02
自宅に二人を入れ床に座らせた。
「ってオイ!靴は脱げよ!」
足元を見ると二人は土足のまま、あぐらをかいていた。それを見て、思わず怒鳴ってしまった。さすがに最近の欧米でも靴は脱ぐと聞いたのだが、どうやら彼らは違うらしい。
「ああ!ごめんよ。すっかりホテルの気分でいたよ」
イワンは申し訳なさそうに重そうなブーツを脱ぎ、玄関に置いた。何も言わなかったが、にしまも下駄を脱いだ。土で汚れた床をティッシュで拭いてくれているが、むしろ練り込んでしまっている。後で洗おう。
俺は冷蔵庫からキンキンに冷えた茶を取り出し、コップに注いで二人の前に置いた。
「わあ、ありがとう。これが抹茶というやつかい?」
目を輝かせながらイワンは聞いてきたが、俺が「違う」と突っ込もうとした時、彼の口から音がでた。
「それはただの麦茶だ、ばかやろう」
「なあんだ。違うのかあ」
俺は初め、どこから聞こえてきたのかと驚き周囲を見回してしまった。なぜなら彼の口は動いていたが、動きと実際に聞き取った言葉が全く違ったからだ。
「な、なあ今のって」
「どうした?」
イワンは彼のことを知ってるから大したことではないのだろうが、俺からしたら彼が腹話術師なのではないかという疑問すら感じてしまう。
「今喋った?」
俺はニシマを指差して言う。
にしまはこくりと首を縦に振った。
「あんた、腹話術でもやってるのか?」
今度は首を横に振る。なぜ普通の会話はできないんだろうか。これではまともに話ができない。
「彼ね、口と舌まわりが柔軟でね。それを暇つぶしに極めていたら腹話術っぽく話せるようになったみたいだよ。面白いよね!おかげで暗号とか秘密のやり取りをする時は、バレないで済んでるよ」
暗号?秘密のやり取り?こいつら何をしてるんだ?
「あっ、そうだ。せっかくだし君も見てもらったら?」
「な、なにを?」
「眼を」
イワンがそう言った途端、にしまの目つきが変わり俺をガン見しだした。肩をがっしりと掴まれ、身動きができない。
「こっちを見ろ」
思わず目を逸らしたら、低く睨むような声で脅され俺は震えた。急にその場の空気がひんやり、重くなる。
ニシマはブツブツ何かを言っていて、こちらが声をかけても反応がなさそうだ。しかし肩を掴む手の加減は容赦がない。指が肉に食い込みそうだ。
「どうだい。新しいタイプかい」
イワンはそんなことを言っている。何の話か全く飲み込めないどころか、この状況が何なのかすら分からない。にしまは何をしているんだ。人の目を覗きこんでいる。
「#6c2c2fだ」
「へ?」
数字とアルファベットの羅列が聞こえたが、何かの暗号か。少なくとも俺の聞いたことがないものだ。
「それはカラーコードだよ。彼は人の目の色をコードで把握するんだ。そしてコレクションし、気に入ったら味わう。実に面白い嗜好だ!」
「は……た、たべる…のか」
その言葉を聞き、体の震えが止まらなくなる。冷や汗まででてきた。まさか俺の目を取り出すとか言わないよな。奥歯がカチカチ音を立てて、俺が恐怖の中にいることを嫌でも知らしめられる。
「食べはしない。なぜなら、もうその味は知っている。それにコレクションがあるから必要ない」
これは冗談ではない。それくらいは分かる。
「君は僕たちを招き入れた。つまり君は僕たちのことを誰かに頼まれて、この部屋にいれたのだろう。誰の手先だ?」
さきほどまで柔らかい雰囲気を醸し出していたイワンは、急に目つきが変わり、まるで誰かに追われていてその誰かを突き止めようとしているかのようだ。実際にそうだ。
俺は怖気づいてしまい、声を出そうとするも恐怖ででず口をパクパクさせていた。
「さあ誰の命令だ?イギリスか?アメリカか?」
必死に首を横に振るも、ニシマの握力が俺の肩を痛めにかかる。骨が折れるのではないか、という恐ろしさ。自分はただの一般人なのに、それを言えない悔しさで涙が出た。
「おやおや泣かれても困るよ。君を処分するかどうかは、君の返答しだいで変わるからね」
「あ……う……」
俺は恐怖に押しつぶされ、失神してしまった。
目の前が真っ暗になる。
最後まで見て頂きありがとうございます。
少し物語の展開が早かったかなとは思いますが、先を書きたくて仕方がない!笑
因みにかなり海外映画やドラマの影響受けてます。