魔物を『使役』して異世界暮らし
しばらく連載を放置してたりした結果がこれだよ! ほのぼの(?)しているはずです。多分。あ、R15は一応です。
「はあーどっこいしょ」
「ご主人様、それ普通の中学三年生は言わないです」
「良いんだよ、親から既に年寄りと呼ばれている以上そんななり振りなんて構ってられないし」
異世界基準では至極一般的なとある集落のとある先日まで耕作放棄地だった場所で俺……とりあえず偽名でミラーとで言っておきますか。
そんな自分とこの世界に来て飼いならしたこの子を魔物と戦わせたり、ダンジョンにあったアイテムを与えた結果メイドさんになっちゃったこの狼ちゃんと一緒に畑仕事に勤しんでいる。
「そもそもこんな世界に来た時点で中学生とか関係ないからー。それより狼って良いよなー、そんだけ動いて疲れないし」
「私にとっては良い運動になってます! こうやってほのぼのとした生活を送れるなんてご主人様と会ったときには考えもしなかったですしー」
「そもそも初めて会ったときは死にかけてたからなお前」
くうぅん……。
こんな風に今にも衰弱死しそうだったこいつの表情とか呻き声は今でも忘れられないし、緊急事態でなければ遊んでやろうとさえ思っていたかもしれない。
「ちょ、やめてください恥ずかしい! 思考が今直通状態なんですから自重してください!」
え、自嘲? 笑えばいいの?
「そんなわけないですよ! 本当に恥ずかしいんで止めてくださいぃ……」
いやー、愉悦。実に愉しませてもらった。泣きついてきたときの顔はいつ見ても愉しいこと変わりない。
ま、遊ぶのは程ほどにしてご褒美のなでなで。
「はううぅ……。ご主人様ぁ……」
現在開墾中の土地で泥まみれの男子中学生に縋りつき、頬を赤らめている容姿端麗な狼メイドの絵とは些か、というかどう見たってシュールだ。すごいミスマッチ。これで俺が多少美形であればなー! 元デブ、現ぽっちゃり気味の俺には程遠い話でしたね! ちくしょー!!
「いや、何やってるの。そろそろお昼の時間なんだけど」
堕天使のレイジーさんからの定時連絡が来たので一時撤収。
「今から伝説の超昼食を食べに出かける! 後に続けシラミネ!」
「はい……」
「…何の真似か知らないけど村長さんも呼んでいたし早めに来てね?」
ボケをあっさり流されるのは辛いなシラミネ……。
「そうですね……こちらが気恥ずかしくなります……」
モノマネは諸刃の刃、異世界に来てまた一つ教訓。
「いやーせっかくの作業中に呼び戻してしまって申し訳ないミラー(仮)くん」
「いえいえ、こちらも丁度休憩に入るところでしたしこちらは助けられてばかりですから」
俺の大嫌いで、超苦手なことの一つである目上の人との会話に臨んでいる俺は現在滞在中の村の村長さんのお話に耳を傾けていた。
「実はこの頃よく魔物が現れていただろう?」
「ああ、えーっと大量発生でしたっけ?」
「そうなんだよミラー(仮)くん! それで君たちのお陰で最小限の被害で済んだがそれでも町の教会からお客さんが来て視察しに来るそうなんだよー」
うげ、何か嫌な予感がする。具体的には接待とかそういうの。
「ミラー(仮)くんにはそのお客さんの接待とか案内を」
両手を着き! 頭をギシギシ言ってる机に思いっきりゴンってなるくらいに着け! 大きな声で!!
「丁重に断らせていただきます!!」
「そんな簡単にいくわけないしょうが」
「ご、ご主人様ぁぁぁ!?」
ぐ、ぐええ……苦しい。断っただけじゃないですかー。それだけで首を決めてくるのはどうかと。ていうか本当に苦しい! 人生二度目かも! 首絞められて意識飛びそうになるの!!
「お、落ち着いてください! レイジーさん、それ以上は本当に貴方の仲間入りになっちゃいます!!」
「あら、なら一緒に堕ちましょう?」
なんてこと言うんだこの堕天使は。命の恩人でも流石に可笑しいだろ。あと、村長の爺なに見て笑ってるんだ。全然ほのぼのじゃないだろ。一回ぶん殴るぞ。
「げほっげほっ……ああ、それでどういった人が来るのでしょうか」
最早、逃れられぬ。そう覚悟を決めた……いや、後ろの堕天使ではあるけどフードでうまく隠してるレイジーの今にも爆発しそうな殺気がやばすぎるだけだ。覚悟を決めさせられたんだ。笑うば笑え、死にたいのならだが……。
「ああ、ラフィ教の方だよ」
その発言を聞いて三人揃って苦虫を噛み潰したような顔をした。特にレイジー。何故かって? 一応、レイジーは元ラフィ教のご本尊である女神さまに使える天使様だったのだが紆余曲折あって堕天。こうして今の堕ちた天使様になったわけだ。
その過程を知ってる俺とシラミネ。そして元関係者であるレイジーはそれを聞いて胃が痛くなった。言い替えるなら元職場の人が現職場に遊びに来た的な解釈をしてくれ。しかもトラブル起こして辞めたとこの。すごくつらい。
「おや、どうしたのかな? そんな辛そうな顔をして。何かあったのかい?」
「い、いえお構いなく……」
「そうかい? それとそのお客さんのことなんだがミラー(仮)くんと同じ位の女の子でね? ヨシミちゃん? と言うらしいんだ。くれぐれも租租が無いようにしてくれるかい?」
「ごめんなさい!! やっぱ無理です!!」
今度は机を割る勢いで、というか机を割って再び天上の世界へアイキャンフライするまえにその場から逃げ去った。やってられるかー!!
「逃がさん」
「ミラー(仮)くん!?」
「ご主人様あぁぁ!?」
三者三様の返答が来たがそんなのはどうだって良い! 何でこの世界へやって来た日に分かれた幼馴染が一緒の世界に、しかも聖職者になんかなってるんすかぁぁぁ!!! 絶対勝ち組じゃん!!