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蝋燭  作者: 川本千根
3/21

鈴彦。

鈴彦は中学の同級生だった

たしか中一の夏休み前に転校してきた


見た目かっこよかったし、頭も良かったから本来なら女子にきゃあきゃあ言われてもいいとこなんだけど、鈴彦はそれを許さなかった


女子からも男子からも人気がなかった

いつも一人だった


だからといっていじめの対象になるようなやつでもない


上手く表現できないんだけどなんか怖いというか…


うーん怖いというほど積極的なもんではないかもしれない

むしろ不気味と言ったほうが正しいかな


私はその怖さや不気味さに助けられたことがある


中二の秋、私はバスケ部の先輩に昼休み、学校の技術室の裏に呼び出されて四、五人でどつかれていた


先輩の彼氏の男子バスケ部の部長にちょっかい出したとかって因縁つけられて


ちょっかい出してきたのは向こうだって


私は泣きたくなったけど、悔しいから泣かない泣かないって心の中で呪文を唱えていた


そしたらそこに鈴彦が来た


5時間目目の授業の前に技術室の鍵を明けに来た


鈴彦は無機質な目で私達を見た


先輩たちを非難するでもなく、私に同情するでもなく、何も感じていないような目で


私は私を取り囲む先輩たちより鈴彦の目のほうが怖くなった

先輩たちも体裁悪く感じたのか黙って散って行った


「三上くんありがとう、助かったよ」

って言ったら


「何が?」

と言って技術室の鍵を開け、黒板の横のフックに鍵をかけて私の方をちらりとも見ず渡り廊下を歩いて校舎に戻って行った



私はその日の放課後鈴彦を映画に誘った

当時流行っていた魔法使いが出るやつ


まあ、断られると思ったんだけど、鈴彦はあっさり承諾してくた


自分で誘ったんだけどちょっと驚いた


土曜日私は部活を休んで鈴彦と映画を見に行った

鈴彦はもともと部活に入っていなかった


その帰り、私は鈴彦に自分の複雑な家庭環境を話した


両親が私が二歳、妹が六ヶ月のときに離婚して、それからは入れ替わりたち変わる、母親のボーイフレンドと一緒に暮らしていることや、母親がボーイフレンドの分しかご飯を作らないので、私と妹は近所に住むおばあちゃんちでご飯を食べていることなんかを


鈴彦は黙ってそれを聞いていた


私はそれからも、勉強教えてって図書館に誘ったりおばあちゃんのうちに誘ったりした


おばあちゃんちなんか絶対来ないと思ったんだけど鈴彦は来た

そしておばあちゃんに勧められるままご飯を食べて帰った


三年の春、私は鈴彦に告白した


「三上くん好きです、付き合って」



「?」


「これ以上なにを」


「俺たち付き合っているんじゃないの」


鈴彦はいつもすんなり私を受け入れてくれた







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