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蝋燭  作者: 川本千根
10/21

朝。

朝早く絵里さんは部屋を出ていった

お昼から介護の仕事があるらしい


私は顔を洗って絵里さんが買ってきてくれた歯ブラシで歯を磨いた

絵里さんが使った紫色の歯ブラシもコップに立ててある


私が本物の彼女だったら嫌だな

この光景


私は自分が使ったのは持ち帰った


後から手を洗うとき見たら紫の歯ブラシはゴミ箱に捨てられていた


これもまた嫌な感じ





自分の部屋にたどり着いた時は心底ホッとした


オートロックの家賃八万六千円のワンルームマンション

家賃や水道光熱費は親が出してくれている


脱ぎ捨てられた服や、洗ってない食器、部屋干ししたままの洗濯物なんかでぐちゃぐちゃで、親が揃えてくれたおしゃれな家具が台無しだけど、この部屋が落ち着く


月一でお母さんが新幹線に乗ってお掃除に来るからキノコ生えるまでは行かない


三上さんのアパートとはすべてが真逆だ

もう誘われてもあそこには行かない

なんか押し切られちゃうもん

付き合いたくもない


だいたい子会社の人だもの


もういい三上さんのことは忘れよう

会うこともない


あ、お煎餅…

絵里さんに持っていってもらえばよかった

三上さん炭水化物食べないんだから






「三上さん、俺もここで昼食べてもいいですか?」


「だめだ」

「なぜ俺の机で」

「自分の机で食べろ」


「いいじゃないですか」

「三上さんいつもお昼コーヒーだけなんですね」

「なんかハードボイルドでかっこいいっすね」

「んっ、本、なに読んでるんですか?」


「…」


「三上さん、本社の不動産部に出向するって本当ですか」


「…」


「本当だった俺寂しくて死んじゃいます」


「江尻…そういう趣味なのか」


「そうじゃないですよっ」

「俺は三上さんの冷たそうに見えて優しいところが好きなだけです」


「よく恥ずかしげもなくそういうことが言えるな」


「行っちゃうんですか本社」


「…三度目の打診だから断われない」


ショック

噂、本当だったんだ


「じゃあ月に一度プライベートで俺と会って下さい」


「なんだ、それ」

「悪いがそういう趣味はない」


「いやっそういう意味じゃないですよっ」


俺はただ人として三上さんが好きなだけで



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