訓練場
午後にになり実修組の俺たちは運動着に着替えてヒューイ先生と共に外の訓練場にきていた。
「ではまず皆さんがどこまで出来るのか見ます。皆さん魔法玉を出して下さい。」
言われた通り皆一斉に魔法玉を作る。先生はそれを確認すると後ろに回り、1人1人背中を触っては何かを確認していった。
「はい、皆さん。大丈夫そうですね。ではまずこの訓練場の説明をします。この訓練場の周りにある外壁は全て強化魔法が組まれ魔力吸収の作用があります。なので…」
先生は右手に火炎玉を作ると外壁に向かって放った。火炎玉は外壁に触れると同時に外壁に飲み込まれる様に消えた。
「この様に壊す心配はいりません。そうですね。せっかくですから身体強化できる子たちで地面に向けて殴ってクレーターがどれほど大きくできるかやってもらいましょうか。」
この言葉になぜかサフが俺にニヤついた顔で見てきた。ハァー。
「では、リーリさんとルールーさんは悪いんですが少し見学して下さい。では先ずはルイ君からいきましょうか。最大限できるとこまでやって下さい。なのでなるべく離れたとこでお願いしますよ。」
「はい!じゃあいっちょやるか!…先生!単に殴れば良いんですか?それとも勢いをつけても良いんですか?」
「…そうですね。勢いはつけて良いですよ。念のため真ん中でやって下さい。他の皆さんは私の周りから離れない様にお願いします。あっ!?準備運動はして下さいよ!!」
各々準備運動をした後にルイが中央より後方に行き勢いよく走り始めた。左足を地面に踏み込ませ、跳躍の勢いで上に飛び上がると…空中で踏ん張り!?を聞かせ更に空へと飛び上がった!!
何それ!?空間魔法?いや風魔法か?
ルイはそこから落下の速度のまま左手を体を使って地面を殴りつける。
「あっ。これヤバイですね。」
先生の一言で俺たちの周りに膜が貼られた。そして物凄い音と揺れに踏ん張りながら、立ち込める砂埃が晴れるのを待った。
訓練場のど真ん中に巨大なクレーターが形成されていた。ルイがガッツポーズをしながらこっちに近づいてくる。
「お見事です。ルイ君。足元気をつけてくださいね!!」
先生が足踏みをすると一瞬で地面が元どおりになった。ルイは急に地面が盛り上がり足を取られこけていた。
「だから気をつけてくださいって言ったじゃないですか?」
「いや、先生。ちゃんと説明しといてくださいよ…」せっかくキマった!!と思ったのに。」
確かに最後コケてたからみんな笑っちゃったし。
「いや、ルイ君。凄かったです。1年生でここまで出来るなんて思ってませんでした。さすがカイさんの継承者ですね。」
「ありがとうございます。」
「では次はイーク君にしましょうかね。お願いします。」
「なんかルイ君の後はやりにくいですね。」
言う割には顔はずいぶんと余裕そうなんだが…。
イークは植物を地面から出してそれを踏み台にして飛び上がり地面に向かって殴りつけた。殴りつけたと同時に土の中へと姿が見えなくなる。ルイの時と違い、砂埃は舞って入るが見えなくなるほどではない。
…なるほど。強化の仕方が違うだけでこんなにも変わるのか。
しばらくしてからイークは植物で地上まで戻ってきた。近くに行くと結構な深さまでクレーターが形成されていた。広さ事態はルイの半分くらいだが深さはイークの方が深い。見事だ。
「素晴らしいです。今年の1年生は優秀ですね。では次、ミーニャさんお願いします。」
緊張な面持ちのミーニャ。真ん中へと行くと、ん?毛が全て上に立ったと同時に雰囲気が変わった。膝を曲げ、宙に舞い上がった!!助走なしにルイと同じくらい飛んでいる。それに速い!そしてそこから一気に地面を殴りつけた。あんな細い腕なのに地面が音を立てて揺れ始め砂煙が舞った。しばらくして見えるくらいになると、ルイ程ではないが近い大きさのクレーターが形成されている。ミーニャはおすわりの様な格好で上を見上げていた。
うん……………。
先生が地面を直した後、立ち上がり恥ずかしそうに戻ってきた。リーリとルールーがテンション高めで褒めていた。確かに女の子であれだけのクレーターは凄い。
「流石です。見事でした。跳躍からの打撃も無理のない身体強化で惚れ惚れしました。やはり得意というだけありますね。では次にサフ君、お願いします。」
前の2人との違いは魔力そのものの使用量が異なる。前の2人は、それぞれ強化を重要視した所が違うが、体全体に一定量の強化をしながら動きに合わせて必要な部分に強化をして打撃を行ったのは共通点だ。
ミーニャの場合は動きに合わせて必要な部分の強化という点は一緒だが、自分の身体が最大限生かせるように必要なだけの魔力だけで強化を行い、飛んだ瞬間から落ち始めぐらいまで強化を解除して、ココってところで強化を施してからの打撃。これには精密な魔力制御と魔力を短い時間で流せなければ出来ない。だからこそ前者の2人との使った魔力量はおそらく半分に近いぐらいしか使っていないと思う。凄い。俺と同じことを同い年で、できる子がいるなんて…それも女の子で。世界は広い!!
感心している間にサフはすでに中央まで行っていた。
サフはわざわざ俺を見て嫌な笑みで見てくる。いや、さっさとやれよー。内心だけで文句を言いつつ見入る。まあ、コイツも得意と行っていたから興味があった。
サフは片手を高く挙げ力を入れた。……あげた手が焦げ茶色に変色した!!
属性付与か!!
俺が目を見開いてると、サフはその手で単純に地面を殴りつけた。物凄い音と揺れ、砂埃が舞った。これまたルイを意識したのかわからないが同じくらいの大きさのクレーターが出来上がっている。余裕綽綽と言った感じだ。
「これもまたお見事ですね。属性付与だけでも驚きましたが制御も完璧でした。これはまた…。では最後締めてください。クルト君、お願いします。」
わかってはいたが何故締めが俺?多分、他を見て同じぐらいにということなんだろう。でもみんなも凄いから、どこまで本気でやるかわからないんだけど?本気でも良いんじゃないかとも思うんだけど…。
あれこれ考えながら真ん中へと向かう。
よし。みんなとは違うクレーターにしよう!!
俺は真ん中に立ち、股を肩幅ぐらいまで広げて地面に一度拳を当てる。体中の力を抜き、そして振り上げ、一気に体中に魔力を流しながら流した魔力に雷を交えてその魔力を腕全体に動くようにしながら拳を押し当てた。ドン!!と音と共の俺を中心とした地面がドドドッドドドッドドドッドドドッと音を立てながら衝撃波が訓練場の全土に広がり地面を押し除けた。
「これはまた…。なんと言えば良いのやら。」
「おい!スゲーな!!クルト!!これどうやったんだよ!?」
ルイがテンションバク上がりで近づいてきた。ルイと一緒にリーリ、ルールー、ミーニャも近づいてきた。残り2人はその場にいて、サフはスゲー睨んでる。イークはすまし顔だ。
「あっあのどうやったんですか?」
ミーニャは恥ずかしそうに聞いてきた。
「それは先生から説明しましょう!その前に、クルト君。やり過ぎです。皆のいいとこ取りをするとは…。そもそもあなたの歳で出来るのが凄いんですが。
クルト君は魔力を体中にまとい強化をした魔力を打撃の瞬間に腕に全て移動させて、なおかつ、殴りつけるや押し切るのではなく打撃の衝撃を一点に狙い拡散する様に当てたのです。今挙げた2つが合間って殴ったところを中心に衝撃波となって押し寄せたわけです。後、足から腰にかけて流した魔力には土系の属性付与で強化してブレない様にしたのもあの衝撃をうむ上で必要な強化です。お見事でした。」
「ありがとうございます。でも先生のおかげです。この間教えてもらったことで自分の認識が変わりましたから。今この惨状も思ってたより強くなってて驚きました。」
「ああ。俺もそうだな。間違いなく威力が上がってて驚いだよ!先生!ありがとう!」
「わっ私も認識を変えただけで強化するのにあそこまでスムーズに魔力を使えて驚きました。ありがとうございます。」
「そうですか。お役に立てたのなら嬉しいです。でもあの講義だけで強くなれるものではありません。勉強も練習も怠らずに努力してきた3人だからでしょう。やはり今年の一年生は素晴らしいです。さて、お待たせした2人にはせっかくですから得意な魔法、もしくは教えてほしい魔法を私が補助しながらやりましょう!!」
「え!?いいんですか?やったー!!」
片手を上げながらリーリが喜んでいる。
「おっお願いします。」
ルールーもお辞儀しながらも嬉しそうだ。
「はい。では他の皆さんは私がお二方に補助やアドバイスをしますので、聞いて参考にしてみて下さい。」
皆が頷き、まずルールーが前に出た。
「はい。ではルールー何が得意か?してみたい事はありますか?」
「はい。あの…私、魔法玉までしかした事ないので、水属性が最適だったから何か教えて下さい。」
「なるほど。わかりました。では初歩の魔法をしてみましょうか。ではまず、空気中にある水分を自分の魔力でかき集めるイメージをしながらウォーターと唱えて下さい。」
ん?????
「はい。やってみます!………………ウォーター!!」
掌の上にビー玉ぐらいの水の球体が出来上がる。……小さい。
「ではもう少し早く魔力を出しながら磁石で引き寄せるようにイメージして下さい。」
「はっはい。……………ウォーター!!」
ポッと音と共に自分の顔の5倍くらいの大きな球体が出来上がった!!
「え?ええぇーーー!?こっこれどうしたらいいですか!?」
自分で出したのに、大慌てなルールー。
「落ち着いて下さい。さすが最適なだけありますね。お見事です。真ん中に向かって投げちゃっていいですよ。」
「はっはい。んーーえい!!」
なんとも、可愛らしい投げ方で水の玉を投げた。
バッシャーンと水しぶきを上げながら地面に水溜りができる。ただ直ぐに地面に吸収され何もなかった様に元どおりになる。その光景にみんな驚きの顔で眺めていた。
「ルールー。今後は自分の魔力を操りながら大きさを調整出来る様に練習して下さい。」
「はい!!ありがとうございました。」
「先生!質問があります。」
「はい。なんでしょう?クルト君。」
「はい。以前に父様より属性を使った魔法を行使する際の理論を聞いたことあるんですが、今の先生の説明と少しちがったんです。」
「はい?ちょっと待って下さいね。念のため、どう言った経緯か教えてもらえますか?」
先生の目が見開いて力が入ってる…どういう意味だ?なにかを伝えようとしてるのはわかるけど。
「はい。ええとですね、…確か無詠唱での魔法行使の質問をした時に詠唱行使の理論との違いを教えてもらった時です。」
何故か先生がホッとしてる。
「それは何歳の時ですか?」
「9歳だったかと思います。」
「ハァー、9歳でする質問ではないですね。おそらくですがわかりやすくするために魔力変化の理論をはぶいたのではと思います。無詠唱する際に必要な理論ですので。」
「確かにその言葉は説明では無かったですね。」
「まあ、今は気にしなくて大丈夫です。高等部で学ぶ分野ですので。それに無詠唱はできる人は限られますので訓練などはしません。興味がある子は自由時間等を使って集まって練習しています。どちらにしろ先の話です。今は私が説明したのを参考にして詠唱して下さい。
「…はい。それで詠唱します。」
「では次はリーリさんですね。何かありますか?」
「はい!そうですね〜。なら闇属性でなんか教えてください。」
「そうですね…。確か幻惑魔法が出来るんでしたね?一度見せてもらえますか?」
「いいですよ。じゃあ、いきますね……プライスカット。」
「おっ!!リーリが消えた!?」
真っ先にルイが反応した。
「え?」
みんなには見えてない様だ。俺にはリーリの気配が消えてブレて見える。なんとか目でおった。リーリはルイの後ろに回り、肩に手を置き耳元に息を吹きかけた。
「ひぇ!!」
ルイが変な声を出して耳を押さえながら後ろにいるリーリを見る。
「いい反応!!ありがとう。」
妖艶に笑うリーリ。
「いっいつの間に後ろに!?ってかなんで俺?」
「なんか面白そうかなって。思ってたよりいい反応だったよ。」
「素晴らしい。リーリさん。皆さん、いまのは気配を消す魔法です。透明になるわけではないので初期動作が難しいのですが、お見事でした。魔力制御をもっとうまく出来る様になれば私もクルト君、ミーニャさんもごまかせる様にできるでしょう。私のは秘密ですが、クルト君は魔力の流れを目で見える様ですし、ミーニャさんは匂いと音で追ってましたから。それでも上出来です。これから更に精進して下さいね。では今の魔法によくセットで使う魔法の初期魔法を教えましょう。」
「ありがとうございます。…なんだ〜。みんな騙せたんじゃないんだー。ちぇっぇ。ならまずは2人に気づかれない様にするのを目標にしよっと。」
リーリが俺とミーニャを見て笑みを浮かべた。
「はい。それではいきますね。今から教えるのは自分の影に身を隠す魔法です。では…シャドル。」
一瞬で先生が消えて先生がいた場所に黒い影だけが残っていた。
「スゲー!!今先生は影の中にいるんですか?」
「はい。そうです。この様に姿が見えないだけで普通に会話も出来るんですよ。」
シュッと先生が戻ってきて魔力を体全体に覆うイメージをする様にと指示された。面白そうだから俺もやってみる。
「体を魔力で覆ったら、自分ごと影に吸い込ませるイメージでシャドルと唱えて下さい。」
「シャドル」…「シャドル」
ちぇっ、身体半分しか入ってない。
「うぉっ!クルトまでためしたのか?なんか気持ち悪いぞ。身体半分ないみたいで。」
「いや、それならリーリの方が生々しいよ。」
「え?…げっ!?確かに。」
リーリは顔だけ残って生首だけみたいなっていた。
「お2人とも上出来ですよ。説明だけでここまで出来るなんて。リーリさんに関しては練習さえすれば、すくに出来る様になるでしょう。後、せっかくですのでリーリさんも身体強化は練習しておいた方がこの先役に立つと思いますよ。」
「へ〜そうなんですか?ならしてみようかな。」
「はい。そろそろ時間ですかね。次は別の学年の生徒達が使いますので訓練場ではここまでです。残りの時間は図書室で過ごしましょう。」
こうしてその後、俺たちは図書室で体の仕組みや魔力に関して調べたりして過ごした。




