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蝋燭  作者: 川本千根
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ある天才外科医の告白

私は罪を犯しました


私は天才的な外科医でした


私は超人的な技術で多くの人たちの命を救ってきました


しかしその中に救ってはいけない人物がいました

彼はあの時の死ななければならなかったのです


手術したのが私ではなければ彼は与えられていた寿命の通りあの時死んでいたでしょう


私の技は侵してはいけない神の領域を侵してしまったのです


あの時、私が彼の命を救わなければ彼も大量殺人鬼にならずに済んだし、彼の犠牲者になって命を落とす者達も出なかった


私には彼の寿命を伸ばしてしまった罪があるのです


私は医師として、栄光と賞賛を浴びたまま人生の幕を閉じました


しかし私のその罪を背負って私の孫は短命の宿命を持って生まれてきました


あの子はたった五年分のロウソクしか与えられずこの世に生まれて来たのです


私は私の代わりに罪を背負った孫の寿命を伸ばすため、命のロウソクを譲ってもらおうと人々に懇願して回っているのです





「悪いな」


「俺は今急いでいる」


「あんたの話を聞いている暇はない」


「後輩のミスを一緒に謝りに取引先に行くため、スーツに着替えに来た」


「俺はその仕事に関わっていないが、そいつの上司が逃げたので代わりに行くことになった」


「親父さんが幽霊か死神かは知らないが、勝手に部屋に入って来られるのは不愉快だ」


「俺がこの部屋に戻ってくるまでに消えてくれ」







「三上さん、今日はありがとうございました」


「とても自分一人では事の経緯を王子電子工業の勝間田さんに、あんな理路整然と説明出来なかったです」


「解決策の提案も」


「それにしても、腹立つ、園田係長」

「係長の指示で工事の発注したのに、全部責任俺に押し付けて」


「それどころか何の関係もない三上さんに謝りに行かせるなんて」



「江尻くん、席、誰の隣」


「あ、松本さんです」


「半年くらい前同じようなことがあったよな」

「松本さんが本社の指示書が来る前に契約してしまって」


「いや、あの時も今回も、本社の営業がぐずぐずしていてもう工事の発注しないと納期が間に合わないからって係長が…」「本社の指示は出ているから契約していいって」


「それで後から出た本社の指示書と業者との契約内容に齟齬がでて、結局松本さん、始末書いたよな」


「あの時も園田さん逃げただろう」

「それを見ていてなぜ江尻くんも同じことをする」


「でも…」


あ…にらまれた

これ以上愚痴るなってことだな


「江尻くん、今度からは園田さんに指示されても必ず本社の営業に確認しな」

「園田さんに気づかれないように」


「自分で本社の言質をとってから事を進めな」

「必ずメールでな」


「はい」



三上さんはうちの支店の営業から営業事務に移動した人だ


年は俺の四こ上


俺は入社二年目だからこの人は六年目か


うちはビルの施設を管理する会社だ

ほとんどは親会社の持つビルだけど、その他にも工事や大手ショッピングセンターの管理も手がけてる


前から思ってたんだけど、この人なんでうちの会社にいるんだろう


たしか結構いい大学出てたよな

愛想はないけどできる人だと思う

もっといいとこ就職できたんじゃないの?


誰ともつるまず一人でいるし

多分この会社ではこの人のレベルに合う人いないだろう


俺は就活頑張らなかったことをすっごく後悔してる

子会社っていうのはどうしても親会社に振り回される


本社本社って言ってるのは親会社のどだ


正直俺、この人なんとなく怖かったんだよね


なんていうのかな、物静かなんだけど、得体がしれないというか…


いつも気分で怒鳴り散らす王子電子工業の勝間田さんが今日はおとなしく話聞いてくれたもんな


ありえないよ…


やっぱりなんか感じるものがあったんじゃないかな

三上さんに

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