魔闘祭?
あれから2ヶ月。学園内の生活にも慣れ、これといって問題に巻き込まれることなく過ぎていった。
母さんに頼んだ訓練は毎週水の日に基本授業がない時間帯に入れてもらうことができ、みんなで和気藹々とやっている。これで隣にアメリアとメリッサがいれば…。
頭を震わせ現実逃避を強制的にやめた…。
先ずは目の前の問題をどうにかしなくては…。あれから叔母さんとは話ができていない。すぐにどうこうできる問題ではない。わかってはいるが魔獣発生の時期が年末としかわかっていない以上、早めに手を打たなければ間に合わないかもしれない。
焦る気持ちを抑えながらいつものランニングを走り切り、いつもの場所で刀で素振りを始めた。
「おい。話がある。」
!!!
なるべく会わないようにしたのになんで声かけんだよ?ってか驚かすなよ。
「ん?…なんだサフか。気配をわざわざ消して急に声をかけないでくれるか?」
苛立つ気持ちがそのまま言葉に感情がのってしまい俺の口ぶりに怒気がはいってしまった。…サフの睨みが強くなる。
「本当にテメーはふざけた態度しかしねーな。昨日のアレはどういう事だ?」
「ん?特にサフになにかをした記憶はないと思うが?」
「あ!?昨日のあのふざけた模擬戦はどういう事か聞いてんだ!!!」
昨日の授業中に模擬戦をサフとするハメになり、程よくイナしながら負けた、あれか……。上手くいったと思ってたんだが気づかれた様だ。
「あー……お前の方が強かった…」「アレがお前の実力なわけねーだろ!?俺はお前と先生との模擬戦を見てたんだからな!それに俺が本気を出す前にテメーが負けるなんてあり得ねーんだよ。」
サフからの俺に対しての評価はずいぶん高い様だ。
そうか…あれはまだ全力ではなかったのか。サフを甘くみすぎたかな。
「だが助かっただろう?それに俺にとってもあの結果が丁度良かったんだよ。」
「ん?よくわかんねーが、ただ気に食わねー。お前の助けなど無くてもなんとかする。なんとかしなくちゃいけねーんだよ。テメーに情けなどかけられたくもない。なんの苦労も知らない才能も金も地位も持ってるお坊ちゃんには分からねーだろうがな。」
サフの苛立ちが増していく。
入学以降、サフはハイエルフの末裔のグループの中で下っ端のような扱いを何度も見ていた。ただイークは違ったが。族長の息子のイークの側に基本いるサフが何故そんな立ち位置なのか疑問ではあったが。
目立たない為にも丁度よかったから負けたのだが失敗だったようだ。
「俺にだっていろいろあるぞ。自国に戻れば俺は腫れ物扱いだしな。サフの立場はイマイチよくわかってないが苦労して、努力してるのはわかってるつもりだ。」
サフはすぐ近くにあった木から自身の武器の巨大斧と俺の武器の形の模擬剣を作り出した。刀の形状の模擬剣を投げつけられ咄嗟に取ってしまった。
「ったく。何様のつもりだ。とりあえず今はいい。それよりも勝負しろ。」
一言いうとサフは詠唱しながら武器を地面に突き立てる。俺は咄嗟に後ろに飛び、俺が立っていた場所に突如できた落とし穴を回避する。
「まだやるっていってないんだげどな。」
俺はため息を吐きながらサフに目線を向け直したが、すでにそこにはサフの姿がない。俺は自分の武器をブレスレットにしまい、受け取った武器を構える。耳を澄まし周りを見渡す。
俺は地面に手を当てて地面の表層に強化魔法をかけた。
ガンッ!!!…ガン!ガン!…ガゴッ!!ガン!ガガガガガガ!!
地面が揺れ始めてからすぐにサフが地面から飛び出して苛立ちをあらわにしながら睨んでくる。サフは尽かさず詠唱と共に自身の武器を俺に向かって投げつけた。まさか武器を投げるとは思わず…咄嗟に刀でいなそうとしたが空振りに終わる。
「ちっ!!」
よく見ると武器の持ち手に枝が紐の様に巻きついていて、俺に届く直前で引きながら突進してきていた。
俺に舌打ちしながらすぐに構え直し、サフに斧が戻る前に先手をうつ。
サフの眼光が開かれ口角が上がりニヤけた。サフは引き寄せた斧で俺の一撃を受け止める。
「ずいぶんと面白いことをするね。」
「やっぱ戦い慣れてんな。お前。」
直ぐに距離を取り構え直す。やばい…なんだか面白くなってきた。最近は力を自重してばかりで嫌気がさしていたからな。サフのその顔もわかる気がする。
俺は両膝を曲げて跳躍で木の天辺ぐらいまで飛び上がり空中からサフに突っ込む。
サフは斧を土魔法で2倍の大きさに変装させて俺の突っ込むタイミングに合わせて振りかぶる
俺の口角があがり勝利を確信する。
俺は左手を突き出し、爆破魔法で一瞬自分の体を浮かせて突っ込む速度をかえた。
サフの斬撃は宙を舞う。俺はそのままサフの頭に失神させる程度に打ち込んだ。
ドッ!
ドッ?
俺はサフの横を通り過ぎて地面に着地したが今の音で塞がれたと思い、すぐサフに向かい更に突進をした。
サフはこちらに振り向きながら2倍になった斧を地面にぶつける。斧に着いていた土が斧から剥がれた瞬間に矢の形に変わりながら俺の方に向かって飛んでくる。
おい!サフまでチートかよ?
俺は利き足でブレーキをかけながら飛んでくる矢を弾いていく。子供でここまで戦えるもんか?サフを見ると頭にはいつのまにか土でできた仮面で頭が守られていた。
おいおい。そんなに魔法を連携、連発して大丈夫なのか?
土でできた仮面が剥がれていく。
俺と同時にサフも突っ込んで距離を縮める。サフの斧が上から振り下ろされる。リーチの長い斧の方がやはり有利だ。俺は刀を地面につけてそこから木樹を出して、サフの攻撃をかわしつつ木樹を土台にして上から斬りかかる。…がサフはその木樹を切り倒す。
あっぶね!!
ギリギリ飛び上がり斬りかかった。塞がれたが懐に入れれば。
そこから距離を離されない様、攻めに徹する。一撃、一撃にこれまでの訓練の成果を出しきっていく。本気でぶつかれる嬉しさに自然と笑みが溢れる。
「くっ!!」
サフは俺の斬撃をいなし、かわしながら何とか持ち堪える。斧を持ちながら、このガタイと大きさでよくそんなに機敏に動けるよな。
「ちっ!!」
一瞬の隙をつかれ斧でなぎ払われた。
「アイツらよりサフの方が強いんじゃないか?」
そもそも、クー以外でここまで戦えそうな奴がいないと思うが。
「フン。アイツらみたいに遊びまわってないから当然だ。だが俺は一番下っ端だ。」
「だろうな。そんな気はしてたが。」
俺は距離を取り荒くなった息を整える。サフも肩を上下しながらも息を整える。
「これ、またの機会にしないか?」
「あぁ!?……そうか時間か。仕方ない。今度は手を抜かずにやれよ。」
「ああ。授業以外なら喜んで。そういえば、サフ、一つ聞いていいか?」
「あ!?なんだ?」
いちいち不機嫌になんなくてもいいと思うんだが…。
「噂だが、学園ではハイエルフの優位があって差別があると聞いたんだがアイツの件ぐらいでほとんど見たことない。なんでだ?」
「そりゃあそうだろう。今年は族長の息子のイークがいるんだからな。」
「ん?」
「ちっ。だから今までは高飛車ぶってた勘違いやろう達がいたがイークの前ではしねぇーてことだ。そもそも今年でやっと学園長が戻って来たのも大きいが族長自身もそんな事は許されていない。誇りを持ち周りを導けと仰っている。あいつらは族長の面汚しをしている。悪気がないのがたちが悪い。」
「…!!そうなのか。それは勘違いをしていた。申し訳ない。それよりもサフも敬語使えるんだな。」
それとお前の口の悪さも直せよと口にせずにツッコミをいれた。
「おい!!マヂで舐め腐ってんな。ちっ!まあいい。それよりもイークだって大変なんだからな。アイツは次の族長になる為に努力してんだ。だが周りがあんなんだからなるべく波が立たない様にしてる。叱るのは簡単だが同族達に見放されれば次期族長にはなれねー。ハイエルフの血筋なら誰でも族長になれるからな。」
「そりゃあ大変だな。わかった。俺も気にする様にするよ。」
「ちっ!時間がやべーな。次は叩きのめすからな。」
サフは持ってた模擬剣を燃やして炭にしてから立ち去って行った。
俺も模擬剣を炭にしてから部屋に戻った。
『朝礼』
「おはよう。先日から生徒同士での実技訓練が始まったが、9月ぐらいにはチーム対抗の魔闘祭があるから覚えておく様に。1チーム3人でフィールド内でのサバイバル方式だ。ルールは無し。なんでもありだ。フィールド内では致命傷を受ければ強制的にフィールドから追い出され怪我は全てなかった事にできる。フィールド内であれば死ぬことはないから安心してくれ。チームはクラス代表の3人以外は好きに組んでいい。代表は私が選ぶから申し訳ないがよろしく頼む。決め次第すぐ知らせるからな。」
朝礼で魔闘祭の説明があった。学園らしいイベントにちょっとテンションがあがる。
「クー。よろしく。」
俺はつかさず声をかけた。
「え?ああ…そうだね。うん。よろしくね。」
!?
「どうかしたのか?」
「ん?いや、魔闘祭は毎年恒例だから入学前からニーナと組む約束してたんだけど、今朝断れちゃって。ちょっと落ち込み中……。」
「ん?…そうか、ミーニャとリーリで組むのかな?」
「いや、ミーニャは獣人の知り合いと組むみたいだよー。リーリとなぜかルイなんだよ……。」
「え?俺、今日魔闘祭のこと知ったのにもうみんな組み始めてんの?」
「そりゃあ、そうだよ。この学園のイベントの中じゃ一番有名だもん。生徒によっては成績に直結してくるからねー。みんなマジなんだよ。まあ、代表に選ばれれば関係ないんだけどねー。」
「どういうことだ?」
「えっと、確か選ばれたら勝敗関係なく高い評価が約束されるみたいだよ。」
「それはいいな。」
「まあ、選ばれなければ相性の良い人と組んで自分の良さが出せないといけないから大変なんだよ。多分、俺が選ばれると思ってんだろうなー。」
さらに意地けた顔つきで落ち込むクー。
「そうかもな。抜けられたら探し直しだもんな。」
「そうだろうねー。クルトは多分、嫌、間違い無く選ばれると思うよー。あー俺、選ばれなかったらボッチじゃん。」
いや、目立っちゃいけないからそれはないだろ。
教室だから声に出せずに心の中でツッコミをいれた。
…先生も知ってるのだから無いと思いたい。
それにしても魔闘祭の概要が全くわからない…。単に実習試験じょないのか?
「結局の所、魔闘祭はただの試験じゃないんだろ?」
「ああ…そうか。クルトはこの学園に入りたくて入ったわけじゃないから知らないのも当然だね。箱入り息子だったしね。」
「その言い方はやめろ。」
俺はクーを睨みつけたが、机の上に上半身乗せた体制のクーは気づいていない。
確かに外国の書籍はうちの書庫にはあまり無かった。あっても国の成り立ちや歴史、特産品や産業に関してのものばかりだった気がする。だからあまり知らない。
「ごめん、ごめん。」
本当に謝る気があるのか怪しいが気にしないことにした。
「まだ先の話だし、気長に探すしかないな。」
「そうかもね。まあ、もし探すなら前衛だね。僕は後衛だし。クルトは中衛で臨機応変に動くのが定石だろうね。」
「だろうな。まあ、まずは先生に早く決めてもらいたいな。だから結局、魔闘祭ってただの試験じゃないんだろ?概要を知りたいんだが。」
ここまでの話で魔闘祭の概要が全くわからなかった。クーが話す前に授業が始まり昼休みに話すことになってしまった。
『昼休み』
いつものメンバーでご飯を食べおわった頃、クーが朝のやり取りを簡単にみんなに説明してくれた。もちろんクーが拗ねた事は隠して。
「そうなんですか!?…私なんか入るの苦労したのに。」
ミーニャが耳を垂れ下がらせて落ち込んだ。
「クルトは良いよな。望んでなくてもこの学園に入れるんだから。」
ルイにも反感を持たれてしまった様だ。いや、全員だな。みんななんか信じられないって顔つきで俺を見ていた。
「いや、俺は元々持病を良くする為にこの国に来たんだよ。」
「そう、そう。それに母さんが言ってたけど、クルトは今年入学生徒の首席だったみたいだよ。」
「「「「え!?」」」」
俺はも含めみんなの時間がしばらく止まった。
「そりゃあスゲーな。」
「まあ、だから入学式の時も入学者代表の挨拶がクルトだったんだって。」
おい!それ俺も知らなかったぞ。
「じゃあ、事前に知らせがなくて急に俺が呼ばれたのは学園側からしても予想外だったってことか?」
「そうなんじゃない。そこまでは聞いてないからわからないけど。」
「一先ず、魔闘祭について教えてくれないか?」
「なら私が説明するね。魔闘祭は試験で間違いはないんだけど。まず、この国にはバトルフィールドっていう過去の遺跡を基にした建物があるんだけどね。この国の最新技術を屈して、その遺跡を直したの。魔力で動く建物なんだけど、魔力を森や砂漠、平原に変換できちゃう優れものなの。歴史書によると昔、召喚された勇者が作ったんだって。」
ニーナが説明をしてくれた。
昔の勇者……バトルフィールドって。名前からして、恐らく地球人には間違い無いだろうな。
「それは凄いね。」
「そうなの!因みにバトルフィールドには魔力変換と物量変換の合成装置が組み込まれてるんだって。その装置を1から作るのは今の技術じゃ作れないらしいよ。その装置が作り出す空間の中なら死なないし、物もすぐに治せるの。そこを使って3隊3で戦うんだよ。」
機械的なものがない世界で随分と突発的だと感じながら考えを巡らした。
「凄いのはよく分かったが便利すぎないか?」
「そうだよね〜。でも魔闘祭とかの大会のために何百人っていう人達が毎日欠かさずに魔石を作り続けてるんだよ。だから動かすのにも大変なんだよね。因みに、うちの母さんが働いてるんだよ。」
「なるほどね。詳しいわけだね。勇者が作った物って他にもあんの?」
「我が国にも同じ建物があるぞ。」
グルダが横から教えてくれた。
「確かにそうだね。後、ミーニャの国にもあったよね。」
「うん。」
「因みにその3つのバトルフィールドをメンテナンスしてるのはエルフ国の技術者なんだよ!自動ドアだって作れるんだから!!」
「それは確かに驚いたよ。」
この国が建設特化にしたのはバトルフィールドがあったからなんだろう。実然と学科も設立したと。
「後はバトルフィールド以外だと、シーシャルにユウランセンがあるし、テーマパークがあるはずだよ。一度は行ってみたいんだよねー。」
「私も行ってみたいのよね。遊ぶ為の施設なんて聞いたことないもの!!」
ニーナに続きリーリもテンションを上げて話していた。ミーニャまで尻尾を勢いよく振らせながら何度も頷いている。
テーマパークまであんのか。
「じゃあ、観覧車やメリーゴーランドがあったりすんのかな。」
「なんだー!!クルトも知ってるんじゃない。」
おっ!!あんのかい!?やっば!!
「え?あっいや。確か似た様な言葉を書物で読んだ気がしただけだよ。まさか勇者が作ったもんだとは…覚えてなかったんだよ。読んだはずなんだけどね。」
「ふーん。そっか。まあ、勇者が作った物は各国で残ってる物はあるはずだよ。」
なるほど間違いなく日本人だな。ユウランセンなんかまんま日本語だしな。この世界は知らないだけで思ってるよりも発展してるのかもしれない。ただ格差が半端ない気が…。




