魔闘祭に向けて
「クルト。聞いていいのかわからず、今まで聞かなかったが持病は良くなっているのか?」
昼休み。いつものメンバーでご飯を食べ終えた席でグルダが唐突に聞いてきた。みんなも不安そうに俺を見つめている。確かに週を開けていきなり3日も休んじゃったから心配させてしまったみたいだ。
「ああ。大丈夫だよ。薬を変えたから問題ないか確認の為の入院だったんだ。」
「そうか。しかし、薬を変える必要がある状態なのか?良くなっているならいいんだが…。」
そもそもが嘘を言っているから、食いつかれて焦った。
「良くなってないわけじゃないんだけど、ただ現状維持じゃあ叔母さんの所に来た意味がないからね。試している段階だと思うよ。」
「…そうか。」
「なんだー!!心配させないでよー。」
ニーナが椅子にもたれながら脱力して不満そうに言ってきた。
「そうよね。クーに伝言するぐらいしてもいいんじゃない?先生に聞いても大丈夫しか言わないし、クーに聞いても大丈夫しか言わないんだもの。」
クーはリーリに横目で睨まれて苦笑いしている。
「その通りだな。付き合いはまだ長いわけではないが、こうしてせっかく仲の良い友人になったのだから心配させない配慮ぐらいしてもらいたいもんだ。」
グルダの強目の口調に申し訳ない気持ちと嬉しさで少し戸惑って虚取ってしまった。
「えっ…あっ。その…ごめん。」
「そっそうです!!心配したんですよ。」
ニーニャにまで睨まれて、うれしさで目頭が熱くなった。前世では友人もそれなりにいたが、転生してから仲のいい同世代はアメリアとキリカだけだったから…。何よりクルト本人が嬉しくてしょうがないようだ。
「そうよね。ニーニャなんかお見舞い行こうか本気で悩んでたもの。止めるのが大変だったわ。」
え?
「っ…!!?リーリ!!そっそれは言わないで下さい!!」
ニーニャが顔を真っ赤にしてリーリに詰め寄った。
「ごめん。…心配かけて。…ありがとう。」
俺はみんなに頭を下げて謝り、みんなの顔を見回した。
バチン!!
最後にレイを見た瞬間、ずっと黙っていたレイが背中に力任せに平手打ちしてきた。
「いっ!!!」
「これで反省したよな?」
不自然な満面の笑顔で聞いてきた。レイも心配して怒っているのが伝わってくる。
「……ああ、悪かった。」
「なんだよ。クルト。涙目じゃねーか?そんなに強く叩いてないぞ?」
「いや、痛かったから。」
叩かれた勢いで我慢が…涙目を目を擦ってなんとか誤魔化した。…なのに。
「…クルトは今まで引き篭もりがちだったから友達できたの初めてなんでしょ?だから心配してくれたのが嬉しいんじゃない?」
クーがいきなり大きな声で言いだした。恥ずかしさで、余計なことを言ったクーの頭を思いっきし叩いて黙らせる。
「いってー。なんだよ。図星でしょ〜。顔赤いし。」
「…赤くないし。」
俺はそっぽを向いて誤魔化した。顔が熱いのは間違い無いが。
「確かに赤くなるクルトなんて初めてみたな。しかし、貴族なら交流はあったんだろ?」
「いや婚約者だったアメリアと使用人の同年代が1人くらいで、他とはなかった。そもそも家の敷地を出たこともほとんどなかったし。」
なんかみんなが向けている眼差しが…。
「え?じゃあ何して遊んでたの?」
「小さい頃は悪戯ばかりだったかな。魔法の練習し始めてからは練習と勉強と実験ばっかしてた。」
「そりゃあまた凄いな。強くもなるし頭もいいわけだ。」
俺が言った事にみんなして引いた目で俺を見てきて、レイの一言に共感しているようだった。
「ではせっかくできた縁だ。共に学園生活を楽しみたいものだな。」
「…そうだね。」
「そういえばやっとクラス代表が決まって一安心だよ。やっぱクルトとクーは選ばれたね。おめでとう。」
急にニーナが話を逸らしてくれてホッとした。これ以上は恥ずかしすぎる。
ニーナが振った話は今日の朝礼で発表されたクラス代表のメンバーのことだ。
「ありがとう。」
「サンキュー。」
クーは少し不貞腐れ気味で答えていた。
「なによ、クー。なんとなくは予想してたでしょ?」
「そりゃあ、そうかもだけどさー、相談無しにチーム組んじゃうし本当は一緒にチームになりたかったから寂しいんだよ。」
「くっ…それは私だって…寂しかったわよ。ただ今の私じゃ頼るだけになるから嫌だったの。私だってクーを支えたいんだから。」
ニーナが俯き赤くなりながら言うとクーまで驚いた顔で赤くなった。
「うん。…嬉しい。」
クーは目線を外したままニーナの頭を優しく撫でる。ニーナは撫でながら赤くなるクーを見て嬉しそうに見つめている。
イチャつくなら他でして欲しい…。
「はい、はい。お二人とも仲がよろしくてご馳走様。後は私達のいないとこでしてね。」
俺と同じ様に思っていたようで、リーリが嬉しそうに指摘した。
「え?うん。そっだね。ごめん。」
「…ごめんなさい。」
完全に2人の世界にいた2人が慌ててこちらに意識を戻した。
「別に良いわ。ただ結婚式にはちゃんと呼んでね。」
「「えっ!!?」」
2人がさらに真っ赤になってリーリを見て固まった。クーまで挙動不審になって照れる。クーのこんな姿は初めて見た気がする…。
「リーリ。からかうのはそれぐらいにしなよ。まあ、でもクー、俺達もちゃんと呼べよな。」
レイまで…。
「わっ私も是非お祝いしたいです!!」
ニーニャまで顔を赤くしてまで言わなくても…。まだ12歳なんだから先の話なのに。
「楽しみだがまだ先の話だからね。クーもちゃんと将来考えないとな。その為にも一緒に頑張ろうな。」
「みんなしてからかいすぎー!!…ただまあ、そっだね。クルトよろしくね。ニーナと…一緒に…なりたいから。」
クーの声がだんだん小さくなりながら言った。
「え!?………うぅー。」
ニーナがさらに赤くなり湯気が見えてきそうなくらい、真っ赤っかになり俯いた。リーリとニーニャが慌ててニーナに風を当て始める。クーも顔を赤くしながら言わなくてもいいのに。
「ならもう1人の相方とも上手くしないとな。実力ならアイツは文句なしだからね。」
「はぁー、大人だね〜。クルトは。サフと仲良くならないといけないなんて…。ただ、俺たちとは連携しやすいかも。」
俺の一言に気持ちを切り替えて答えてきた。ただまだ顔は赤いが。
「ああ。前衛としては一学年の中なら上位には入るだろうし、俺たちとは連携しやすいだろう。それにニーナと結婚すんなら親戚のサフとも仲がいい方がいいだろ?」
「ん?…そりゃあまあ…そっだね。……そうだな。」
なんかクーが赤くなるのが新鮮だな。せっかく引いていた顔がまた赤くなってる。
「クルト!!ちゃかすのはそれくらいにした方がいいんじゃない?」
ニーナに風を送っているリーリが睨みつけながら忠告された。言い出しっぺはリーリなのに。…にしてもリーリが睨むと迫力があるな。
「そうだね。ごめん。クーがニーナのことで赤くなるのが珍しいからついね。」
「え?僕赤い?」
やっぱ面白い…じゃない。やりすぎたかな。みなが暖かい目でクーを見た。
因みに今日の朝礼で俺、クー、そしてサフが代表に決めたと発表された。内心予測はしてたから驚きはしなかったが、正直面倒い。
「そっ!そういえば顔合わせの時、サフとだいぶ打ち解けてたけどなんかあったの?」
クーが話を逸らし始めた。
「え!?あれのどこが打ち解けた事になるんだ?」
俺の記憶ではサフが足手纏いになるなと言った事に対して言い返してから言い合いをしてただけだと思うが…。
「ん?なんかそう感じただけだけど。なんか息が合ってる感じ?」
「んー、まあ最近たまに朝稽古ん時に模擬戦してるから前よりは見る目は変わったかもしれないが…仲がいいわけじゃないよ。模擬戦すんのに丁度いいだけだからな。」
あの日を境に毎日ではないがちょくちょくサフは顔を出している。わぞわざ場所を変えてもすぐに見つけてきて来るから諦めて相手をしている。
「え!?クルトって朝稽古なんかしてんの?そんなに強いのに!!?」
ニーナが驚いた顔で前の身になって言ってきた。どうやら立ち直ったらしい。他のみんなまで驚き…というか引いてないか?
「え?そりゃあ、まだまだだからね。」
「…気づかなかった。」
「「「「「え!?」」」」」
みな一斉に俺からクーに目線が集中する。
「まあ、仕方ないよ。クーはいつもギリギリまで寝てるからね。いつも俺が起こしてんだから。」
「クーは相変わらず朝弱いんだね。デートの時だけはちゃんと来るのに。」
「え?そうなの?叔母さん家に居候してから朝早く起きたクーを見たことないんだけど。」
「まあ、クルトが来てから朝から2人でデートは行ってないからね。」
ちょっとふてくされ気味でニーナが俺を横目で見ながら言ってきた。
…え?俺のせい?
「でも、制服デートしたじゃん。」
「…うん。」
「はいはい。御馳走様。」
「なんかお前らを見ていると婚約者に会いたくなってきたな。私も婚約者と制服デートしてみたいぞ。まあ難しいだろうが。」
グルダが羨ましそうに言って落ち込んでいる。
ミーニャも羨ましそうにクーとニーナのやりとりを見つめてるし…。
「おい、お前ら今日の放課後3人で集まれだってよ。場所は訓練所だ。遅れんなよ。」
いきなり現れたサフが先生の伝言を伝えてさっさと行ってしまった。
急に現れてすぐ去ったサフにみな驚いて固まってしまった。
「珍しいこともあるんだね。まさか、サフが…。」
「確かに先生の頼まれごとなんかするタイプじゃないよね。」
「アイツが私達に話かけたのが意外なの。親戚の集まりにも来ないんだから。」
その後すぐに予鈴がなり皆で教室へと戻った。
《放課後》
終礼後、ヒューイ先生は俺以外の2人を訓練場で待つように言い、俺は先生と談話室へと移動した。
「悪いとは思ってますが、主席のクルトを外すのは無理でした。持病の件は言ってみましたが押し通されてしまって。すみません。」
入るとすぐに席に促され、茶を出しながら謝られた。
「そうですか。まあ、なんとか誤魔化しますよ。」
「いや、2人に合わすぐらいで頑張って下さい!!私のボーナスにも関わ裏ますからね。それにどうせ先輩達にはドヤされちゃいますし、ハァー。今から憂鬱です。」
落ち込む先生にただ愛想笑いでしか答えられなかった。確かに父様とカーティス公爵の2人にドヤされるのは嫌かも…。
「それよりも今回の魔闘祭には特別枠としてバルフ国の生徒も参加予定ですからくれぐれも用心するように。元婚約者も来るでしょうから心の準備をしておいて下さい。キツイなら予選落ちするしかないですね…。」
先生の落ち込む顔を見てなんて声をかけたらいいのか…。
「…ん?いや、私も立場がありますが、大事な教え子に無理をさせるのはどうかとは思ってます。悩ませる気はありませんでした。すみません。」
俺の困惑した顔に気づき謝ってきた。
「気遣ってもらって有り難いです。でも主席ですし、二つの国の架け橋を任せてられてる以上、下手な成績は残せませんのでやれる所までは行きますよ。どちらにせよチーム戦ですから。俺だけの力では勝てないでしょうし。」
「まあ、そうですよね。無理しない範囲で頼みますよ。」
「はい。わかりました。ところで、小等部門にもバルフ国の生徒が参加するんですか?」
「ええ。高等部門、中等部門、小等部門、それぞれ決勝トーナメントから2チーム入ります。まあ、間違いなく皇太子は参加するでしょうから予選突破したらくれぐれも取り乱ださないように!恨む気持ちはわかりますが、今は耐える時なんでしょ?」
「…はい。わかってます。もし対戦するときには叔母さんに相談はしますから大丈夫です。無理そうなら辞退も考えます。」
「……うん。仕方ないですね。了解です。それでかまいませんよ。アメリアちゃんにも皇太子にも会わないといけないでしょうから不安でしょうし。私達がカバーしますので無理をしない様にして下さい。何かあればすぐ相談するよいに!」
「はい。わかりました。」
「私からは以上です。私はまだ仕事が残ってますので、訓練所で3人で話し合いしながらチーム構成を決めておいて下さい。時間は2時間借りてますからいろいろ試してみて下さい。」
「そんなに時間とってもらってるんですか!?」
「もちろんです。特選クラスの代表なんですから。いろいろ優遇できますよ。」
「わかりました。無駄にならないように使わせてもらいます。」
「はい。お願いします。仕事に目処が立ったら顔出しますね。」
「はい。お願いします。では失礼します。」
俺はヒューイ先生を残して訓練所へと向かった。
アメリアに会えるかもしれない嬉しさが込み上げてきだが、無理やり押さえ込んだ。
それよりも確認しなくちゃならない。ずっと疑問に思っていた。アイツはアメリアに危害を加えてない。それどころか助けているとも聞いた。アイツの真意を確かめなくては。




