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蝋燭  作者: 川本千根
11/21

NO。

ノーが言えない日本人…


でもここでがんばんなきゃこの前と同じ苦しみが待っている

がんばれ私


左手で持ってたスマホを右に持ち替えて一回深呼吸した


「三上さん、実は私男の人が苦手でして…三上さんと二人っきりだと緊張して調子悪くなっちゃうんで、お宅に伺うのはちょっと」


「ほら、また迷惑かけてしまうと悪いので」


「…」

「自分の部屋だったら」


はあ?


「子豚の部屋に行く」

「自分の部屋だったら調子悪くなってもそのまま寝込めるだろう」


じょっ、冗談じゃない!!


っていうか今、子豚って…

サラッと悪口言った?


って言うかなんで寝込むの前提なの?


せめてスタバ

スタバで会いましょーよー!!





ノーと言えない日本人…


三上さん…私のへやを片付けてくれている


手際よく流しに溜まった洗い物してくれて、部屋中に散らばったペットボトル集めて、散らかった漫画本本棚に戻して…


キャー洗濯物はたたまなくていいです


あっ、ちょっとその美少女フィギア高かったんだから扱いに気をつけて!


最終的に三上さんは掃除機かけてくれて窓まで拭いてくれた

あ、あとパソコンのキーボードに溜まったホコリも掃除してくれた


お母さんが来た時みたいに部屋がきれいになった

いや、お母さん以上だな


「毎週片付けに来ようか?」


!!三上さん、どんだけ子豚好きなんですか


私、この人この散らかった部屋見たら裸足で逃げ出すかとおもってた

きれい好きっぽいもん

ちょっとそれを狙ったんだけど…


なのにこの部屋見ても私のこと嫌いにならないんだ


自分を飾らなくていいんだ


楽かも…


ちょっといいかな


って思ったのが通じちゃった


引き寄せられた

成り行きで私も抱きつく


三上さん、風の音がする

心に空いた穴を吹き抜ける風の音が





まさか鈴彦が彼女を作るとは思わなかった

ずっと一人が楽だって言っていたのに…


一目見て、親に愛されて大切にされてきたのがわかる娘

そういうオーラがあった


私達とは真逆な生い立ちを感じさせる娘


鈴、あの娘のまとう親の愛にやられちゃった?


私達はどこか普通に育って来た人たちに負い目があるよね


神様に与えられなかった親の愛


そんなもんいらないっていきがりたいけど…


人生の前半で親の愛を得られなかったハンデは大きい

社会に出てからつくづく感じる


手を引いてくれる人もなくなんの戦略もなくたった一人で生きてきた


何を決めるのも自分一人


鈴、一人ぼっちが嫌になっちゃった?

あの娘に掴まりたくなっちゃった?


鈴、前に自分はまともな女には相手にされないって言ってたよね

賢い女は俺の背負ってる闇を嫌うって


あの娘が賢くないと思ってる?

鈴の勤める親会社に就職できた娘だよ

あの娘にも賢さ、したたかさはちゃんとあるはず


なめてるといつか鈴が傷つくよ



今でも鈴が好きなのかどうかはわからない

だけど後悔はしている

鈴を手放すんじゃなかった


鈴は裏切りを許さない

二度と彼女に戻れることはないと思う


でも、まあいいや

元カノっていうのが一番安定している


鈴、元カノは一生元カノなんだよ

冷たいこと言ってもあんたは人を見捨てられないからね




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