第二話:退学届と硬化症
トゥトルさんの鍛冶屋を訪れてから二週間
ラディーグはたまに学園に来るようになったが授業中も上の空
この前なんて薬学の実技で塗り薬を造ったら何故か皮膚が爛れる薬を造るし、もう一回造ったら爆発した
自習で図書室に来た時は本を逆さにして読んでいたし
話しかけても、大抵“あぁ”や“うん”としか言わなったりもする
「えっ、今日も鍛冶屋に戻るの?」
「あぁ、すまない」
「いや、こっちは大丈夫だから。お大事に」
授業が終われば部室ではなく鍛冶屋に向かう
トゥトルさんの事が心配なのはわかるけど、あれから二週間
風邪とかならとっくに治ってるだろうし大抵の怪我もほぼ良くなってるはず
大丈夫だといいけど
次の日のホームルーム
「えっー、皆に残念なお知らせがある。ラディーグ・トルビアが退学届を提出してきた」
朝のボッーとした中で突然告げられたラディーグの退学
担任に詳しく聞こうとしてもわからないと言われただけだった
放課後
部室に行くとユージーン先生が居た
「そうか、ラディーグが退学届を・・・」
残念そうに呟く先生
「え、ラディーグが学園を辞める!?」
「それは、本当なんですか?」
ちょうどやって来たカテリナ達にも説明する
「確かめに行こう、ラディーグ本人に聞くのよ」
理由がわからないと考え込んでいた中、カテリナが切り出す
「でも、ご本人の意思で決めたことなら私達がとやかく言っても意味がないのでは?」
「そうだとしても、アタシは辞める理由が知りたい。まぁ、ラディーグに今辞められると部活も危機だしね」
「カーくんは素直じゃ無いね。心配してるんでしょ~?僕も賛成かな、聞きに行こうよ」
心配だよと呟くエドに頷く
皆でラディーグに話を聞きに行くため部活を早めに切り上げることにした
大地の鍛冶屋前
「休業中?」
暗くなる前に急いで鍛冶屋に来てみたら休業中の看板が立っていた
「すみませーん!」
声をかけると少ししてラディーグが現れた
「皆、どうして」
「退学届を提出してきたって聞いたから、心配して来たんだ」
「大切な人が大変なんだ。ごめん」
俯いてしまうと小さな声で言った
一体どういう事なのか尋ねようとしたら店の奥から大きな音が聞こえてきた
ハッと顔を上げ急ぎ中に戻るラディーグの後を追うように俺達も中に入った
「トゥトルさん!!」
工場の中で倒れているトゥトルさんを発見して駆け寄るラディーグ
トゥトルさんは肩で息をして苦しそうだ
「ちょっと見せてみろ・・・これは、硬化症!」
ユージーン先生がトゥトルさんに近づき様子を見ると驚き眉を顰める
「こうかしょう?」
カテリナが首を傾げる
「硬化症、体中がドンドン石のように硬くなり・・・最終的に死んでしまう病だ」
「体中って、内蔵とかも・・・?」
「全部だ、もう既に内蔵の一部や腕と足にも症状が出ている」
「もう、残り僅かと医師に言われた・・・薬がないから助からないと」
消えかけるほど小さな声で言うと涙を堪える
「薬がないって、不治の病なの?」
「いや、そうじゃない。硬化症は適切な処置さえすれば助かる病だ。しかし、その薬がある場所はドワーフの国・エーアデ商業都市のみだ」
エーアデ商業都市はここアリステル王国の山向こうの国だ
鉱石の加工による武器の商売を主に王国や隣国、ロッシュ帝国と取引をしている
「だったら、エーアデに薬を貰いに」
「無理だ、トゥトルさんはエーアデを追放されたって言ってた。高価な薬をくれるはずないって」
皆が黙ってしまう
とりあえず、トゥトルさんをベットに横にさせ話し合うことにした
「薬をもらえないか、聞いてみるべきだと思います。いくら追放されたといえ人命第一。もしかしたら分けて頂けるかもしれません」
「なら、俺が掛け合ってみよう。理事長に頼めば国同士の繫がりもあるからなんとかなるかもしれない」
ユージーン先生に頷く
「なら、アタシ達は鍛冶屋の手伝いをしましょう。ラディーグ一人じゃ大変でしょ?」
「・・・いいのか?」
「僕達、友達じゃないか。気にしないでよ、助け合うなんて当たり前!」
にっこり笑うエドにラディーグはありがとうと応えていた
ユージーン先生や理事長に薬の交渉は任せたとして出来ることは全部やりたい
明日から忙しくなりそうだ