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閑話1 新学期 Part Ⅰ

「なあ、ポロン。新しくできる『魔術科』の受講希望、した?」


「当然でしょ。魔法関連の受講実績や魔法が使えるだけで、どれだけ将来の選択肢が増えると思ってるのよ。お兄ちゃんも魔術科は無理だったけど、魔法科はとってるじゃない。それより早く洗面所譲ってよ!わたしの準備遅れるじゃん!」


 始めまして

 ポロン・キリク・マーベルです

 どこにでもいる、しがない菓子店の猫種獣族の女の子です

 クレヴァリー中央学術院、という王都の学校に通っていて、今年、中等部第二期生に進級しました


 多くの学校は個人が経営していることも多く限られたことしか学べないらしいですが、わたしの通う学校は国が運営してくれているので、学べることも多いし、払う授業料も少なく、成績が評価されれば学費まで免除してくれるとても良い学校です。


 そういうわたしも、実は成績上位者で学費が免除されてます

 ウチはそんなに裕福でもない普通の家庭なので、お兄ちゃんと違ってお家の家計に貢献しているわたしは、いつもえらいってほめてもらえます

 えっへん

 お兄ちゃんは学年が上がれば追いつくことの方が大変って言ってましたが、わたしは頭が良いので大丈夫だと思います


 わたしは洗面所をあきらめて自室にかけこんだ。


「お兄ちゃん、もっと早く起きればいいのに。もー」


 口では文句をたれながら、わたしは手を動かして持ち物を確認した。学校指定のバックを開き、今年用の学用品の中身を確かめる。


「筆、インク、ノート、木札、生徒証……」


 今日は朝礼や時間割や予定表が配られたり、担任の先生やクラスが発表されたりするだけなので、授業はないです。でも、うちの学校は全寮制で、今日までは一時帰宅ができる休暇中だったので、これから使う教本は全部持っていかなければいけません。一応、お家から忘れ物や持ちきれないものを送ってもらうことができるけど、料金を取られたくないのでできるだけ頑張って持っていきます。


 もう制服も着てるし、準備はほとんど終わったかな。お兄ちゃんのせいで髪は整えてないけど。


 わたしは学習机の椅子を引いて、席についた。学用のバックから取り出したのは今年用に買った教本だ。まず読むのは最近発売された『魔術構築式基礎』。


今年も学費免除、成績優秀者をねらっているわたしとしては予習はなにより重要だ。


「特に、魔術学って何をやるかよくわかんないし」


 前に木札にメモした時は理論とか、小難しい内容をやるって書いてあったけど、それって魔法学の座学だよね。


「ルシア先生説明下手だからなあ。カイルが前に言ってた分離したって線がそうかも。ひゃー……」


 ページを開いた時に最初に書かれていたのはこれを読む前に修得をすすめる教科の一覧だった。


「星語、魔法学の基礎、スキル……全部見てたらきりがないなあ」


 この参考書はあの『魔術学基礎』と同じ筆者が書いたものだ。ペンネームがどちらも『夜』となっているからだ。分かりやすいけど内容が多い。しかも、これは星語がある程度わかってないと理解できないものばかりだ。呪文を習ったとき星語の発音も一緒に覚えたけど、単語の読みはあやふやだ。一回星語の参考書を見直さないと痛い目を見るかもしれない。


「そういえば、魔法学で使ってたものと新しく買った魔術学の参考書、魔術学科受講者の必須教本になってる。ひょっとして、魔術学の先生、新しく入ってくるのかな」


 担当学科の先生が自分の書いた参考書を教本にすることはうちの学校ではけっこう多い。この三冊は全部ペンネームが『夜』になってるから、この教本の著者が新しい先生かもしれない。


「ポロン、朝食が出来てるわよ。降りてきなさい!」


「はーい!」


 一階にいるお母さんの声にパタンと教本を閉じるとバックに突っ込んだ。階段をトトッと降りていくと、お肉の焼ける良い匂いがした。




「じゃあお母さん、行ってきます」


「んー、行ってくる」


「次は夏休みだね。しっかり学んできな」


 お店の開店と一緒にわたしとお兄ちゃんは学校へ送り出される。次にお家へ戻るのは夏休みだ。もう慣れちゃったけど、たった数ヶ月とはいえちょっとさみしい。


 笑顔で手を振ると、今日の難関、『前期の学用品一色』が詰め込まれたバックと『生活用品一色』の入ったバックの二つだ。


「ふぐぐぐぐ……」


 持てるギリギリの量を積めてあるので毎回重いのだ。流石に獣族といえどつらいのだ。


「お、兄ちゃ、」


「ばか言うな、お前より多い俺の荷物が見えねーのかよ」


「ちょっとくらい持ってくれたっていいじゃない」


「あきらめろ。恒例行事だ」


 もう慣れたようにお兄ちゃんがそう言うと、友達を見つけたらしく、「じゃあ俺、あいつらのとこ行くから」と言って放れていった。


 もういつものことなので、気を取り直してわたしも友達を探した。


「ポローン、おはよー!」


「おはようポロン」


「ネリーシャ、カイル!おはよう」


 集まってきた他の登校者を見回しながら友達を探していると、さっそく会えた。二人ともわたしの幼馴染みで、同じ"風の音色(エメラルド・ハミング)"寮の生徒だ。寮は一度決まると固定なので、クラスは編入生を除いて変わらない。


「あーあっ、貴族はいいなあ。全部送ってもらえるからほとんど手ぶらじゃない」


 スカスカの学用バックすら従者に持たせている貴族出身の人達を見てネリーシャが文句を言った。


「しかたないですわ。本当に重いですもの」


「うん」


「アローリエ、ユクティーシャ。おひさしぶり」


「おひさしぶりです皆様。おはようございます」


 アローリエが優雅な足取りで挨拶をし、続くユクティーシャもわたし達に「おはよう」と挨拶をした。荷物があまり入っていないバックと後ろの従者を見れば分かる通り、二人は貴族出身のお嬢様だ。

 二人とも他寮生だが、同学年で貴族特有の高慢な態度がないので仲が良い。


「ファイトスとダイライルはもう先に行ってしまったようで、もう着いているようですの」


「相変わらず仲が良いね、あの二人」


 カイルがまるで主従のような関係の二人を思い出して苦笑した。ファイトスは貴族出身でダイライルは工具店の息子で一見接点がないように見えるが、ダイライルがファイトスの真面目で正義感溢れる性格に惚れ込み以来、ファイトスにくっついているようになったのだ。


 今日もファイトスの早起きにダイライルがくっついていったんだろうなあ


 いつものようにアローリエとユクティーシャの従者さんに荷物を少し持ってもらっていたら近くなってきた校門の前で大きな怒鳴り声が聞こえた。


「なんだと!?貴様、このガルディウス・モールノートを愚弄するか!!」


 驚いてそちらを見るとそこには、同学年一の問題児ガルディウスが、顔を真っ赤にしてわたしと同じくらいの女の子に怒鳴っている光景だった。




 これぞお約束。貴族絡みだとこんなのしか思い付かないね。でもシルヴィアちゃんの場合貴族とか関係なくこういうこと頻発しそう。そのうち理由は書こうと思います。


 長くなりそうなので切りました。いつか出てきたポロンちゃんです。猫耳です。毛色は灰銀色の予定です。そのうちそんな描写をだす予定です。


※追記:次投稿は11/22の12:00予約投稿になります。

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