第14話 外伝。リーナ
『アナザーサイドエピソードストーリー物語エピソードサイドストーリー』
~ リーナ編 ~
私はリーナ。
岩に刺さった勇者の剣を抜いたら、勇者になった。
はじめは「私が勇者!?」って思ったけど、
フン!
しかたないので勇者をしてあげてるわ。
なんやかんやあって、ラントに引っ越すことになった。
そして、引っ越しの道中で護衛のみんなとはぐれて、森で迷子になった。
「・・・どうしよう」
森で一人だけになった。
とりあえず、森を歩いていた。
すると、物音が聞こえてきた。
「えい! やあ! とお!」
男の子が木を殴ったり、蹴ったりしている。
「ごめんなさい。少しいいかしら」
「わあ! 君、誰!?」
「私はリーナ。森で迷子になったの」
「ボクはアレス。森で迷子になったなんて大変だね」
「そうなの」
「それじゃ、がんばってね!」
「ちょおま! 助けなさいよ!」
「え!? なんで!?」
「なんで!? ってなんでよ!」
「分かったよ。でも、もう少しで終わるから待っててよ」
「? ええ、しかたないわね。分かったわよ。フン」
リーナは少し離れた木にもたれて、アレスの様子を見ていた。
アレスは木にガンガン攻撃している。
「アレス、さっきから何しているの?」
「特訓だよ」
「特訓?」
「うん。木を一億発たたいてる」
「何でよ?」
「強くなりたいから」
「ふーん。そうなの」
「もう少し待ってて、今99938発目だから」
「分かったわ」
アレスは汗を流しながら、木をたたいている。
リーナは思った。
このホーリーブレイブブレイバーを抜いた私なら、能力で一発で木を折れる。
「アレス、能力は使わないの?」
「・・・」
「どうしたのよ?」
「ボクは能力が使えないんだ」
「なんで?」
「無能力なんだ」
「え!?」
無能力!? そんなの聞いたことが無い。
フィーアルネシアに住む人は、能力を所持していて当たり前だと思っていた。
世の中には無能力なんて人もいるんだ。
大変そうだな。
「変なことを聞いたわね。ごめんなさい」
「謝る必要なんてないよ」
「え?」
「ボクは思ってるんだ。能力や才能で、人の価値は決まらないって」
私は大きく目を見開いた。
泥にまみれて少年のように笑う姿は輝いて見えた。
アレスが動きを止める。
「ふー。一億発たたき終わったよ」
「休憩してからでいいから、道案内をお願いするわ」
「すぐで大丈夫だよ」
「疲れてないの?」
「これも訓練のうちさ!」
アレスは絶対疲れてるだろうに、胸を張って、森をずんずん進んでいく。
「頼もしいじゃない」
「一緒にいられたら、訓練の邪魔だからね」
「ちょおま! なんですって!?」
「ははは! 冗談だよ!」
「ホントでしょうね!?」
アレスとリーナは楽しく会話しながら森を進んだ。
「しっ! リーナ、静かにして!」
「どうしたの!?」
アレスは指さした。
遠くに熊のモンスターがいる。
「あれはクーマグリズリーベアー。この森の主だ。パンチ一発で岩を砕くほどのパンチ力がある。殴られたら絶対に助からないよ。」
「倒す?」
「無理に決まってるでしょ! 頭大丈夫なの!? バレないように迂回して行くよ!」
「分かったわ」
あの程度のモンスターなら、私なら簡単に倒せるけど、ここはアレスの言うことを素直に聞くことにした。
息をひそめて歩く。
パキッ。
枝を踏んでしまった。
「しまったわ!」
クーマグリズリーベアーがこっちを振り返る。
「見つかった! 急いで逃げよう!」
クーマグリズリーベアーがすごいスピードでこっちに来て、追いつかれる。
こうなったら戦うしかない!
私は背中の勇者の剣ホーリーブレイブブレイバーを握った。
グーマグリズリーベアーのパンチが来る。
「危ない!」
アレスがリーナを庇って、クーマグリズリーベアーのパンチを受けた。
バゴオオオオン! ボキボキボキボキ!
「グアアアアアア!」
すごい骨の折れる音がした。
「アレス、大丈夫!?」
アレスはすごい血を吐いて倒れた。
「すごいケガ!」
「ゲハッ! ゲハッ! ゲハッ!」
アレスはすごい血を吐く。
「アレス、大丈夫!?」
クーマグリズリーベアーが近づいてくる。
「・・・大丈夫」
「アレスッ!?」
アレスは立ち上がる。
クーマグリズリーベアーからリーナを庇うように立った。
「・・・心配しないで」
アレスは手を広げ、クーマグリズリーベアーを睨む。
「リーナはボクが守るッ!」
「アレスには無理よ! 無能力なんでしょ!」
「黙れえええええッ!!!!!!!」
アレスが叫んだ。
「才能や能力で、人の価値は決まらない! ボクが証明するんだ! ボクが絶対に証明して見せるッ!!!」
アレスはクーマグリズリーベアーを強く睨む。
クーマグリズリーベアーは動きを止め、振り返り、森に去って行った。
アレスは倒れた。
「アレスッ!」
アレスはすごい血を出している。
「すぐに街に連れて行くわ! それまで頑張って! 強化の超能力!」
リーナはアレスを抱き、まっすぐ進み、3秒ぐらいで街に着いた。
「ここは?」
「アレス、もう大丈夫だよ」
アレスは病院のベッドにいた。
どうやら助かったみたいだ。
「先生、ありがとうございます」
「アレス、感謝はリーナ様にしてあげてくれ。ずっとアレスの看病をしてくれてたんだよ」
「・・・リーナ・・・様?」
アレスのベッドのそばで、リーナが眠っていた。
「そうだよ。その方はリーナ様。この街に引っ越しされた勇者様だ」
「・・・・・・勇者・・・・・・様」
「勇者の剣を所持し、優れた能力を操る、とても価値の高い人なんだ。アレスも失礼のないようにね」
「・・・・・・」
病室にはアレスとリーナの二人だけだ。
時間がたち、窓からオレンジ色の夕陽がさしている。
「・・・あ、寝てた」
「起きたんだね」
「アレス! 大丈夫なの!?」
「はい。リーナ様、助けてくださいまして、ありがとうございます」
アレスは頭を下げた。
私はショックを受けた。
油断したら、目から涙が流れそうだ。
「・・・な、なんで、急に、そ、そんな、言い方したり、するの?」
「勇者様と知らず、失礼な態度を取ってしまいました。今まで申し訳ありませんでした」
「や、やめてよ。わ、私と、ア、アレスの仲じゃない。や、やめようよ。そういうのさあ」
「・・・ですが」
「やめてって言ってるでしょッ!!!!!!」
私は泣いてしまった。
涙は止めようとしても、止まらなかった。
でも、本当に嫌だった。
アレスにそんな風にされるのは、泣いてしまうぐらい、嫌だった。
「さっきみたいに、普通にリーナって言いなさいよ!」
「・・・ですが」
「アレス、言ったよね!? 才能や能力で、人の価値は決まらないって! だったら、私にも才能や能力で、私の価値を決めないでッ!!!!!」
アレスは歯を食いしばり、ため息をついた。
「・・・分かったよ。リーナ」
「アレスッ!!!」
私は花開くような笑顔になってしまった。
胸がすごく温かくなる。
うれしいかった。
「それじゃ、ボクをアレス様って呼んでよ」
「ちょおま! どうしてよ!?」
「なんとなく」
「な、なんとなくで!?」
「うん」
「言うわけないでしょ!」
「しかたない。それじゃ、ボクも普通にアレスって呼んでよ、リーナ」
私は大きく目を見開いた。
傷だらけで少年のように笑うアレスを見る。
私がはじめて好きになった人を。
夕陽に染まる病室には、二人の笑い声が響いていた。




