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プロローグ?……さいしゅうけっせんのまちがいじゃないの?


超見切り発車






「あなたは一体 何なんだ?」


 公園の片隅、そこは日常と掛け離れた光景が広がっていた。


 硝煙の匂い、無数の焦げ跡、そして意味不明というべき現象の数々。

これは一般的な視点からの出来事、見る者が見れば……その卓越した技術が、

人を超越した光景が、この一端からでも読み取れる。


 そんな中に立つ二人。


 一人は和洋折衷、流麗な装いが目立っている。

その凛とした美しさは、立ち止まってでも見続けてしまいそうな程。

そして…その右手には一振りの刀、左手には機械的な銃、それらは在るだけで

只ならぬ存在感を放ち、洗練された立ち姿と相まって芸術品の様である。


 相対する人物は、一見するとごくごく()()な学校の制服を着た高校生。

肩に学校指定の鞄を掛け、左手にはスーパーの袋……もう片方の手にはペンを

挟んだノートが三冊、に分厚い本が一冊、この現状がなければ公園で勉強をして

いた学生である。


 だが、問い掛ける少女はそうとは思わない……いや、思っていない。


 それは記録が、痕跡が、あり様が、全てが異常を物語る。

『午前0時の奇跡』『八百夜狸の説得』『神銃刀の証明』『裏四家の同盟盟主』

決して、表に出ることのない偉業、裏の世界に轟く数多の英雄譚。


 それら全てが目の前の人物の手によって為されている。

それは異常、例外、規格外……言葉を尽くしても表現できないこの人物。


 問いに対する答えは常に決まっている。


「私は主人公じゃないんですよ、みんなが一生懸命頑張っただけなんです」


 この人にとっては非日常も日常も等しく一緒。

一生懸命頑張る仲間がいて、ただそれを応援してる。

ただ、ほんの少しだけ……()()()()がズレただけ。()()()が違っただけ。


 少なくとも……そう思っている。


「何を巫山戯ているっ!」


 揶揄う様なその答えに、少女は激昂する。

彼女は今日、この日の為に、“守破離”の努力を重ねてきた。


 少女の心は掻き乱される。


(そんな真実があっていい筈がない)


 それは彼女の……過去の否定となる故に。


(私のライバルはこんなのじゃない。)


 ずっと対等な好敵手を求めた故に。


(私が戦って勝ち取りたいのは、他人に勝った称号じゃない!)


  それは師匠への尊敬と、憧れの情故に。


(大好きなあなたなんだっ!)


 何よりも……少女の()()の思い強さが故に……。


「もう一度、行きますっ!」


 再度繰り返される……宣誓。

しかし、その刃が、その銃弾が、届く事は決してない。


「おいで……君の物語を見せておくれ」


 そして今一度、心と心が交わされる。


 銃から放たれた弾丸を……刀で弾き飛ばす。

この銃に火薬等は使っていない、使われているのは電気……それは電磁加速銃(レールガン)

そして落雷を上回る電圧で放たれる弾を、技と力を以って更に加速。


 如何なる理が働いているのか……使っている本人すら知らない。

無知をそのまま利とする技術、己が知らなければ悟られる事はない。

それが強者であるほど、優れた品物であるほど、その利は大きく働く。


 しかし、その弾は届かない。


 開かれたノートの1ページが輝き、銃弾が消えてしまった。

そこに何かが介在する余地はなく、予定調和のように消えてしまった。


 なぜなら……そういう者だから。

どれほど『最悪』であろうとも、どれだけ『無敵』であろうとも、

それが一片の揺るぎもない『絶望』でも、法則から乖離した時点で敗北する。

一般人にとっての、非日常における分類し得ない『影響』、

理から外れた者にとっての、日常におけるどこかの『先達』。


 それが、過去に………願われた本質。


「惜しい、普通の銃弾なら掠るくらいはあったかもね」


 事実、()()の攻撃ならダメージを与えることは不可能ではなかっ()


 しかし、今は違う……。


 血脈のしがらみから解き放たれ、自身もまた人を超越した故に。

物理すらも無効化し、元来あった弱点はほぼ全て消えた。

日常に死に、異常を生きる存在は……人の境地を突破した。


「くっ、〔常世の闇よ、天上の昇火よ、胸に抱くは希望の灯火、集し軌跡、

 理の壁を貫く 一陣の閃光とならん〕【神光粒子加速(タキオン・スタート)】!」


 苦し紛れではなく、打開一手としての魔法を放つ。

複合されたそれは、銃弾と共に光速で駆け抜ける。


「【虚夢(ゼロ)】……知ってるでしょ、あらゆる攻撃は僕の前には無意味」


 それは体質、それは技術、遍く“裏”を知り得る者の力。

過去の自分を受け入れて尚、現在の自分を否定しない力。


「じゃあ、今度は僕の番だね、《愚賢(フール オア )思考(クレバー)》《概算時間(イマジナリー・タイム)》……ふぅ

 〔(うつつ)の終わり、それは開かれし深淵(アビス)あるいは深層(タルタロス)の象徴、遂に訪れる神々の黄昏(ラグナロック)

 は、終結(オシマイ)原初(ハジメ)を世に知ろしめす、力ある同胞(はらから)よ、(きょ)なる意の前に平伏(ひれふ)す事は(ココロ)

 に刻まれし絶対の業と()れ〕【強制無(ギアス・アン)効領域(ンチフィールド)】」


 ノートに記された記録を参照し、異常を組み上げ、異能を発動する。

加速した認識と、緩やかな時間の流れの中で組み上げられた魔法は膨大な魔力

によってその効果を発揮する。


「……えっ?」


 時間が戻り、気がつけば少女は武器を取り落とした。

あらゆる異常を正常に、つまりは“無効”力ある者は凡人となる空間。

 武器を落としてしまうのも無理もない、刀は数十キロ重さがあり、銃も軽量化

の機能を失ったが為に本来の重さが露呈した。

戦士としては十分鍛えられてはいるが、その細腕ではどちらか片方を両手でを

持って戦うのが精一杯だろう。


「はい、ここまで」


 だが、刀を取り…近接戦闘を試みようとした所で首筋にペンが突きつけられる。

万年筆、鉛筆、ボールペン、それぞれが急所を狙った位置にあり、勝負の行方を

はっきりと示していた。


「センセイ、さっきの魔法は見た事も聞いた事もないんですけど」


 白旗を上げながら、驚きと呆れが半々の気持ちで質問する。

若干、膨れっ面なのは悔しさの表れなのだろう。


「そりゃそうでしょ、即興で作ったオリジナルだから…さ」


 軽くウィンクをしながら、さも当然の様に言い放つが…そんな訳もない。

魔法を想創するのは、国家が複数動き出す程の異常事態である。

それを即興で成し遂げたのは余人に知られることは無いとはいえ、十分偉業と

呼べる行いだ。


「あ……勿論このことは二人だけの秘密…ね?」


 茶目っ気を含む言い方、先程まで死闘を演じていたと思えないほどの清々しさ

を感じさせる。


「はぁ……あとセンセイ、この間から気になってる事があるんですけど」


「ん?何かな?」


 ふと、疑問に思う。

今の自分って何かおかしかったっけ?……と。

彼女が突撃してこなければ、普通に勉強して、それから帰って、後は晩御飯を

作って……平凡だよね?


 強いて言うなら、()()()()調()したくらいか。


「これじゃ、私の目標が叶えられない……」


 悲嘆に暮れて、衝動的にセンセイを襲ってしまった。

現状に我慢ならなかった………ずっと、ずっと、ずっと前から願っていた事。

だからこそ、だからこそ、現実に向かって文句を言う。


「………何で」


「……?」


「……何で」


「…??」


「…何で」


「???」



























「何でセンセイは()の子になっちゃってるんですかっ!?」


 そう、戦っていた相手……少女の師匠にして憧れの人、ぶっちゃけもう最強格に

カテゴライズされるこのチートッ!


 理不尽 of the 理不尽っ!……その性別は()()


 かと言って、最初から女性だった訳ではない。

事の発端は先月、少々(国家総動員レベルの)ゴタゴタがあって結果こうなった。

……と言うか、元々そうだった?遺伝子レベルで両性保有?


「何で……と言われてもぉ、うーん、どう言えばいいんだろう?」


 すいません、元々女の子だったよ エヘッ。

……何て説明じゃ納得しないのが目の前の優秀な弟子。


「………あっ、そうそう『半陰陽』ってやつだよ」


 両性保有で、属性的矛盾を内包してる。

……間違ってない。


「間違いでもないのがちょこっと悔しいです」


 目の端に涙を浮かべ、心の底から悔しさを感じさせて文句を言う。





 そう、事の発端は1カ月前……時計の針を巻き戻してみよう。









厨二病………特服、あっ これはオラオラ黒歴史

……じゃなくて、応援の正装(ペンライトとキレのある動きを添えて)



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