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蝋燭  作者: 川本千根
5/21

惚れた。

三上さんって頼りになる


ちょっと興味わいてきた

どういう人なんだろう


この人飲み会とかもあまり出てこない

…でも全く来ないわけではないな


歓迎会や忘年会は出てきてるし

うん、なんかぎりぎり社会人としての付き合いはしている感じ?


よく見るとこの人えらく整った顔してる

薄い唇もこの人の性格に合っている


特に横顔なんかかっこいいじゃん


なんでうちの女の子たちこの人に対してキャーキャー言わないんろう

ああ…

怖いからか



「なに?」

「さっきから」


「あ、すみません」

「三上さんが運転している姿がかっこいいなと思って」


ふう、と三上さんはため息をついた


「すみません、自分ペーパードライバーだもんで…」


「園田さんと出かける時も園田さんが運転するの?」


「はい」


「そう」といったきり三上さんは黙った


悪いなと思ったけど俺は社に戻るまでチラチラ三上さんの横顔を見させてもらった





俺にはあの日以来三上さんが怖い人に見えなくなった


まあ独特の虚無感は相変わらず感じるけど


あのあと三上さんは手際よく所長に事の経緯を話してくれて、所長の決済で動かせる予備費を出してもらって、後は他の工事で出るリベートを回して、それを相手の予算に足して、最初に提案した額で王子電子工業の事務所の改修工事を○○建設に発注することができた


業者を変えるって言っていた王子電子工業の勝間田さんの怒りも収まった



園田係長には所長に話をした後、説明に行った


もし俺がそんなことをしたらどれだけ順番が違うと怒られるかわらない


係長はムスッと話を聞いて、はいご苦労様と行っただけだった

係長もなんとなくこの人が怖いんだ


噂だと三上さん大きなミスをして営業外されたっていうけど…

ミスするかな?この人


誰かの肩代わりをさせられたんじゃないかな

もしくはかばったか


多分園田係長あたりを?

それならさっきの係長の態度が理解できる


頭上がらないんだ

そしてこの人の実力もわかっている


だから俺と一緒に謝りに行かせたんだ


ん、だとしたら三上さんを味方につければ俺、この会社で生きやすくなるんじゃね?


いや、それを別にしてもなんかこの人面白い


よし、飲みに誘ってみるか






「三上さん、今日帰り空いてませんか」

「一緒に飲みませんか?」


「江尻くん、何回断ればあきらめるの」


「外で飲むのは好きじゃないって伝えてあるよな」


「じゃあ、お茶だけでも」


「…」


「江尻、何かあったらもう一度だけ助けてやる」

「だからもうつきまとうな」


え…


「本当ですか?」

「もう一度助けてくれるんですね」


俺はあわてて胸ポケットから手帳とペンを取り出して三上さんに差し出した


「一筆書いてください」


三上さんは冷たい顔をして、もちろん一筆書かずその場を立ち去った




それから二週間後の金曜日の昼休み俺は三上さんのデスクに行って頼みごとをした


「三上さん、この前もう一度助けてくれるって言いましたよね?」

「助けて下さい」


「…早いな」

「なんだ」


「今日本社の女の子達と合コンの予定なんですよ」

「女の子三人と駅前ビルの技師の望月さんと松本さんと俺で」


「ほら、今日松本さん風邪で休んだんじゃないですか」

「だから代わりに三上さん来てもらえませんか」


「もう一度助けるって言ってくれましたよね」


「…」


「ほら、三上さん見た目かっこいいし、三上さん来てくれたらこの営業所にもイケメンいるって噂が流れて次から女の子集めやすくなると思うんですよ」


「…」


「今からじゃ人探すの難しいし」


「研修で仲良くなった本社の不動産部の田口さんけっこう可愛いですよ」

「連れてくる後の二人のレベルはわかりませんけど」


「女同士の可愛いはあてになりませんからね」

「あ、でも新入社員だって言ってましたから、ピチピチしてますよ、きっと」


「あ、合コン初めてですか」

「そんなことないですよね」


「…」


「あ、彼女に遠慮しちゃうタイプですか?」

「っていうか彼女いるんですか」


「…」


「助けてくれるって言いましたよね」


「ここでメンバー揃わなかったら俺信用なくしちゃうんで、本社の女の子から」


「お願いします」

「黙って座っていてくれればいいですから」


うんざりした顔で三上さんが言った


「江尻、今日それに行ったらもう助けない」

「いいな」



「はいっっ」


この人女の子に興味なさそうだし、絶対大勢でワイワイした席嫌いだろうから、ダメもとで頼んだら引き受けてくれた


うれしい

今日は女の子どうでもいいや


三上さんを思いっきり観察できる

ここで切り札のカード使っちゃったけど、まあ、今度何かあったら会社辞めてもいいし


あ〜こんな楽しみな合コン久しぶり

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