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蝋燭  作者: 川本千根
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さよなら。

きみは男の風上にも置けないな


よくあんな号泣している娘をこの寒空に放り出せるね


ああいうときは嘘でも本当でも言い訳をしなければ


ああ、もう会わないって言われて思考が停止してしまったか


おやおや私を睨む気力もないんだね


そんなに震えるくらい辛いなら正直に言えばよかったのに


親が遺した遺産でいつか二人で暮らすことを夢見てマンションを購入しようとしていたこと


あの娘が歩くのを嫌うから駅近を探していたんだよね


親会社への出向を承諾したのもあの娘のせいだよね


目の端にでも姿を映すことを望んだんだよね


君エリートだった父親を嫌って一流企業に就職しなかったのに


バリバリ働く出来る人たちを見ていると父親を思い出すから


一度関わった人間を見捨てられないその性格とかも正直に語ればよかったのに


だからこそ人と関わりたくないんだよね



正直にこの寂しさから救ってほしい、寄りかからせてほしいと嘆願すればあの娘も安心して君を受け入れただろうに


あの娘は重い親の愛を背負って生きてきたんだから君くらいひょいと担いでくれただろうに


特別美人じゃないけれどピンクがかった肌がなんとなく色気を感じさせる可愛い娘だったものね彼女


私も前の娘よりあの娘のほうが好みですよ


ここまでは男としての意見



ここからは人智を超えた存在としての慰め


まあ、くよくよしなさんな


どのみちあの娘とは別れる運命だったから


なんせあの娘の寿命はあと三十分しかないから


なーんて、う


そ…


あれ、飛び出して行ってしまった


あれこれ考える前に体が反応してしまったね


うーん彼は正直に告白できるかね?


はあ、私もおせっかいな


いや、これは意地悪かな


さっき脅されたから


はは、彼も随分肝が冷えただろう


さよなら三上くん


君たちが戻ってくる前に私は消えますよ


人の情事を覗く趣味はないんでね


ああ、とんだ時間の無駄をした


早く次の交渉相手を探さなければ…




おやっ


あなた


私の声が聞こえるんですね?

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