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なにせHPが1なのだ。目にゴミが入っただけでも死んじゃうのだ。





 アリアファンの奇跡から五日後。



 薄い雲の切れ目から西日が降り注ぎ、アリアファン草原を紅紫色に染めていた。夜の到来を告げる暗がりが忍び寄ってくる中、今日も影を絨毯のように引き伸ばしながら旅をする五人の男女があった。


 ――女戦士。勇者。女僧侶。女魔法使い。女カナブンの五人組。


 だが、


 その歩みは緩慢そのもの……まるでおおなめくじが這うような速度で彼らは歩んでいた。


「……ううぅ、今日もまたレェーベ村まで辿りつけなかったよぉ……」


 勇者が肩を落として落胆する。


 まあ無理もない。冒険を開始してから早1年が経つのだが、いまだにアリアファン城から隣村であるレェーベ村まで辿りついたことがなかったのだ。


 すかさず僧侶18歳がフォローを入れる。


「勇者様のせいではありませんわ」彼女は己の胸に手をあてて、


「ああっ、もっと私のおっぱいに勇者様を押し出す力があれば……」


「えっ? い、いや、別に僧侶さんのせいじゃないよ」


 女戦士16歳も口を挟む。


「おれも結構ハト胸だし、勇者の歩く手伝いの方に回ろっか? その方が反発力が増して勇者の負担も減るだろう?」


「いやいやいや、おっぱいの反発性の低さに不満があるんじゃないから!?」


 勇者は少し赤面しながら、「ほら、普通にもっといっぱい歩けるんじゃないかなぁって」


「おいおい勇者~」戦士は呆れ顔で、


「今日はもう200歩も歩いたんだから十分だろう~?」


「そうですわ勇者様。一日に200歩も歩まれる勇者様、とっても素敵でしたわ♪」


「いやいやいや、全然だから!? そんなペースで歩いてちゃ大魔王が寿命で死んじゃうから!?」


 それはそれで平和的解決ですわね。だなー。と和み出す二人。……だめだ。甘やかすことに全力すぎて価値観がおかしくなってる。勇者はそう思ったが、結局彼女たちに従うことにした。


「そ、そうだね。じゃあそろそろ帰ろっか?」


「……りょ……なの……」


 無口魔法使い8歳が魔法の詠唱を始める。街転移魔法――リューラである。街の入り口まで高速移動できるという便利な魔法であり、いつも勇者たちは日が暮れると、アリアファン城へこの魔法で帰還していたのだ。


 魔法使いが街転移魔法(リューラ)を唱えようとしたとき――、


 だが、


 次の瞬間――、






「――――~~~痛っつッッッ!?」






 勇者が突然叫び声を上げる……!


「なっ!?」


「――勇者様っ!?」


「~~な、何かが………目にッッ!」


「……ゆーしゃ……っ」


「……だ、大丈夫……!」勇者はその幼い顔をくしゃっと歪ませながら、


「……た、たぶん、目にゴミが入っただけだと思うから……」


『ピギイィ……!』





『……め、目に……っ!?』『ご、ゴミですって……っ!?』





 パーティに戦慄が走る。



 ――眼球外異物(がんきゅうがいいぶつ)


 それは目の中に異物が入りこむ症状のことである。だが目のゴミといっても決して侮ることは出来ない。角膜は非常に痛覚が発達してるため、異物が付着しただけでも刺すような眼痛を巻き起こし、さらに眼球そのものに傷がつけば、角膜潰瘍などの重い病状に発展する危険性があるのだ。


 当然、HPが1の勇者が耐えられるわけもない症状である。





『――臨戦体勢(ホスピタルフォーメーション)!』





「ちょっ……!? みんな~~っ!?」



 戦士が丁重に勇者を押し倒すと、僧侶が丁寧にそれを受け止め、魔法使いが貞淑に勇者の服を脱がせ始める。


『ピギィィ……!』




 目のゴミVS伝説の勇者たち。ここに世界の命運をかけた緊急救命医療がその幕を上げたのであった……!










 ……えっと、今回短くてごめんなさい。目にゴミが入る話が、今までで一番長くなったので半分に切りました(笑)


 次話は明日投稿します。勇者の最大の宿敵、大魔王ゾー……登場です!





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