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悪役キャラ⁉︎なんの話?  作者: 黒黒
一章
4/42

4話クルトとアメリア

2人でレイチェルがいれてくれたお茶を飲みながら少し沈黙が流れた。今更ながら意識しはじめて緊張してしまった。


「…まさか、あんな間柄だったのに婚約するなんて、なんか不思議だね。」


「…そうですか?私はクルト様といる時にはなぜか素がでていたのでなんか…しっくりきちゃいました。」


「そうなんだ。それは嬉しいな。昔からレイチェルのことも気に入ってたよね。」


「はい。昔、レイチェルに注意をされたことがあった際、私の事を思って言ってくれたことに嬉しかったんです。その時からお姉さんの様に思ってましたから。」


「ああ、だから怒ってるんだね。改めてありがとう。レイチェルのこと気にかけてくれて。」


「私がしたくてした事ですので気になさらないで下さい。それにしても何故心変わりをされたんですか?」


「ああー…本人の前なんだけどな。んー、俺のことを真剣に考えてくれていたのがレイチェルだけだったって気づいたんだ。そもそも追い出した理由も、俺が全部悪かったから謝って戻ってきてもらったんだ。」


「謝ったんですか?クルト様が?」


「ちょっと今の傷つくなー。それは俺が悪かったから謝るさ。身分があるのはわかるけど身内ごとだ。外にばれなければいいからね。」


「本当に変わられましたね。私もそういうの良いと思います。」


アメリアが柔かに笑いかけてくれた。俺はドキッとして見惚れて見つめてギクシャクしてしまった。


「…クルト様。意識しすぎですよ。嬉しいですが、それでは私は困ってしまいます。」


気恥ずかしそうにアメリアが目線を逸らした。


「そっだよね。自分の気持ちに戸惑っちゃったみたいだ。アメリアが綺麗になって…。ああ、混乱してんな。本心だが、今じゃ言い訳みたいだな。」


「わかってるならいいですが、散歩でもして気分をかえますか?」


ああーマジでダメダメだなと思いながらもアメリアの助けに乗っかり庭園まで行くことにした。

部屋を出る際には母さんに「落ち着いて下さい」と耳打ちされる始末。


途中、花瓶が置いてある廊下を通った。


「ここだっけ?」


「はい。そうです。ここですね。数年前なのになんか懐かしく思いますね。」


「俺も怒られたなー。花瓶が割っちゃって危なかったのも確かだしね。」


「そうですね。そもそも廊下を走ってましたからね。」


「そっか!それ事態ダメだね。」


2人で母さんを見ると涙目になって、俺たちを見つめていた。


「レイチェルのおかげで他人の言う事を聞き入れるようになりました。そのおかげで成長してます。ありがとう。」


ザハルさんは無言で母さんに頭を下げていた。母さんは慌てながらも、


「とんでもございません。アメリア様。勿体ないお言葉、嬉しい限りでございます。ザハル殿もどうか頭をあげて下さいませ。」

 

「クルト様。結婚したらもちろん、レイチェルも一緒ですよね?」


「ああ、もちろん。何があっても残したりしないさ。何よりレイチェルは優秀だしね。だからこそ大変かもしれないけどなんとかするさ。」


「私からも是非ともお二人の側で使いさせて下さいませ。」


「ああ、頼むよ。」


「頼みます。レイチェル。もしもの時はお父様にお願いしますから。」


権力まで使う気だー。まあ、助かるなと思いながらもたくましいアメリアに見惚れて笑いかけてたら、赤くなってしまった。


何それ?可愛いんですけど……


「それでは庭まで行こうか。」


俺は赤くなったアメリアの手を取り歩き出した。


「え!?クルト様?」


アメリアは恥ずかしそうだが、握り返してくれて嬉しかった。


そうだった。緊張してる場合じゃない。好きになったんなら攻めないとな。と心で誓いながらアメリアと手を繋ぎ共に庭園まででた。


「ここでも追いかけっこしたりいろいろしたね。」


「そうですね。庭師の方には苦労かけたでしょうね。」


「いや、元々荒らされるの前提だったみたいだよ。前に庭師と話したら笑いながら言われたよ。」


「そうだったのですか?でも今咲いてある花達はとても綺麗でそんな風にはみえないですが?」


「ああ。今はもう観賞用に変えてもらったから。庭師と話した時にお願いしたからね。今日、間に合ってて良かったよ。」


「…私の為?だと?……嘘でも嬉しいです。」


「まあ、タイミング合ったからな。そう言うことにしてよ。」


「…はい。」


「実は俺も今日初めて見るんだ。見て回ろう!!」


「はい!」


俺はアメリアと手を繋ぎながら庭をまわった。前の世界に似ているところはあるが少し違う花たちの観賞をして、レイチェルやザハルさんに花の名を教えてもらいながら観ていく。そして庭全体を見える位置に行くと庭師たちが作り出した花のグラデーションに加え、周りの木々の自然の美しさに見入ってしまった。植物鑑賞が思っていた以上に楽しかった。


「一度、お茶にしよう。もう大丈夫だから。」


「はい。」


「レイチェル。俺の好きなあの場所に用意をお願い。」


「はい。すでに用意は始めております。着く頃にはできてるかと。」


「流石だね。ありがとう。」


レイチェルは頭を下げた。それから、レイチェルの案内でお気に入りの場所まで来た。


「庭でお茶をする時はいつも木下でするのが好きなんだ。それにここからだと花畑だけじゃなくて木々達もちょうど良く見えるからね。今日の庭は今までで一番綺麗になってるから見応えあるね。」


「はい。素晴らしい庭ですね。」


すでにお茶やお菓子が用意されていた。手を繋いでいたのを添える形に変えてから席まで行き、椅子を下げてあげ、ちゃんとエスコートしてから席に着く。


「ありがとう。気を使わせてしまって。アメリアはすごいね。綺麗だけでなく気遣いまで出来るなんて。」


「…っ!?…いいえ。まだまだです。…それにしても良い景色ですね。」


赤くなってうつむいてしまったが、すぐに庭を眺めながら微笑んでいた。ちょうど夕日の日差しがかかりとても綺麗だった。


「気に入ってもらえて良かったよ。」 


俺は景色を見ずにアメリアの横顔を眺めていた。そして2人でレイチェルが用意してくれた紅茶やお菓子を楽しんだ。


「うん。美味しい。」

 

「はい。美味しいです。甘さも丁度いい。レイチェル、覚えていてくれてたんですね。ありがとう。」


レイチェルが一礼して応える。どうやら、僕とアメリアのお砂糖の量も濃さも違うらしい。流石、母さん!!


「それにしても、あそこまで喧嘩ばかりしてたのに、なんか不思議だね?」  


「そうですね。今思い返せば、出会った頃はお互いにいろいろありましたものね。子供でしたし。」


「そうだね。って、まだ俺たちは子供だよ。」


「それもそうですね。学ぶことが増えて、いろんなことの見方が変わったので。」


「確かに、俺もそうだな。勉強で学んだこともそうだけど、一番はレイチェルに謝って、戻って来てくれてからかな。」


「先程も驚きましたが貴族がメイドに謝罪するなんてウチではありえません。謝りたくとも、謝ってしまったら私だけでなく、使用人まで、罰則をかけられてしまいます。因みに使用人が貴族に叱るのも同様です。」


「ウチでもそうだよ。まあ、本家の方だけだけど。こっちの別宅ではないけどね。」


「素敵ですね。」


「そ、そうかな?」


まあ、俺の方の人格もあるせいか、貴族のあり方に関しては未だに馴染めないんだよなー。アメリアも同じように感じてるんだ。良かった。マヂで惚れそう。


「でも、レイチェルには注意はされるよ。本人等のためにならないって。ずっと、俺専属な訳ないからって。」


「確かに、そうかもしれません。なんだかんだ言っても、まだ子供なのかもしれません。」


「そうだね。ただ、根本的には変わりたくないかな〜。」


「そうでありたいですね。」


「そういえば、僕はアメリアの家のこと、詳しく聞いたことなかったね。いつか、話してくれるかい?」


「話したい気持ちはあるんですが、正式な結婚が決まるまで待っていて下さいますか?」


「もちろん。話せるようになってからで大丈夫だよ。」

 

「ありがとうございます。本当に変わられましたね。とても優しくなりました。」


アメリアは少し下を向きながら話してきた。照れてるのかな?うん。可愛い。


「僕等も成長はしてるってことかな。」


「はい、そうですね。お互いに背負うものを自覚したと言った方がいいかもしれませんが‥‥。まだまだですけどね。」


「それは、確かにそうだね。自分の立場を考え始めたのも最近だしな。これからだよ。」


ふと、俺たちはまだ、9歳だよな。9歳で話すことか!?ついなんか、普通に会話になってたから違和感なかったけど、2人はどういう気持ちで聞いてるんだろう?2人の表情確認したい。


「私もそうです。最近です。なんか似てますね?」


「そうなのかな?アメリアのとこのがわからないから判断できないけど、似てるなら、お互いこれから大変だよね。」  


「そうなんですよね。」


「アメリアはさ、貴族に生まれて良かったと思う?」


「はい?…そう…ですね。贅沢に暮らせてますから生活に困る事がないので悪くは無いですが自由は無いかと思います。後は身分が何より優先されるなど息苦しさも感じます。」


俺は嬉しい気持ちを抑えきれずにアメリアを見つめて聞いていた。  


「ああ。確かに身分に関しては俺もそう思うようになったよ。レイチェルのおかげだけどね。」


前世云々は言えないからはぐらかした。


「クルト様もやはりそう思っているんですね。良かった〜。」


安心した顔で俺を見つめてくるアメリアに咄嗟に目を背けてしまった。


「アメリアも同じ気持ちで俺も嬉しいよ。やっぱ他の貴族の人は思わない話だよね?」


わかっている。顔がすごく熱い。アメリアを見直すとつられてか、アメリアもなんかぎこちない感じがした。


「はっ、はい。そうですね。みんながそうでは無いですが、誇り高い人は多いと思います。中には度を超えて酷い人も。」  


「アメリアとなら心配いらないね。」


「…はい。私も…クルト様となら……心配してません。」  


アメリアの仕草にただ惹かれていく自分に戸惑いながらも俺はアメリアを見つめた。


「うん。それならまだ気は早いけど、ちゃんと将来を考えてアメリアと一緒になれるように頑張んないとな。」


「…はい。私もクルト様と…一緒になりたいですから…頑張ります。」


「お互いに成長したいね。そういえば顔合わせが終わったら一緒に勉強見てもらえるんだよね?」


「はい!とても楽しみにしてます。」


「俺もアメリアと出来るのは嬉しいよ。それに魔法も早く習いたいし。」


「そうですよね!!私も早くしたくてお父様に無理言ってお願いしたんです。なんか慌てて用意してくれました。不思議でしたがすぐに学べたので、今とても楽しいんです!!!」


アメリアは目を輝かせながら言ってきた。魔法が好きなようだ。まあ、誰でも憧れるよなー。


「俺も早くやりたいよ。」


「そうですよね。因みにゼハルが先生なんですよ。」


「そうだったんですね。ゼハルさん、決まった際にはよろしくお願いします。」


ゼハルに目をやり言うとゼハルが一歩前に出てから、


「はい、かしこまりました。私ですと中級まででございますがお役に立てるようつとめさせていただきます。今は両家、準備で忙しいと思いますので顔合わせの日に授業の日程等を決めさせていただきますので、よろしくお願いします。」

 

と、お辞儀をしながら言ってくれた。


「はい。お願いします。」


「ゼハルは教えるのも上手ですし、わかりやすいのでお役に立てると思います。…すいません。少し席を外します。」


アメリアはレイチェルと共に屋敷の中へと入って行った。


「クルト様。ご質問させてもらってもよろしいでしょうか?」


「???なんですか???別に構いませんが。」


「では、アメリア様をどうご覧になられましたか?」


「そうですね。気遣いもできますし、心の優しい素敵な方だと思います。貴族としても僕の考えに近いとわかったのでとても嬉しいです。まあ、昔みたいな悪戯をするお茶目なところも魅力的ですね。まだ全部を見せてもらってないのは残念な気がしますが、もっとアメリアを見て知りたいと思います。」


「それは何よりでございます。あの方は家では苦労ばかりで、あんなに楽しげにされてるのを久々に拝見しました。今は家で笑わない方なので…。」


「…!!そうなんですか?想像がつきません。」


「はい。相手を気遣い笑う事があっても、あの様な笑顔はされないのです。私は今この場のアメリア様が本来の姿だと思いました。婚約となれば結婚に繋がっていきます。早計かもしれませんが、クルト様は夢や目指すものはございますか?」  


「…そうですね。僕は家を継ぐ事は出来ません。それでも家族やこの屋敷に働く人達を守り、役にたてる様になりたいと思っています。」


「…家族はわかりますが、使用人たちもですか?先程のアメリア様との会話でもでていましたが…。」  


「それは身分も大事ですが、名ばかりなのは嫌なんです。貴族だからこそ雇ってる人達を養い守る。その上で仕事をしてもらう。自分だけよければいいのが好きじゃない。アメリアとも確認した事です。アメリアも家族もザハルさん、レイチェル、他の使用人達も守れる力が欲しい。」


「私も?ですか?」


「もちろんです。ザハルさんは俺とアメリアが結婚した際には来てくれるんですよね?」


「はい。私ごとき老体の身でございますが使いさせていただきたいと思っております。」


「それは良かった。なら、最後までうちにいて下さい。アメリアはそう望んでいます。」


「??アメリア様がそのようなことを?」


「いいえ。言ってはないですが、アメリアですから。それ程にザハルさんを信頼し慕っていると思います。」


「使い物にならなくなるかもしれないのですよ?」 


「構いません。使えなくなったら切る事は間違い無くありません。他の使用人達も同様です。ただ長年支えてくれた方を優先しますけどね。まあ、やりたい事はいくつもあります。それを成し守る力をつける為に俺に教えて下さい。」 


ザハルさんは驚きの顔で俺を見つめていた。急に俺に対して跪き、首を垂れる。


「はい。かしこまりました。つきましては、クルト様にお誓いしたいことがございます。」 


「え!?なんですか?俺としてはずっと支えてもらえればいいのですが。」


「であれば、私、ゼハル・グリフォン。残りの生涯をかけクルト様、アメリア様にこの命尽きるまで使いさせていただきます。お手をお借りいただけますか?私の手に重ねて下さいませ。」


俺は右手をザハルさんの手に重ねた。重なった手の上に赤い光で魔法陣が浮かび上がった。浮かび上がった魔法陣はゆっくりと俺の手に馴染みながら消えた。


「これは忠誠の儀というものでございます。クルト様、アメリア様をどうかよろしくお願い致します。」


え!?今日出会った子供にすることじゃないよね?


「…いいのですか?俺なんかに?」


「いいえ。クルト様だからでございます。今日あなた様に出会えた事は私にとっても奇跡なのだと思います。」


いや、以前から会ってたと思うんだけど…?


「ゼハル!?」


アメリアが急ぎ足で近づいてきた。


「アメリア様。ただ今、クルト様に忠誠の儀をさせて頂き受け入れて頂きました。今後ともよろしくお願い致します。クルト様と一緒になった後もお使いさせてくださいませ。」


「…ゼハル。なんで…。」


「クルト様なら間違い無いと思いまして。何よりアメリア様が選ばれた方ですから。」


アメリアはゼハルに抱きつきゼハルが受け止める。


「…ありがとう。ゼハルはずっと一緒じゃないと困るから。」


「そう仰って頂きありがとうございます。離れたりいたしません。」


「うん。」


「ゼハルさん。ありがとうございます。」


「クルト様。今後のためにも主従の関係で私と接していただけますか?」


「…うん。わかった。ありがとう、ゼハル。」


ザハルが畏まり深々と頭を下げた。母さんが口に手を当てて涙目でザハルを見ていた。

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