互いの秋
掲載日:2019/09/08
暮らしに疲れていた男と
暮らしに怯えていた女がいた。
二人はいつしか巡り会い、
互いの苦しみを打ち明ける
ことになった。
それまでは、
自分たちの話に耳を傾ける者はなく、
自分たちも誰かの話に耳を
傾けようとはしていなかった。
無条件に話をし、
話を聞いてもらえることは、
互いの安らぎとなり、
二人は大切な相手になった。
一緒にいたくなるのにそう時間は
かからなかった。
そして、夢の中の長閑な森に、
二人は家を持った。
誰にも邪魔されない秘密の家。
今夜も二人は、その森の家で、
抱きあい眠りにつく。
暮らしに疲れていた男と
暮らしに怯えていた女は、
互いの温もりがなくなることが
怖くなってしまった。
もう、離れられなかった。
人は自分の秋を、誰かの秋に
重ねてみたくなるらしい。




