表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/12

第9章~病院にて~

 この事件は後始末で尾を引いた。サンガンピュールがドンレミ騎士団とその協力者を倒すために使用した大技、「ストライク・ブラスター」は逃走車でもあるプジョーを大爆発させた。スーパー戦隊シリーズでよくある敵の死に方だが、それがあまりにグロテスクに見えた生徒がいたらしく、見物していた生徒数人の気分が悪くなる事態になってしまった。特に女子の中にはその場で倒れてしまう人がいたのだった。学校自体への被害は最小限にとどめたものの、生徒へと間接的に被害を与える形になってしまった。

 また、警察がひかり中学で現場検証をするため、その日(12月7日)の3時間目に実施されるはずだった技術家庭の試験は翌日に延期となった。多くの生徒は安全確保のためにしばらく校舎内で待機した後に順次下校となった。


 帰り道、国道354号線にて4人は一つの集団になって歩いていった。その中でも春は心配そうな面持ちだった。

 春「・・・大丈夫かなぁ」

 エレン「でも今日は早く終わっちゃったからいいじゃん!」

 サンガンピュール「そうだよね・・・あっ・・・!」

 能天気なエレンの言動に、ついうなずいてしまった。同調している場合ではなかったのだ。

 あずみ「ゆうこちゃん、ちょっとまずいよ、今のは・・・」

 春「・・・美嘉さんは今頃・・・」

 下校中の4人はいずれも暗い表情になった。特に普段から明るく前向きに振る舞っているあずみが珍しく心配していることが、事の重大さを象徴しているようだった。とりあえず、各自自宅に戻って昼食とすることになった。

 サンガンピュール「あたしのせいで・・・あたしのせいで・・・」

 罪悪感を覚えたかのように、彼女は下を向いた。


 ドンレミ騎士団の襲撃の際にガラス破片で創傷を負った美嘉は、桜川の南側にあるY病院に救急車で運ばれた。美嘉の学級担任でもある伊藤先生が付き添った。到着後しばらくして左腕の皮膚を縫う手術が開始された。手術は約2時間かかった。その間に、サンガンピュール、あずみ、春、エレンの勉強仲間4人と、美嘉の母親がパートを中断させてY病院を訪れていた。サンガンピュールは青いコートに黒いズボン、白いタイツという私服姿だ。病院の中は暖房が効いていて暖かいためか、コートのチャックを開けた。コートからは緋色のトレーナーが見えてきた。すると、待合室で待っている担任の伊藤先生と遭遇した。

 伊藤先生「岩本、塩崎!・・・わざわざ来てくれたんだ」

 教師の方から声を掛けられた。

 あずみ「こんにちは、伊藤先生」

 ちなみに彼にとってはいずれも受け持ち学級の生徒ではないが、あずみは数学に限らずどの授業でもよく発言するのでどの教師から見ても印象に残るのだった。

 春「あの・・・美嘉さんは今どんな状態ですか?」

 伊藤先生「あぁ、お医者さんは『すぐに終わる簡単な手術だ』と言ってた。大丈夫なはずだが・・・やっぱり心配だ」

 深刻なやりとりが続く一方で、エレンは辺りをきょろきょろ見回していた。病院の内部がよほど物珍しいのだろうか。

 伊藤先生「エレン、少し落ち着きなさい。他の人が見てるよ。ひかり中学の生徒みんながこんな感じなのかと思われたら嫌だろ?」

 エレン「はい・・・」

 彼女は力なく従った。だがその一方でサンガンピュールはいまだに自己嫌悪に陥っていた。

 サンガンピュール「・・・伊藤先生・・・、あたしのせいです、ごめ・・・」

 謝罪しようとした時、あずみに止められた。

 伊藤先生「塩崎がどうしたんだ?」

 塩崎ゆうこの正体を聞かされていないためか、伊藤先生はきょとんとしていた。

 あずみ「今のは気にしないで下さい、ゆうこちゃんも何らかの形で心配してるんですよ」

 伊藤先生「そうか、どっちにしてもみんな見舞いに来てくれてありがとう」

 さらに1時間後。

 美嘉「やっほ・・・いたたた・・・」

 患部である左腕を高く掲げて手を振ろうとしたが、縫った後の痛みが響いている。

 あずみ「美嘉ちゃん、無理しないで!血が逆流するかもしれないから!」

 春「だいじょぶ、美嘉さん?」

 エレン「美嘉!」

 みんなが一斉に声を掛けた。

 美嘉「あたしは大丈夫だって。・・・でも今までの中で一番痛かったなぁ。何、あの消火器投げた奴らは!めっちゃ怖かったわ」

 笑顔を見せながらも、ドンレミ騎士団に対する憤りだけは隠すことができなかった。

 サンガンピュール「美嘉・・・大丈夫?」

 珍しく心配な顔を見せた。

 美嘉「うん・・・まだ痛むけど、とりあえず平気かな?」

 サンガンピュール「良かった・・・」

 その場にいるみんなが安堵の表情を見せた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ