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鐘の音が鳴り響いている。

ここはイギリス、首都ロンドン。紳士と紅茶の国である。今となっては、過去の凄惨な政策は紳士の国と言えるのか怪しい。

厳つい装飾の外装をした古めかしいこの建物は、表向きには郵便局となっているが実はNI6の本部となっている。本部の他に色んな国に支部があり、更に枝分かれして部署が設けられている。


本部の監視第三課では、とある人物の動向について会議が開かれていた。廊下からカツカツとヒールの音を立てて入ってきた女、ヨハンソン・アルティエは数枚の写真を持ってきた。

「みんな、新しい情報を掴んだわ。これを見て」

ヨハンソンは写真を皆が囲むテーブルに広げた。写真には男が三人映っている。その場にいた数人の男女が興味を示し、オールバックの男マーティン・ビルバーグが口を開いた。

「まさかこうくるとはな。これじゃNBIも動き出すだろうな」

頭を抱えている。周りもみな同じように腕を組んだり、ため息を吐いたりしている。


「こいつは誰だ?」

マーティンは写真に写っている、派手な髪色の男を指差した。この部署唯一のアジア人チャン・スーチーは首をかしげる。

「調べたんですが、彼に関する情報がないんですよ」

「ない?」

「いえ、無いわけではないのですが、調べても調べても普通なんですよ」

と、チャンは調べた内容をまとめた書類をテーブルに置いた。それをマーティンが手に取る。


『イ・ユン/男/20歳/身長175cm/体重60kg

韓国、ソウル出身。母親は看護師、父親は歯科医師。二つ歳上の姉が一人。姉はモデル。公立の小中学校へ通い、高校は名門私立K校に進学。この時祖父がガンで亡くなる。19歳で日本に単身で渡り私立大学へ進学』


「至って普通だな。前科とかはないのか」

「その紙に書かれてること以外は何もありませんでした」

頭をポリポリ掻きながら、チャンは答えた。これ以上どうしようもないと言いたげな表情だ。


「俺たちが動くより前にNBIがもう動いているだろう。俺たちはあくまでイワン・ロナウジーニョの監視だ。あの和服男が何をしようが手を出さないこと。いいな?俺とチャンは日本へ向かう。ヨハンとビリーは本部で引き続き仕事をしていてくれ」

名を呼ばれたビリー・スキンフ・ジャウストは敬礼をする。彼は元警官だ。体力のある人材がほしいということで、この部署に抜擢された。

「了解。何も起きないことを祈るわ」





場所は変わって、東京。

高層ビルが立ち並ぶ中心都市にはたくさんの人、人、人である。人口密度の比率が尋常ではない。

「多い……多すぎる」

マーティンはあまりの人の多さと土地の狭さに驚いていた。隣に立つチャンは自国ーー彼は中国の都市部育ちであるーーで慣れているので驚かなかった。

「さっそくですが、彼の自宅の場所を把握しましょう。私が偵察に行きますので、あなたはカフェで隠しカメラから見ていて下さい」

「あ、ああ。俺、日本人は英語が通じないと聞いたんだが大丈夫だろうか」

「それに関しては大丈夫です。それに英語が分からない人だらけの場所の方が都合がいいでしょう?」

全くもって正論である。


俺は言われた通り、近くの全世界に店舗を構える大手チェーンの喫茶店に入った。席を確保し、レジで日本限定だというフレーバーの飲み物を買う。

「これは何味なんだ?」

席に戻って買った飲み物を飲む。

「にがい……」

真緑の、おそらく抹茶だと思われるこの飲み物はどうやら口に合わなかったようだ。半分くらい飲んだところで、ノートパソコンを開いた。




一方、チャンはロナウジーニョがいると思われる家の前に来ていた。大通りはたくさんの人で賑わっている。しかし細い道へ入った途端に、同じ場所かというほど静かになる。家はあるのに、住人全員が侵入者を屋内から警戒しているかのように住民の生活音は一切ない。


「マーティン、聞こえますか」

イヤホンをつけ繋がっている通話先、マーティンに話しかける。通話口からジュースをすするような音が聞こえる。

「……あ、ああ聞こえてる。到着したのか」

「はい。ですが在宅か不明です。どうします?」

再びジュースをすするような音がする。むせたのか咳も聞こえる。

「…けほっ。そうだな。周囲を慎重に見て、大丈夫そうなら盗聴してくれ。難しいなら周辺の建物に入って様子見だ」

「了解」

怪しまれない程度に、辺りを見回す。この細い住宅の並ぶ道には自分を除いて誰一人もいない。本当に住んでいるのだろうか。


安全を確認し、目標のアパートへと向かう。

ゆっくり、足音を立てないように。104号室の前で立ち止まり、ドアに耳をすます。

なにも聞こえない。防音性が高いわけではない。このドアや壁の質からするに、コスパを重視してできる限り安いものを使用している。


チャンはその場を離れ、喧騒の大通りへと戻った。人混みの中へ潜ってしまえば、誰が何をしていようが気にする者はいない。チャンはもう一度、マーティンに呼びかける。

「マーティン、聞こえますか」

多少のノイズが入った後、声が出た。


「どうだった」

「どうやら先を越されたようです」

一切音がしないということは、すでにこの場を去ったのだろう。念のため確認したが鍵は開いていなかった。

「くそ、遅かったか。アメリカ側がすでに捕まえてると楽なんだがな」

「さてどうでしょうね。僕らはこれからどうします」

大通りは先ほどの小道とうって変わり、事件や犯罪とは無縁な笑い声や幸せそうな表情であふれかえっている。


この回で、でてきた沢山の人物はそんなに重要ではないですがマーティンとチャンはこれからも頻繁に出ると思います。

*NI6=MI6

*NBI=FBI

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