狂気になって狂喜する
むしゃくしゃしてつい…
息抜きに適当に書いたので荒々しいですが読んでいただけたら幸いです。
私は平凡だ。
言うまでもなく。平凡だ。
なんでって?
容姿、勉強、スポーツ。
何もかも可もなく不可もなく。
それに、今まで生きてきた16年間、何も波乱万丈な出来事なんて起こる事はなく。
だから。
だからさ。
今目の前で起こっている事態がよく分かっていない。現状。
「亜夢ちゃん、起きて、朝だよ。」
朝、優しく体を揺すられ、ゆっくりと目を覚ます。
その時に、モデル以上に顔の整った美少年が一人。
その少年は、私の目覚めに気付き、体を揺するのをやめる。
「アムちゃん、おはよう。よく眠れた?」
少年はふわりと笑い、私の頬に優しく右手を添える。
これだけ聞いたらまるで少女漫画の一部のようだ。
夢みる乙女。なんつってなんつって。
「………………貴様…何故私の寝室に出現している…。」
まず、寝起きの第一声が、当たり前だがこいつに対するもの。
それに対してのこの馬鹿の解答。
「アムちゃんは寝起きも可愛いね。ほら、学校行く用意をしよう?」
こいつは私を舐めているのか。
私は何故いるのかを問うた筈だが?
「或…私は以前、貴様に部屋の無断出入りは禁じたはずだが?」
「あれ、アムちゃん、着替えないの?俺が手伝ってあげようk…ふぐぅ…!!」
「貴様はそれ以上無駄話を続ける気か?」
「…ぃぇ…。」
私の話をことごとく無視を貫いた馬鹿の鳩尾に私の正義の鉄槌が唸った。
「ハァ…起こしてくれた事には礼を言う。問い詰めるのはその後だ。」
取りあえずベッドから降りてタンスに向かう。
その時、何やら後ろから熱い視線を感じた。
「…アル、いつまでそこにいる気だ。」
「え?アムちゃんが支度を終えるまで。」
私の問いに、当然の様な態度で答える馬鹿。
「貴様は本当に死にたいようだな…。」
「あ、う嘘!!嘘だよアムちゃん!!ちゃんと部屋の外で待ってる!!」
「待たんでいい先に行け今日は二度と現れるな!!」
「あっ…!!」
朝から機嫌悪くされたのでとりあえず蹴り出しておく。
何故あいつは、いや、どうやってあいつは私の部屋に入ったんだ。
窓も、部屋の鍵もきちんと閉めていたのに…。
…
いや、考えるのはやめよう。
想像したくない事を想像してしまったので一度忘れる。
全ては奴を問い詰めれば済む話。
もしかしたら、私が鍵を閉め忘れていたのかもしれないしな。
―――――…―――――
「え?なんでって、アムちゃんのベッドの下にいたんだもん。そりゃ、アムちゃんを起こせて当たり前でしょ?」
「…悪霊退散!!!」
「ぉぐぅ!!」
支度を終え、文字通り部屋の外で体育座りしていたアルを蹴り飛ばし、学校へ向かう。
その途中、どうやって私の部屋に侵入したのか聞いたら、前文の様な回答が返ってきたのだ。
「貴様…不法侵入か?不法侵入なのか??頭湧いてんじゃねぇのか???」
「怒ったアムちゃんもかわいいn「黙れ」…はい。」
蹴り飛ばしたい衝動に駆られたが、今現在登校中。
当然、他の学生もちらほらいる訳で。
今ここでアルをフルボッコにしたら変なあだ名とかつけられそうだし止めておく。
「アムちゃんは小さい時から可愛いよね。笑った時が特に!!あ、アムちゃん!笑って!!今すぐ!!」
「…。」
「アムちゃん無視!!?酷い!!」
そんなアムちゃんも可愛い!とかなんとか言っているキチガイは放っておくのが一番いい。
何故私にはこんなキチガイな幼馴染がいるんだ。
小さい時は良かった。
アムちゃん、アムちゃんって弟の様についてきていて。
可愛いアルくんだった。
可愛い弟、アルくんだった。
なのに…何故…
何処で間違えた。どうしてこうなった。
前々から思っていたがやはり美形に育った。
まるで猫の様な形の目に、筋の通った鼻。
小顔で若干癖の入った髪。
そして色白。
整形でもしてんじゃねぇのかこいつ。んな訳ないか。毎日見てるもん。
「アル、今日私は少し帰るのが遅くなる。だから先に―――…」
「え!!?なんで!!?いやだ!待ってる!!アムちゃんと帰れないと俺、死んじゃう!!」
「お前は兎か。」
まさか、ここまで否定されるとは思わなかった。
…だが、困ったな。こいつがいると色々面倒だ。
「アル、あまりしつこいと、嫌われるぞ?」
「え!!!?」
何故そんなに驚く。
「アムちゃん…邪魔しないから…教室で待ってるから…だから…」
何故か涙目のアル。
どうしてそこまで一緒に帰るのにこだわるのか。
「…ハァ…分かった。分かったから泣かないで。」
まるで私が悪いみたいだ。
しかし、アルは本当にちゃんと待っていられるのか?
そこが心配だ…。
実は昨日、机の中に一通の手紙が入っていた。
内容はこういうものだった。
『望月亜夢さんへ
入学当初から貴女の事をずっと見ていました。
16:30に校舎裏で待っています。
いつまでも。
相沢智也』
第二のストーカーだろうか。
もうやだ。狂気じみている。
取りあえず、「ストーカーはもう辞めて下さいお願いします」とでも言えば辞めてくれるかな。
本当、どうかしてるぜ。
―――――…―――――
時刻は16:30。
場所は校舎裏。
私は指定された場所にいた。
実は先程までアルに
「ねぇ!!やっぱり俺も行っていい!!?寂しい!!決めた!俺、アムちゃんについて行くね!!」
とかほざかれてKOを取ってきた所だ。
あの馬鹿がいたら何をしでかすか分からない。
だから暫くは眠っていてもらおうという寸法だ。
「あ、望月さん…。」
お、来たか。
現れたのは、割と整った顔立ちの好青年といった感じか。
アルとは違って若干たれ目だな。
「この手紙、貴方が?」
私は外面の方がまだ良い。
面識ない相手だから、言葉遣いには気を付ける。
「うん。良かった、来てくれて。正直、来てくれないかと思ってたよ。」
「相当な事を書かれていなければちゃんと行くよ。」
「はは、そうだよね。」
まぁまぁ穏やかな会話だろうか。
久々のまともな会話に少し感動を覚える。
「望月さん、えと…その、返事は…」
「返事?」
何を返事すれと?
「見ていました」に対する「ストーカー行為は犯罪です」とでも言えばよいのだろうか?
「俺…実は…入学式の頃からずっと望月さんの事が好きで…その…ずっと………にしたいと思ってて…」
んん?これはもしや人生初の告白か?
「だから…その…」
なるほど…「見ていた」はストーカーではなく好意だったのか。
私は、ストーカーでなければぶっちゃけ…
「俺のペットにならない?」
…
……
………は?
今なんと???
「つぶらな瞳に少し長めのショートヘア、158cmの身長に兎耳が実に似合いそうな顔立ち。
今迄八積或のせいで君に近づくことすら出来なかったけれど今は違う。
望月さん…いや、アム。さぁおいで。存分に可愛がってあげる。」
なんだ…なんだこれは。
全身にゾワゾワと鳥肌が立つ。
気持ち悪い。異常だ。こいつ。
ジリジリと近づいてくる。
怖い。
アルとは違う。
あいつも気持ち悪いけれど、なんか違う。
あ、そうか。アルの場合は慣れか。
なんかやだな。
「アム?どうしたの?どうして飼い主の僕から逃げるの??」
「貴方、いつから私の飼い主になったの。」
「いつって…たった今だよ可愛い僕のアム。」
…なんか段々腹立ってきた。
結局はこいつもアルと似たようなものか。
怖がった自分がバカみたいだ。
「………ぶな。」
「え?」
もう、余所行きの顔…しなくていいか。
「気安く、私の名前を呼ぶな愚図が。反吐が出る。」
あのアルですら私の事をちゃん付けで呼んでいるというのに。
「別に親しくもない貴様にペット扱いなど…心外だ。」
気に入らない。
狂気じみた目しやがって。
「貴様より…アルの方が何十倍、いや、何千倍もましだ。」
「え、本当?アムちゃん。」
…ん?
「やっぱり心配だから追いかけてきて正解だったよ。こんなゴミに誑かされる所だったなんて想像したくない。」
「なっ…八積!?」
「…貴様、いつ目覚めた。」
「アムちゃんこんな時でも可愛いなんて、俺に襲ってほしいの?」
ダメだこいつ…話にならん。
「あんた確か…相沢だっけ?気持ち悪い顔がもっと酷い事になってるよ。」
私に向けたデレデレした気持ち悪い顔を、相沢には狂気じみた顔を見せる。
「ねぇ、その子に手を出そうとしてるの?ペットって何?アムちゃんは人間だよ?
その手は何?アムちゃんを汚そうとしているの?
その顔は何?アムちゃんをどういう風に見ているの?
その呼び方は何?俺ですらアムちゃんの事呼び捨てで呼んだ事ないのに。
ねぇ、どういうつもり?俺のアムちゃんどうするつもり?
アムちゃんから離れろよ。でないと、俺、邪魔なあんたを壊さなきゃいけなくなる。」
あーあーあ。
だからやだったんだ。
面倒くさい。
「お…俺は…この子が欲しいんだ!!幼馴染だからっていい気になるなよ!!」
相沢が必死に叫んでる。
でも、威勢は良いが顔、強張っているぞ?
「早く離れろよ…○すよ?」
普段のアルからは想像できないほどの凶悪じみた笑顔がこぼれる。
危ない。人様に対して言っちゃいけない言葉だから自主規制入れておいて良かった。
相沢は、へたりとその場に座り込んだ。
その隙に、アルは私を引き連れて、その場を離れた。
「アル。」
「…。」
「怒ってるのか?」
「…違う。」
「じゃあなんでしゃべらない?」
「…。」
さっきからこれだ。
一体なんだというのだ。
気が付いたら、使われていない空き教室についていた。
当たり前だが中は誰もいない。
放課後だし、少し寂しく感じる。
教室のドアを閉めて、しばらくしてから、アルが口を開く。
「俺…。」
お?なんかしゃべんのか?
「俺!!俺だってまだアムちゃんの事呼び捨てにしてないのに!!あいつ!!ムカつく!!」
「…。」
若干心配した私がバカだった。
「アムちゃん!!あいつに何もされてない!?匂いとか嗅がれてない!!?」
「何処にそんな変態がいる馬鹿め。」
それでも尚、アルはズイズイと距離を詰める。
「アムちゃんアムちゃん。俺だけのアムちゃん…好きだよ。大好き…。
俺を見て、俺だけを…。可愛いアムちゃん…。スゥ…ハァ…あぁ、良い匂い…。
可愛い可愛い。食べちゃいたい。アムちゃんアムちゃんアムちゃんアムちゃん…。」
「ぎゃあああああああ!!!キモい!!!気持ち悪い!!!ああああああああああ!!!!!」
男女の力の差が災いし、振りほどけない。
容赦なく抱きしめてくるからやばい。
ストーカーが本格化した。
もうだめだ。手におえない。
「先生!!先生ぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!お母さぁぁぁぁぁん!!!!誰でもいいから助け…助けてぇぇぇぇ!!!!!」
「アムちゃんアムちゃん…スゥ…ハァ…スゥ…ハァ…クンクン…スゥ…ハァ…あぁぁぁ、かわいいかわいいかわいいかわいい…アムちゃんアムちゃんアムちゃんアムちゃん…prprprprprprprprprprprprprprpr…」
「あああああああああああああああああああああああ!!!!!!!やめろ!!離せ!!舐めるなキモい!!!ああああああああああ!!!!!ああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!先生!!先生ぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」
私の悲鳴も虚しく、誰もいない廊下に響き渡った。
やっぱりこいつは変態だ。
登場人物
望月亜夢
八積或
相沢智也