婚約パーティー
婚約パーティーには友人のカタリナやステイシー、学園のクラスメイト達を呼んだ。他にもたくさんの貴族達が呼ばれていて、さすが王族の婚約パーティーは規模が違った。最初は殿下からのお祝いの言葉から始まり、お父様と続きお偉いさん数名の挨拶からだった。後に私とアルベルトのダンスからパーティーが始まり、終わると皆が各々踊り始める。そして私たちは殿下、王妃様と共に祝いの言葉の挨拶の為にできた長〜い行列の対応に追われた。クラークやアッシュ、ニクス、カタリナ、ステイシーも並んで挨拶に来てくれた。
やっと挨拶の対応が終わり今は席で休憩中。さすがに疲れた。
「疲れたな。何度か経験はあるが慣れないな。なのに何故アメリアの方が余裕で出来てるんだ?流石だよ。」
「アルベルト様。忍耐でございます。私とて今顔の筋肉がひくついております。あの様な人数の方々をお相手に話をさせていただいたのは初めてでしたもの。」
「そうなのか?我慢でどうにかなるのがすごいと思うが…。そういえば母上が相当喜んでいたそうだぞ。後で呼ばれるかもな。」
「そうですか。喜んで頂けたのであれば何よりです。」
眉間にシワが寄らない様に必死に堪えた。
「無理しなくていいぞ。嫌なのは私も知っているからな。」
「え!?それはどういう意味……。」
「お話し中誠に申し訳ありません。そろそろお直しのお時間となります。アメリア様、よろしくお願い致します。」
「え?あっ!もうそんな時間になっていたのですね。アルベルト、少し席を外します。失礼します。」
「…ああ。わかった。」
私はマリッサと共に式場をでて化粧部屋…でなく?何処かに向かっていた。
「マリッサ?どうかしたの?1番近い化粧部屋はこっちでは無いと…」
マリッサは化粧部屋のすぐ隣の部屋の扉にノックをし開けた。
目の前にはメイド姿のキリカが立っていた。緊張な面持ちだったのが私を見るなり目に涙を溜めていた。
「…失礼いたします。」
私が部屋に入ると、一言いって抱きつかれた。私は困惑しながらも頭を撫でて泣き始めてしまったキリカを抱き返す。
「アメリア様。着替えも用意しております。時間はあまり取れないのですがご心配なく。」
「ありがとう。マリッサ。」
マリッサに堪えきれなくなった涙を流しながら微笑み感謝を伝えた。
「…キリカ。ごめんなさい。約束……守れなくて。」
キリカは首を横に振って答えてくれた。
「…っかった。無事で……良かった。」
「…ありがとう。心配してくれて。私は大丈夫。クルトも頑張ってるんだから。私も……。」
「嘘…つかないで……。私の…前では……大丈夫…だから。」
「え!?」
思い掛けない言葉に唇が震えて思うように声が出せない。
キリカは離れて涙を拭いながら私を睨みつけてきた。
「大丈夫なわけないでしょ!噂は私も知ってる。クルト様に会いたい気持ちも好きな気持ちも押し殺しながら好きでもない奴の側で好きでもない花嫁修行させられて。なのに周りからは悪女呼ばわりされて疎まれているのに平気なわけないでしょ!!アメリア様がアイツの前で見せたあんな笑顔を見て心配になるに決まってるでしょ!!」
泣くのを堪えながら声を震わせて言うキリカに私は両手で口を押さえつけながら、嗚咽を出さないように泣くのを堪えるようにして見つめた。
正直、キリカが私の噂を聞いて、私とアルベルトのやり取りを見て恨んでないか心配だった。…なのに…なのに。キリカを直視できなくなって俯いてしまった。そっと優しく抱き抱えられる。
その瞬間、感情がせきをきって溢れ出た。
「うっ…うっ…うっわぁぁぁぁークルトに会いたい。会いたいよ。…うっ…うっ…なりたくて婚約者になったんじゃない!したくて…してるんじゃない。アル…べルトは悪い…人ではない…けど…、私は…うっ…私は……好きなのはクルトだけなのに…他は何もいらない。権力も地位も興味ない。でも…うっ…でも…婚約者じゃないと…アルベルトに気に…入られないと…クルトが……クルトが殺されちゃうから…だから……だから……うっわぁぁぁぁー。」
「どっ…どう言う事ですか?アメリア様!?」
急に扉の方から声がして2人で慌てて向いた。そこにはカタリナとステイシーが驚愕の顔で私達を見ていた。
「グスン…グスン…どうして…ここに?今の話聞いて…たの?」
「私たちは直接お祝いを伝えようとアメリア様を探していたらメイドにここまで案内されまして、そこのメイドが怒鳴ったのを聞いてこの部屋の前に来たのです。そしたら…。そんなことよりアメリア様、今の話は本当なのですか!?」
私は困惑しながらも、もしかしたらマリッサが仕掛けたのかと思い真実を伝えた。私がまだクルトと婚約してた頃にヴィッシャー家が脅され、私もその時にクルトを人質に婚約破棄して王子の婚約者になるように迫られた事。その後、私の執事のゼハルがクルト達の暗殺を阻止してくれて命を落とした事。そして全てが王妃によるもので殿下も王子も関係ない事を伝えた。
「アメリア様がクルト様と婚約してから全然遊びに来られなくなって、クルト様の噂を聞いて2人で羨ましく思っていましたから、今回の事は不思議に思っていました。昨日のアルベルト様とのやり取りも正直困惑していました。…でも、まさかその様な事が。」
「アメリア様!私たちは貴方様の味方です。何が出来るかわかりませんが何かあったら頼ってください。友達なのですから。」
「ステイシーの言う通りです。何か困った事がある時には遠慮なく相談して下さい!!」
「…グスンッ……カタリナ、…ステイシー。ありがど
う。」
私はまた泣き始めてしまった。いつのまにか離れていたキリカの替わりに2人が慰めてくれた。
「アメリア様。そろそろ支度をいたします。キリカ、手伝ってちょうだい。お二方はこの事は内密によろしくお願いします。それとこの先、必ずお二方にアメリア様の為にご協力をお願いする事があるかと。是非その時はよろしくお願い致します。」
「はぁい!もぢろんです。」
「…グスン…私も是非、…協力させで頂きます。」
マリッサが私に向かいお辞儀をした。何かを待っている様だ。
マリッサ?…もしかして。
私は涙拭き、息を整える。
「マリッサ、今後協力をお願いするこの2人の安全は大丈夫なの?」
震える声を堪えながら聞く。
「はい。これから殿下とカーティス公爵に報告の元相談させて頂きます。誰かしら護衛はつけれるかと。もちろん執事兼用の名目はあくまでも執事としてつくかたちになるかと。」
「わかりました。2人とも、了承してくださる?あなた方を守る為に。」
「…はい。…でも、その様なことまで…」
「私の大切なお友達の為にさせてちょうだい。あなた方が私を心配してくださった様に、私もあなた方が心配なのです。」
「…っ!!わかりました。」
「わかりました。…アメリア様。あの…その…もしよろしければ、人の目がない所では先程の様な話し方でお話ししていただけませんか?」
「え?」
「あの…アメリア様。私も先程の話され方の方が親近感を感じました。もしよろしければ。」
「……そうですね。幼馴染みですもの。気を使うのは良くないですね。」
この2人のお願いにせっかく治った涙腺がまた溢れ出しそうになるのを我慢しながら笑って言った。
「はい。そうです。」
「そうしましょう!」
私たちは再度抱きしめあった。
「それではお二方、先に式場にお戻り下さいませ。私の所のメイドに付き添わせますのでご安心を。」
「「はい。わかりました!!」」
マリッサが私達に話しかけると同じタイミングで数人のメイド達が入ってきた。そしてマリッサに促され、2人とハグを交わして笑い合って別れた。
「アメリア様、キリカ。まずは顔を洗ってきて下さいませ。」
2人で近くのお手洗いの洗面台まで行き、顔を洗い、目蓋を冷やした。
「アメリア様。私も何かあったら必ず私に相談して下さい。私もアメリア様の役に立ちたい。」
「うん、そのつもりよ。あなたの前では着飾らないから頼むね。」
「はい!光栄です。」
「でも、クルトはあげないからね…ごめんなさい。」
驚いた顔で私を見てくるキリカにちょっと気まずい感じがした。私が気付いてる事を伝えないと関係が悪くなるかもしれないのが嫌だから言った。それも私のワガママなんだと思いながらキリカを見つめた。
「っ!!?気付いてたんですね。でも大丈夫です。むしろアメリア様なら嬉しいので。」
キリカの表情に本心で私たちの事を思ってくれてるのに胸が痛くなった。でも同時に嬉しくてキリカの手を取った。
「ありがとう。気付いてないフリするのがなんか嫌でごめんなさい。」
「いいえ。私はクルト様にはアメリア様が必要なんだと思ってますから。アメリア様と一緒にいるクルト様を好きになったからだと思います。だから気になさらないでください。私だっていつかクルト様とアメリア様みたいな恋愛しますから!!」
「その時は私も協力するからね。ちゃんと話しなさいよ!!」
「はい。お願いします。」
2人で笑い合いながら化粧部屋に戻った。
そして遅い!!!!っとマリッサに怒られた……。
そこから怒涛の着替えがスタート!!!最初は赤を基調としたドレスから白を基調としたピンクのラインが入っているドレスにあっという間に着替え完了。私はされるがまま、言われるがままに動いた。そして即座に座られて化粧、髪型セットが瞬く間に施されていく。
「キリカ。ちゃんと見てなさい。こういうこともメイドには必要になるかもしれないからね。つく主人により異なるのだから覚えておいて損はないはずよ。」
「はい!マリッサさん。」
いつのまにか私がキリカの勉強台になってしまってる様な…。
短時間に見事に着替えて化粧直しから髪型のセット替えまで…すごい。
最後にキリカの両手を握った。
「これからよろしくね。キリカのクラスはちゃんと見ておくから。キリカも見ておいてよ。後、カタリナとステイシーのも確認しておいて。これから3人協力してもらう事もあるだろうから。」
「はい。わかりました。」
お互いに手を優しく握りながらサヨナラをしてマリッサと共に私はまた式場へと戻っていった。
「マリッサ。2人のことありがとう。」
「いいえ。アメリア様の為になるのならどんな事でも致します。些細なことでもご相談下さいませ。」
「ええ。そうするわ。」
「申し訳ありません。一つ報告がございます。先程までアルベルト様が近くにいらっしゃいました。」
「え!?では…」
「いいえ。部屋の中、扉前は防音の結界をはっておりましたので聞かれてはいないと思われます。ただ部屋の前にしばらくいた様なので…お気をつけ下さいませ。何かありましたら直ぐに私をお呼びください。」
「…ええ。わかったわ。」
私は不安な気持ちを落ち着かせながら式場の前の扉の前に行った。すでに着替えを終えて待機していたアルベルトが見えた。
「ずいぶんとかかったのだな。」
私が謝罪を言う前に言われてしまい平然を装って謝罪した。
「お待たせして申し訳ございません。少しカタリナとステイシーと話をしていたもので。」
「その様だな。途中、2人と会った。どうやら私は嫌われてしまった様だ。」
「それはどう言うことでしょうか?」
ドキッとしたのを隠しながら不思議そうに意外に思ってるかの様に聞き返す。
「いや思い違いかもしれない。屋上の後から教室でも少しは打ち解けたかと思ったのだが、先程はよそよそしかった気がしてな。」
「そうでございましたか。それはおそらく、アルベルトがアルベルト様、王子だと再認識して戸惑ったのかと思います。」
「そういうものか?」
「はい。ニクスがいい例では?ただカタリナとステイシーの場合は飲み込めず戸惑ったのかと。」
「…なるほど。確かに言われてみればそうかもしれないな。すまない、変な事を言った。」
「いいえ。お気になさらず。」
「では、行くか。」
アルベルトが手を差し出してきた。私は躊躇なくその手を取る。
2人で入ると皆が拍手の中向かい受けてくれる。そのまま真ん中へと行き曲が始まるまで待つ。曲と共に踊り始め、踊る私達を周りの皆が見つめている。
「先程、聞き逃した件。どう言う事ですの?」
「ん?ああ。クルトに会った時に母上が2人に何をしたのかを聞いたんだ。」
「え?…あっ!申し訳ありません。」
「っ!大丈夫だ。」
アルベルトの言葉に困惑して間違えてアルベルトの足を踏んでしまった。
「…知っていたのですね。」
「ああ。だから咎めもしないし、母上にも言わないでおくから心配するな。」
アルベルトの言葉に息が止まる。聞いていた?でも何故?どうやって?
「……。」
「少しは笑え。」
「…はい。」
気まずい空気の中、踊りを続けた。




