魔法検定
週末を終えて俺、母さん、キリ、クー、ニーナの5人で馬車で学園へと向かっていた。
「久しぶりね。ニーナ。クーとはいろいろ大変だろうけど挫けないでね。愚痴なら聞くから。私も小さい頃からの付き合いなんだし遠慮しなくていいからね。」
「え!?……いやクーはいつも優しいし大丈夫だよ。」
どれだけ会ってなかったかは知らないがキリの急な申し出にニーナは一瞬固まってしまったがなんとか笑って答えていた。
「ねーちゃん?急に何言ってんの?」
思いもかけない2人のやり取りにクーは目が飛び出るぐらいに目を開かせキリをみていた。
「私だってニーナの幼馴染みなんだから心配なの!!そりゃあ2人が付き合うって聞いて嬉しかったけど、あんたって無駄に女子力高いから心配なの!家じゃあ私だって肩身狭い思いしてんだからね!!」
「え!?キリもなの?」
ニーナの反応にキリ以外3人唖然としてニーナに目線を向けた。
「え!?ニーナ?」
ニーナの反応にさらに困惑するクー。
「そりゃあそうよ!こいつ見た目に反して料理上手いし、洗濯だって手際は良いし、掃除と片付けもそれなりだからね。私が試験で切羽詰まってる時なんか私の当番までしてくれるし。助かるけど恩返しするのも大変なのよ!まあ、私は別の日にクーの分もやれば良いだけだけど。その時だってあんた、だいたい手伝うでしょ!?」
「うん。そりゃあ俺が当番なんだし。」
「家でもそうなんだ…。私もなにかしてあげても倍以上私の為にいろいろしてくれて…私だってもっとしてあげたいのに。だからいつも負けた気分になっちゃって……。」
ニーナがどんどん凹んでいった。
「やっぱり。ニーナは普段明るいのに肝心な所で弱気になるから抱え込んでないか心配だったのよ。ほら!見なさい!!」
「え!?いやニーナも俺にいろいろしてくれるよ!!だから嬉しくなってだから…。」
「クー。ニーナが世話好きなのは知ってるでしょ!?つくされるだけじゃなくてつくしたい子なの!!そこんとこ上手くやりなさい!!私の幼馴染み泣かしたらタダじゃおかないからね!!!」
「……はい。」
凹んだクーの肩に手を置いた俺には同情しかできずに黙っていた。見た目もだが普段は大人し目なキリが叔母さんと重なる。やはり親子だ。
学園につきニーナはクーの手を握り嬉しそうに歩いている。理解者ができたからなのかどこか笑顔に余裕がある様な気がする。反対にクーはさっきの指摘で凹んだままだが…。
母さん、キリと別れて教室に着くとリーリが泣いていて、ミーニャが寄り添っていた。周りは気まずそうにしていたが自分の席に座ったままだ。2人の姿にニーナが慌てて2人の元へと駆け寄った。俺たちは普段のリーリから想像できない泣きじゃくる姿に困惑しながらもニーナに続いた。
「どうしたの!?リーリ?」
「ニーナ……。」
涙目でニーナを見るリーリは困惑した顔でみていたがまた顔を両手で隠して泣き始めてしまった。直ぐにリーリの隣に寄り添うニーナ。俺はミーニャに目配せをしてクーと共に2人から離れた場所で話を聞いた。
「実はですね、私が学園についた時にリーリが何人かの女子生徒をつれた偉そうな男子生徒に絡まれていたんです。みんな見ぬフリをしてたから私が側に行ったんですけど、人種差別の悪口言って罵っていました。それが私もいろいろ言われてしまい、それにリーリが怒ってさらに言い合いになって収集がつかなくなって…。先生が来てくれたからその場はなんとかなったんですが。私も噂は聞いてたので覚悟はしてたんですけど酷かったです。」
ブチブチっと頭の血管が切れた気がした。
「ん!?クルト!?落ち着け!!ミーニャが怖がってるから…。」
クーの一言で我に帰った俺は慌ててミーニャに謝った。
少ししてから先生が入ってきて魔検を受ける生徒は直ぐに出る準備を促され、他の生徒は授業との説明があった。先生は何度かリーリに目を配っていたが、既に涙を吹きリーリ泣き止んでいた。
「はい、ではみんな。それぞれ準備してくださいね。それと、今日広間でイザコザがあったと知らせが来ました。内状を知ってる方は個別で先生の所に来て下さい。」
その一言の後、試験組は先生と共に教室を出た。廊下に出ると、先頭にいる先生が俺を前にと呼ばれて俺は先生の隣に行った。
「あまり感情を昂るのは良くないから気をつけてください。」
先生は俺の頭に手を置いた。魔力がそこから流れてくる。不思議に思ったが口パクで言ってきた為、前を向いたまま歩き続ける。
空き教室に入ると番号を言われてそれぞれ席につく。どうやら最初は筆記試験のようだ。先生は担当官が来ると教室を後にした。担当官から説明を受けて、直ぐに試験が開始された。基礎知識程度で模擬試験とほぼ同レベルの問題に、簡単に終わらせてしまった。
待ち時間。どうしてもサフとイークを意識してしまう。この国には貴族はいない。偉いのは族長の血縁者ぐらいだ。確かハイエルフの血筋とか言ってたな。おそらく、リーリに絡んだ奴もそうなのだろう。アイツらなら誰がしたかわかるはずだ。入学式の学園長の言葉を聞き安心していたからか不満が込み上げてくる。敵は別にいるのに何故仲間内で妬み合わなければならない。どっちが偉いかなんて関係ないだろうに。貴族社会ではないからこういった差別がないと思っていたから幻滅したのも今の怒りが抑えられない理由だろう。どこの国も形は違えど同じなのかもしれない。
考え事をしている内に時間になり、筆記試験が終わり外の訓練場まで案内された。外には既に別のクラスの生徒も来ていた。俺たちのクラス以外にも居たんだと驚いたが、全員がエルフだったことにも驚いた。その生徒達と共に横並びになる。ただそこで気づいてしまった。リーリが向こうの男子生徒とを見た瞬間に怯えた顔になったのを…。俺は奴の顔をじっと睨みつけて顔を確認する。
「ではこれから実施試験を行います。1人の生徒に対して2人の試験官がつきます。今日は12人いますので、3人1組で席順で別けます。一組だけ風クラスの最後の子と土クラスの最初の2人で1組くんでお願いします。では右から風クラスから並んでください。」
俺たちは言われた通りに並び先頭から試験が開始された。ウチのクラスの最後はイーク。土クラスの先頭はアイツだった。仲良く話をしている2人にやはりと思った。
2人にに気を配っていて自分の番に気が付かずに呼ばれて慌てて前に出た。
「得意な属性はなんですか?」
「雷です。」
「え!?」
「え!?」
女性の試験官の困惑した顔に俺も戸惑った。
「あっ!!間違えました。自然です。」
慌てて行ったもんだから間違ってしまった。
「そっ、そうですか。もう使えるのですね。優秀なんですね。では好きな属性で構いません。魔法玉を出してください。」
「はい。」
試験が俺の後ろに周り背中に手を添える。俺は属性なしの魔法玉を一瞬で出した。俺の前で見ているもう1人の試験官が俺の魔法玉を確認していた。
「では属性も付与して訓練でした事のあることをやってみて下さい。」
「え?はい、わかりました。」
俺は風の属性を付与してから魔力玉に弾力をつけて下に投げつけた。魔力玉は勢いよく回転しながら弾み、2回弾んだ後、前にいた試験官の手に収まった。
「おっ!お見事です。問題ありません。」
後ろの女性試験官は驚嘆した顔で俺を見つめ、前の試験官も魔力玉の弾力を観察しながら俺の元へと近づいてきた。
「坊主!やるな!!流石、ルイーヌさんとこの甥っ子だ。規格外だよな…本当!!」
「え!?ルイーヌ様の甥っ子なのですか!?」
女性試験官の目がキラキラした目で俺をみてくる。…様?叔母さんを様付けで呼んでる事に困惑した。
「坊主、気にするな。そいつルイーヌさんの大ファンなんだ。そもそもルイーヌさんは連合軍にいたエルフ族の英雄であり、今はエルフ族の医療の発展を促進している功労者だからな。ファンは結構いるんだぜ。」
「……そうなんですね。」
言われて気づいたが、確かに叔母さんは戦闘も優秀、医療の知識があるほど頭も良い。叔母さんってスゲーハイスペックだ。
試験は難なく終わり生徒達はその場に残るように言われ、試験官が1人残り他は出て行った。
「お前がイークの言っていたクルトか?確か始業式の時に生意気言っていたお貴族様だっけか?」
おーまさかコイツから仕掛けてくれるとは思っても見なかった。ルイが一瞬コイツを睨みつけた。ルイともなんかあるのかもしれない。
「ああ、そうだ。そういえば俺の友達が世話になったみたいだな。余計なチョッカイは出さないでくれないか?友人として仲良くしてくれるなら問題ないが、世話をしてもらう必要はないんでね。今度から文句があんなら俺が聞こう。」
俺の喧嘩口調にムッとした顔で睨みつけてきた。
「ふん。もうどうでもよかったんだが、そもそも俺様に使える機会を与えて断ったアイツが悪いのであって、こちらにはなんら否はないんだがな。」
「お前は馬鹿なのか?今さっき世話をされる必要はないと言っただろうが!?否があるのがどちらかなんて関係ないんだよ。チョッカイはだすなと言っている。わかるか?」
ルイが驚いた顔で俺を見る。そいつは小刻みに震えて怒りを露わにしている。
「おい!クルトといったか?俺様はなハイエルフの血筋のこの国の軍隊長の息子なんだ。言葉遣いには気を付けろよ?」
「おー、そうか。お前の父君には敬意を示そう。だがお前は息子なだけだ。お前が偉いんじゃないぞ?敬意を示す必要がないな。」
「サンそれくらいにしなさい。クルト君も挑発するとは大人気ないな。」
イークが今にも殴りかかりそうなサンを肩を掴み睨みつけた。一瞬だったが間違いなく睨みつけた。サンは俯き我慢している。
「それはすまないとは思わなくはないが、先に仕掛けてきたのはコイツだ。友達にした事を思えば謝罪でもしてほしいくらいなんだが?」
「君もまだこの国に来て日が浅い。もう少しこの国のことを勉強した方がいいですよ。サンには君にもリーリにも関わるなと言っておきます。今回のことはそれで治めてくれませんか?」
「ああ。わかった。今はな。こんな事で試験が落ちたら意味がないしな。お互い。」
「そう言う事です。サン、自分のクラスに戻りなさい。」
「………ああ、わかった。」
サンは俺を1度も見る事なく戻って行った。俺はルイと共にイークから離れるとリーリとミーニャ、ルールーが近づいてきた。
「クルト……ありがとう。ごめんなさい。」
「リーリが謝る事じゃないよ。それに気にしないで。俺は友達がされた事に苛立ってたのを発散させただけだから。」
「まったく、クルトはカッケーな。俺にも立場がなけりゃなー。」
「ん?やっぱりルイはサンと知り合いなの?」
「ああ、アイツの親父は俺の親父の上司だ。以前喧嘩したら飯抜きにされて、めっちゃ叱られた。それに親父もなんかされたみたいでよ。詳しくは教えてくれなかったけど。」
「そうか。どこの国でもそんな事あんだなー。貴族社会じゃないからそういう権力振りかざすのは無いと思ってたよ。」
「そうですね。私の国でも群によってはハーフや群を追い出された人達に対して差別してる種族はいますから、あまり変わらないのかもしれません。」
ミーニャも耳が垂れ下がり落ち込んだ顔で同意した。やはりどの国でもあるのかと落胆した。
「まあ、良いじゃねーか。俺たちはそんなの気にしないでこれから仲良くしよーぜ!!俺も嫌いだからな差別。そういう意味ではウチのクラスの連中は大丈夫だから当たりだな。」
「確かにそうだね。リーリもミーニャもなんかあったら言ってね。俺は学園長の友人の孫だからある程度は融通が効くからさ!!」
「俺も出来る限りは協力するから。」
「…ありがとう。」
「はい。ありがとうございます。」
2人は嬉しそうに俺たちをみていた。




