんのお母さんは?」

 カトリーヌ「ひいおばあちゃん?」

 グレゴワール「違います。答えは『この前、死んだ』」

 カトリーヌ「何なのかしら、それ!」

 グレゴワール「他にもこんなのがありましたね。『次の中で日本の元総理大臣は誰だ。1番・カイフ、2番・サイフ、3番・ワイフ』」

 マルーンの勇者「普通のクイズだったら、正解は1番だな」

 グレゴワール「ところが答え方は、『4番』!」

 マルーンの勇者「ありゃ、一本取られたな」

 ギャグにしか聞こえない合言葉を女は冷淡に見ていた。

 カトリーヌ「・・・ふざけたやり取りですね」

 彼女の言う通り、ふざけたやり取りもそこそこに、話が本題へと切り替わった。

 マルーンの勇者「我々ドンレミ騎士団の最大の目的であるサンガンピュールを匿っているKという男の拉致を最優先に切り替えよう」

 カトリーヌ「噂は聞いております」

 マルーンの勇者「だが昨年のイラッチ仮面と言い、マニクイーン、ガンガルー、それに今回のザンギュラ、ウリアッジョーも失敗した。ニュートリノの戦士は失敗続きだ。うちの同志たちも最近は気が緩んでいるのではないか?」

 カトリーヌ「無責任なワスピーター達に大事な任務を任せるからです!私をあいつらと一緒にしないで下さい」

 彼女は語気を強めた。

 グレゴワール「我々の行動を阻もうとするKやらという一般人が実に厄介です」

 カトリーヌ「誰が存在しようと問題ありません。どんな手段を使ってでも、サンガンピュールを捕らえて、その強大な体内エネルギーでもって『真の世界平和』の実現に利用してみせます」

 こうして次なる作戦が、騎士団内部で考えられていった・・・。


 12月8日(水)、期末テスト最終日。理科、英語、音楽、そして順延された技術家庭の4教科の試験が実施された。全ての試験が滞りなく終わり、12時半過ぎに用事のない生徒は下校となった。

 春「終わったね、テスト」

 サンガンピュール「やったぁ!これでゆっくりできるぞ!」

 エレン「英語はやりやすかったなぁ~」

 美嘉「さすがぁ、イギリス育ちは違うね」

 サンガンピュール「何ぃ、あたしだってぇ!」

 あずみ「ほんと、ゆうこちゃんは意地っ張りだね」

 9教科の試験が全部終わったためか、全員が安堵の表情。後はテスト返却を待つだけだ。


 そして週が明けて、期末テストの結果が判明した。ランキング形式でまとめたら以下のようになった。


 2004年度ひかり中学校 2年2学期期末テスト(900点満点)

 クラスは特記が無い限り2年2組。

 岩本あずみ 825点

 三日月一博 801点

 青木浩之  798点

 初台 春  601点(1組)

 長谷川エレン597点

 塩崎ゆうこ 538点

 長谷川美嘉 524点(3組)


 塩崎ゆうこ・個人成績

 国語:51点

 数学:80点

 理科:55点

 歴史:67点

 英語:94点

 5教科計:343点(前回227点)

 音楽:40点

 美術:40点

 保健体育:80点

 技術家庭:35点

 9教科計:538点


 得意の英語と数学がそれぞれ大幅に持ち直せたのが良かった。英語では約1年ぶりの90点台だった。英語の答案が返却された時、彼女は思わず「よっしゃぁああああっ!!」と雄たけびをあげながらガッツポーズをした。国語ではあずみ達との特訓の成果が出たのか、漢字の部分は全問正解できていた。しかし一方で、芸術系教科は得意な体育を除き、40点以下と低迷した。これは日常の授業態度の問題なのだろう。

 K「おおおっ、すごいじゃん、これは!英語は久しぶりに90点台じゃん!それに5教科で100点以上も上がったなんて、俺の時には1回も無かったよ!」

 サンガンピュール「でしょ、でしょ!」

 ここぞとばかりに「褒めて褒めて」とアピールしまくった。だがKはその一方で、

 K「でも国語と数学はもっと取れたはずだな。それぞれあと5点くらい。特に数学は簡単な計算問題は全問正解できる余地があると思うんだけどなぁ・・・」

 手厳しいのは相変わらずだった。サンガンピュールは一転して口をぷくっと膨らませ、不満そうな顔をしている。それを見かねたのか、

 K「でもまぁ、期末テストは終わったわけだし、お祝いに今度の日曜日は久しぶりに北千住に行こうか!」

 サンガンピュール「やったぁ!」

 だがここで彼女は重大なことを思い出した。期末テスト前から続く重要な案件だった。

 サンガンピュール「・・・そう言えばさ、・・・Yさんのことは?」

 Kでも難しい問題だった。非常に言いにくいという感じだった。

 K「・・・Yのこと?・・・難しいことばっか考えててもしょうがねぇよ。とりあえず休日は楽しく生きようよ」

 実弟とは不仲とはいえ、「絶対助けてやる」という一言すら出てこなかった。それに対してサンガンピュールはなぜだろう、一種の不信感を感じていた。


 「サンガンピュールの物語・恐怖の期末テスト」-完-

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