第1話 去年の体育祭
晴天の中、全校生徒は校庭に集められた。
寒くもなく暑くもない気温の中で、私は辺りを見渡していた。
右を向けば同じ赤組の人、左を向けば青、緑、黄組の集団が視界に入る。
そのとき、私はとある先輩に惹き付けられた。横顔がイケメンだったから。この時の私は本当に単純だった。話してみたいとまで思ってたからだ。
学年ごとのクラス対抗リレーで、特別足が早いとかフォームがかっこいいとかはなかったけれど、私の目には先輩が爽やかにかっこよく走っている姿が映った。
私は同じ赤組の気になってる先輩のことをずっと考えていてその日は友達との会話も頭に入ってこなかった。ぼーっとしてるよ、なんて何人に言われたか。
体育祭の閉会式が終わり、解散になると、私は真っ先に先輩のところへ行った。名前も知らない他人なのに、話しかける勇気はあった。
170cmほどある痩せ型の後ろ姿に向かって、私は声をかけた。
「あ、あの!優勝おめでとうございます!」
先輩は驚いた顔をして、
「誰だかわからないけど、ありがとう。」
と言った。
たった数十秒間のことなのに、私はドキドキしていた。
このときは、まだ私はこの先輩に恋をしているということに気づいていなかった。
だが、この日以来先輩と話したことは1回もない。