腕試し②
席を見渡しながら、あいつらの視界に入らない席にいつものメンバーで席に座り昼食をとる。
「それにしてもあの時のクルトはけっ……。」
ルイに睨みつけて黙らせる。
「え?何?クルトがどうかしたの?」
リーリが強張ったルイを見て不思議そうに聞いてくる。
「いや……なんでもない。」
「なんでもないことはないでしょ?それにルイにクルトがこんな怖い顔してるなんて珍しいし。」
「確かに。クーも一緒にいたんでしょ。なんかあったの?」
ニーナまで興味を示し始めてクーに聞いていた。クーは愛想笑いで誤魔化そうとしてるが……俺はため息を吐きながら再度ルイに睨みつけた後に自ら話し始めた。
「なるほどね。確かに意外かも。でもそんなに気にしなくてもいいんじゃない?誰にだって不向きはあるんだし。」
「ああ。そう思うが、そこの3人の反応にイラつくのはしかたないだろう?」
俺に言われリーリがルイ、クー、ニーナに目線を運ぶ。3人とも俺が自ら話し始めてから肩を震わせて笑いを堪えている。
「ニーナまで…。」
「いや、ごめんなさい。余りにも意外すぎて。まさか1本も当てられないなんて。」
「いや…1本も…真っ直ぐに…飛ばなかったんだよ。…そもそも…飛んだのだって3本だけだし…」
クーが笑いを堪えながら訂正してきた。俺はクーに鋭い眼差しで見やる。
ヒッ
クーは俺の目線にたじろいだ。
「わっ…私も飛ばせたのはそのくらいでした。」
急にミーニャが勢いよく立ち上がった。
「え?獣人族なのに?」
クーが驚いた顔でミーニャを見ている。確かに勝手な想像だが獣人族なら狩りに使いそうな武器は大体ある程度使えそうに思う。
「…はい。私は昔から習ってたんですがダメでした。誰にでも出来ないことはあります。」
「ありがとう。」
自然とお礼を口にしていた。
「でもミーニャが出来ないのは可愛くみえるからいいんじゃね?クルトはネタにしかならん。」
バコンッとルイの頭にずっと黙っていたグルダが平手打ちで頭を叩いた。
「この話はこれでおしまいで良いだろう。くだらない話よりクルトの母君にどうやって訓練をお願いするか考えないか?この人数だ、場所も時間もある程度考えなくては断られるかもしれないだろ?もしくは一度きりでおひらきだ。できたら週に1度はお願いしたいんだがな。」
「私もできたら何度かお願いしたいです。」
グルダの提案にミーニャが同意した。そんな2人に感謝しながら2人を見た。グルダの言う通り場所と時間は問題だ。
「みんな寮なんだから放課後でも大丈夫だけど闇の日は帰る人ばかりだから無理なのよね。それを踏まえて先ずは場所から探さない?クルトはお母さんのスケジュール聞いといて。」
グルダの言葉にリーリか提案して、皆がそれに同意した。
「そうすると手っ取り早いのは選択科目の時間にできるか確認してみるのと、選択科目の時間と放課後の時間帯で訓練所が使える曜日があるか確認してみるのがいいな。」
グルダが話をまとめ上げてくれた。そして皆がそれぞれ役割を分担してから解散した。
昼休みを開けて今度は外の訓練場に集まると直ぐに魔法の実践の説明を受け、それぞれできる魔法を告げたのちにグループ分けをされ、各グループに先生がついた。クーとミーニャ、リーリとは同じグループだったが他は別れてしまった。
「このグループは魔法が中級以上を使える子達を集めた。では、できる魔法を告げてから実施して
くれ。的も用意したから必要なら言ってくれ。」
俺達は一列に並び一人一人実施していく。クーとミーニャは自前の装備を用意していた。クーの魔法を見るのは初めてだから楽しみだ。
先生は実施する生徒とできることを確認しながら、その中の2、3個を実施させて実力を見ていた。
「それでは次、リーリ。頼む。」
「はい。私は闇属性を幾つかと、火属性が一つできます。」
「では先ずは火属性の魔法を的にやってくれ。」
「はい。ファイア。」
野球ボールぐらいの火の球が勢いよく的へとぶつかる。球体の大きさは小さいがなかなかの速度だ。
「すごいな。速さは申し分なしだ。」
その後、プレイスカットや相手の持ち物を盗むステイルなどをしてリーリの番が終わった。
「じゃあ次はミーニャ頼む。」
「はっはい!お願いします。」
ミーニャは武器を両腕に装着してやる様だ。
「わっ私は獣強化と武器に風魔法付与ができます。後は……。」
「は!?ちょっと待て!!獣強化に属性付与ができるもんなのか?」
「あっ!!私の種族だけの特性です。私の種族では大体皆さん使えます。ただ魔法を使うのは苦手な人が多いです。付与は得意なんですけど…私はファイアが使えます。ただ威力は無いんです。」
「………そうか。ひとまずやってみてくれ。」
「はい。行きます!!」
ミーニャは前屈みに構えて詠唱を唱えた。武器が緑色に輝き始めた。ミーニャはクローを振りかぶりながら空を切り裂いた。風の刃が飛び出し的へと当たる。
ミーニャが構え直すと今度は獣強化と共に剣士が伸び、瞳の形が猫科独特の目に変わる。そして耳と尻尾がピンと張り、髪の毛が風もないのに不規則に靡きはじめた。
見るからに身体強化とは違うのだと感心した。
これが獣人族の特性…。
更に変化は続き、ミーニャの髪の毛が鮮やかな黄緑色に変わった。そして先程と同じ動きで風の刃を的へと放つ。刃は先程とは桁違いの速さで的に深い傷を負わせた。威力も桁違いだ。
ミーニャはその状態でファイアと詠唱し、右手から小さな火の玉を的へと放つ。
その炎に俺は目を見開いて凝視した。火のたまが回転している。それに緑色の膜で覆われている。
残念ながら当たる前に火が消えてしまった。
あれは何だ?見るからに自分の知っている魔法とは違ったものだ。
獣強化の属性付与?
「すっ凄いな。あれがそうなのか。風属性付与が詠唱無しでできるわけだな。」
「はい。詠唱無しで風魔法なら倍増、それ以外なら風魔法追加で力を加えられます。ファイアはファイア事態の威力が弱すぎて消えちゃいましたけど…。」
「いやいや、1年生にしては上出来だ。」
「ありがとうございます。」
ミーニャが尻尾を横に振りながら照れていた。…。
「では次にクー頼む。」
「はい。僕は武器への属性付与しかできません。一応、基本属性なら全属性出来ますがどうします?」
「は?」
先生が間の抜けた声を上げた。俺や近くにいたみんなも同じタイミングで声が出てしまった。確か魔法玉も上手くはできないんだよな?魔法を使うための段階無視しすぎじゃあねぇか?どういう理論だよ!!?なのに若干12歳で全属性付与が可能?どんだけハイスペックなんだよ!!?
溢れ続けるツッコミを声に出さずにクーを見つめた。
「…なら全部頼む。」
「ハーイ。」
クーは弓を引きながら詠唱し始めた。詠唱が終え射る。矢じりから炎がでて矢にまとわりついていき的に当たる。
クーは続けて水をまとった矢を放ち、次に何故か2本同時に矢を上に向けて射る。
矢は空中で軌道を変えながら2本とも急降下してすごい速さで的に当たる。恐らく今のは風属性の付与だろう。
クーは次の詠唱を始めると矢が光を帯び始めた。ただその矢は普通に的に当たるだけで特に他に変化は無かった。聖属性なんだと思う。
さらに詠唱を始めて次を射る。今度は見た目は変わらないが今までの矢と違い的を貫通して途中で止まった。
「チェッ、貫通しきれなかったよー。」
ずいぶんと凄いことを繰り広げているが本人は納得していないようだ。周りはただ呆然と見ている。
そして今までより長い詠唱を唱えてから最後の矢を射った……!!?矢がない。射るまではあったはずの矢がない。数秒たってからドスッと音と共に的に当たっている矢が出現した。
俺の目でも見れなかった……。
「………さすが英雄のお子さんだ。その歳でちゃんと魔法を使いこなしている。幼いのに相当な訓練をして来たんだな。今のは隠蔽の魔法だね?」
「うん。でもそれだけじゃないよ。この間、クルトに教わったのもやってみたんだ!見事に成功!!後ろにも一本刺せた!!」
「え?」
皆が驚嘆しながら的の裏に行くと…確かに的の後ろに1本不自然な刺さり方をした矢が刺さっている。まるで地面から射った様な…。
「影から出したんだよ。」
????
いつもう1本射ったんだ?それに実際にはクーは魔法行使では使えなかったのに…魔法付与では出来た…意味がわからない。
これには先生も唖然として言葉が出なかった。
「……クーありがとう。では次、クルト。」
先生はなんとか言葉をだして俺を呼んだ。…イヤ、この後に何やれってんだ?
「……はい。」
「まあやりにくいとは思うが頼む。」
「はい。プラインが得意なんでそれから行きます。」
「え?」
先生の掠れた声が聞こえた気がしだが…。
俺はあらかじめ用意していた大樹の種をばら撒いてから片手を地につけて唱える。
唱えるのと同時にばら撒いた種が一気に成長して全ての気が絡みながら太い大樹へと変貌し的を叩き潰す。
え?
壊れちゃった。
的は無残にペシャンコになってしまった。
「さすがクルトだねー。僕よりスゲー。」
いや、それはないだろ?
心でツッコミを入れながら壊れた的を眺めた。まさか壊れるとは思ってなかった。
「今年の一年はおかしい…。」
先生は唖然と壊れた的を見ている。しばらくして先生は地面に手を触れて魔力を流す。的がみるみる直って元どおりになった。
「既に上級魔法が使えるとは思ってなかった。まさかとは思うが他にも出来るのか?」
「え?上級魔法?プラインって上級魔法なんですか?」
「なんだ、そんなことも知らないのにできるのか?…まったく。」
「はい。父様はそこまでは言ってなかったんで。」
「それで他はあるのか?ここまできたら何見ても、もう驚かれないからやってみな。」
んー、なんかやるのが怖くなってきたぞ。それに今更ながら詠唱がわからない。全部詠唱しないで出来たからプラインしか知らない。
「ファイア。」
俺は手をかざして渋々唱えた。あらかた調整はしたが大きな火の塊が的に当たり炎上した…。
「…だろうな。他もあるんだろうが的直すの大変だから次回な。」
先生はまた地面に手をつき窓の修正をし始めていた。
「ありがとうございました。」
周りからの視線が痛い。そもそもクーが規格外すぎるだろ。
そんなことを考えながら皆で教室に戻った。
その後、終えた人から個人面談をして1日が終わった。




