第二話:第2次試験開始
次の日、俺はテルズさんと宿で別れ試験会場の学園に改めて来た
沢山の受験者が校舎に入って行く
ざっと見ただけでも100人超は居るんじゃないかな
更に後ろにも受験者がまだまだ居る
「これより、第2次試験を開始する。受験者は番号を呼ばれるまでこの部屋で待機するように」
案内された部屋に入れば試験官から“102”と書かれた紙を渡され、説明が始まった
今年の第2次試験は実技
試験官に呼ばれたら別室に5人づつ向かい実力を示す
毎年2次は内容が異なるらしく、ちなみに去年は筆記だったそうだ
次々番号順で呼ばれていく受験者を見てたら緊張してきた手汗が凄い
他の受験者は皆、それぞれ自由に過ごしていた
談笑する者、ウォーミングアップしてる者、俺と同じく不安そうにしてる者
特に談笑している人達は余裕なんだろう、少し羨ましい
少しでも気分を落ち着けようと深呼吸して何となくみた部屋の隅っこに見覚えのある奴が居た
「ラディーグ?」
「シフェル?」
昨日助けた迷子青年ことラディーグだった
道すがら互いの名を言っていたためラディーグも覚えてたらしい名前を呼ぶ
「キミも受験者だったんだ」
「あぁ、まさかシフェルもか。驚いた」
知り合いがいた事に驚きつつもたわいない話してる間に緊張感はだいぶ和らいでいた
「次、100番から105番来なさい!」
ついに、呼ばれた
ラディーグは少し前に呼ばれたため部屋には居ない
案内された部屋には訓練室と書かれており試験官が3人いた
「さ、どうぞお座り下さい」
倚子が用意されており受験者達は座る
「では、只今から第2次試験の実技を開始します」
女性試験官が説明する
受験者の前から離れた場所に的が用意されていて、魔法を使用し当てると言った簡単そうなものだった
「それでは100番、始めてください」
「はい!」
100番の子は女性だった
茶髪で少し気の強そうな雰囲気の彼女は試験官と受験者に一礼したあと一度目を閉じ剣を鞘から抜き集中し始める
「ハッ!」
掛け声と共に水が剣にまとわり横一文字に振り抜くと水の衝撃波が的を真っ二つにした
「・・・凄い」
「当然よ、これぐらい出来なきゃ合格なんて出来ないわ」
いつの間にか終わって倚子に戻ってきた100番の女性は当たり前だと自信たっぷりに言ってきた
やっぱり、そうなんだと手に力が入る
ろくに魔法の勉強が出来なかった俺には同じ事が出来るだろうか不安になった
101番の受験者は風の塊を的にぶつけていた
「次、102番!」
「は、はい!」
「おい、おい・・・」
「だっせぇなぁ」
呼ばれた時に慌てて立ち上がったため倚子が倒れ周りに居た受験者達が失笑する
100番の子は笑ってなかった
「落ちついて、あなたが今できる範囲でいいから。やってみて」
3人の試験官の内、穏やかな雰囲気の女性試験官が微笑みかけてくる
そうだ、落ち着け
魔法を操るための詳しい知識は無いが感覚はちゃんとわかる
少しだけどテルズさんが昔教えてくれた
体の中に流れる魔力を外に打ち出すイメージ
徐々に流れを掌へと集中させ
「ファイヤ」
放たれた青い炎は真っ直ぐ的に向かい・・・的を消し炭にした
「これは・・・」
試験官の人達が驚いてたり、後ろの受験者が固まってたりしてるけど
マズかったかな・・・
もっと強い魔法の方が良かったかな
弱い炎呪文で呆れられたかもしれない
もっとテルズさんに習っておけばよかった
その後、なんとか無事に終わったのでホッとした
合格できたら良いけどなぁ
side試験官
「それにしても、彼の魔法の強さはなんなんだ」
全員の試験が終わり片付けながら呟く
102番の青年
下級炎呪文であるファイヤで教師が念のため強化していた的をあっさり消し炭にした
100番の子ももちろん凄い
だが、微かに感じた魔力の流れは今まで見てきた受験者の中でも1、2を争う
なのに、あの様子だと自分が結構凄い事をしたのに自覚無しだろう
誰に魔法を習ったのだろうか・・・
彼の出身はアグロス村になっていた
本格的に学べば更に強くなれる
「今年は優秀な生徒が集まりそうですね」
「はい、今から楽しみです」
新たな生徒がやって来る
我々教師陣も気合いを入れて取り組まねばならない
でないと、案外すぐに抜かれてしまう・・・かもしれない
2019/4月29日 加筆修正しました