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第三話 ギルド結成! 円環のオフィウクス

 無事に合流を果たした俺達三人は、落ち付ける場所を求めてとりあえず町の外へ。

 スタート地点である『虹の都・アッシュ』は、とにかく人が多すぎる。アッシュを出て少し北に移動したところに大きな樹があったので、俺達はその木陰で一息ついた。


「へぇ~……五味渕君のキャラ、なかなかアレね」

「だろ? ちょっとロングコートっぽい感じでオシャレだよな。ブレスを選んだのって、実は見た目も考慮しての事なんだ」

「どういう事?」


 頭に疑問符を浮かべる千里に説明するため、俺は昇を指差す。


「昇を見てみろ。初期装備から俺とは少し方向性が違うだろ?」


 昇のクラスはウォリアー、コーリングは『マルス』。分かり易く言えば『重戦士』だ。


「マルスは鎧でガチガチに固めていくタイプだろうな。最終的には相当厳つい感じになるだろう。その点ブレスは魔法剣士ってのもあって、かなりスタイリッシュな感じになりそうな予感」

「なるほど。僕はそこまで深く考えずにマルスにしちゃったな。力持ちっぽいコーリングだから色々便利かなって思って」

「いや、マルスも悪くないよ。鎧には鎧のカッコ良さがあるだろうし」


 そうフォローしてやると、昇は嬉しそうに白い歯を見せた。


「ねぇねぇ、私のキャラもなかなかアレじゃない?」

「千里はメイジ、コーリングは『メティス』だな。いかにも魔法使いって感じでいいと思うぞ」

「千里ちゃん可愛いよ」

「ありがと。でも他に気付く事はないかしら?」


 そう言われて、もう一度千里に目を向ける。すると俺は、頭にかぶったとんがり帽子のブリムの上でピクピクする物体に気付いた。

 それは……ネコ耳だった。


「おおっ! お前種族変えたのか!」

「そうよ。『フェル』っていう種族なの。いいでしょ?」

「いいなぁ……男の僕がケモ耳生やしてもキモ耳になっちゃうだけだろうし、女性アバターは羨ましいよ」

「ん~、男でも昇のビジュアルなら結構似合うんじゃないか?」

「ちょっとそこ! いきなりアレな空気出さないでくれる?」


 な、何だよアレな空気って。まぁそんな事より。


「昇、その脚はちゃんと自分の脚なんだよな?」

「そうっ! そうなんだよ! 昔と違って義足もかなり進歩したって言われてるけど、やっぱり自分の脚とは思えなくてさ。でも、この脚はすごいんだ。本当に自分の脚みたいに動く。ちょっと待って、今見せるよ」


 そう言って昇はベルトをかちゃかちゃと鳴らして外し、ズボンをずり下ろそうとする。

 おいおい、本物の脚かどうかズボンを脱いで確かめるつもりか?


「だ、ダメよダメダメ! 春日部君、ちょっと! ……って、アレ?」


 ダメと言いつつ指の隙間からストリップショーを覗く準備をしていた千里だが、肝心の昇は動きを止めてしまった。


「ど、どうしたの春日部君? 脱ぐなら早くして」

「催促してんじゃねーよ。で、どうした昇?」

「いや、なんか頭の中にメッセージが……人前での脱衣は禁止行為だって。体もこれ以上動かない」


 なんと……このゲームにはそんな制限が。なら、ちょっと試しておきたい事が二つ。


「千里、ちょっといいか?」


 俺はそう言いながら、千里のスカートをめくり上げようと手を動かした。


「何すんのよ、このっ……ぅ……?」


 スカートを指で摘んで動きを止める俺。そしてその俺を殴ろうとして動きを止める千里。


「なるほどね。このゲームはフルダイブ型のVRゲームだけど、何でもできるってワケじゃなさそうだな」

「痴漢行為や暴力行為は、ゲームシステムによってできないようにされてるってことね」


 できる事とできない事は、きっと他にもたくさんあるだろう。それを見つけていくのも楽しいかもな。


「さーてと! じゃ、これからどうしますかねぇ。RPGだし、ひとまずレベル上げって感じか?」


 連続プレイ時間は六時間と制限されているゲームだ。あまりダラダラしているのは勿体ない。


「あ、はいはーい! 私アレやりたーい!」


 右手を上げて飛び跳ねる千里に、俺と昇は目を向ける。


「料理の練習! VR技術って、結局そういう事をするために生まれたものじゃない?」

「料理か……ちょっと待ってろ」


 俺は目の前の空間にスキルメニューを呼び出す。料理っていったら、共通スキルか生産スキルだよな……。


「あった。共通スキルだ」

「スキルを取らないと料理できないんだ?」

「『UEO』はあくまでもRPGという枠組みだから、できる行為にはレベルや取得スキルによる制限がかかっている……と考えるのが普通だ」


 へぇ~、と昇と千里が声を揃えて反応した。


「料理スキルはレベル3にならないと取得できないっぽいな。というか、料理スキルに限らず共通スキルは大体レベル3にならないと覚えられないみたいだ」

「ならレベル上げだね。3くらいすぐ上がるよ」


 それから俺達は、RPGでおなじみの最弱モンスター“スライム”を20分くらい狩りレベル2に。

 その後、芋虫タイプのモンスター“キャタピラー”に移行しようと思ったが、芋虫は苦手だという昇の意見を受けてそのままスライム狩りを続け、30分後。


「ほい、これでレベル3だな」


 レベル3までに約一時間。ペースとしては悪くないような……序盤にしては長かったような……。

 でもそこはVRの強みだよな。レベル上げを退屈な作業と感じる事はなく、一種のスポーツ感覚で楽しめた。


「お、何か説明が」


 頭の中に「ピコンッ!」という音が響く。メニューを開いてシステムから届いたメッセージを見ると、そこには面白そうな事が書いてあった。


「ギルドが作れるようになったって! 五味渕君、ギルドってアレでしょ? チームみたいなヤツ」

「そうそう、ネトゲ用語でギルドといえばそんな感じだ。どうする? 作ってみるか?」

「面白そうだね! でも僕あんまり詳しくないから……勇君に全部お任せするよ」


 その意見には千里も同意らしく、ギルドマスターは一瞬で俺に決まった。

 ギルド設立に必要なアイテムや費用はなく、名前さえ決めればオーケーというお手軽仕様だ。ギルド名は『円環のオフィウクス』。即興で考えたにしてはいい名前かも。


「よし、作れたぞ。ずいぶんお手軽だなぁ……まぁいいや。早速二人をギルドに誘ってみるよ」

「はーい」


 ギルドに関する説明文に目を通してみると、そこにはまたもや興味をそそる一文が。

 ギルドにはロックされている様々な追加機能があり、戦闘などで溜めたギルドポイントを使ってそれらをアンロックできるらしいのだ。

 特に気になったのは『拠点作成』という項目。ギルドメンバーだけが入れる家を建てられるそうな。

 土地は? とか色々疑問もあるけども、なんか無性に気になってしまうぞ。


「なぁ二人とも。ちょっと拠点っていうのを作ってみてもいいか? ギルド設立時のボーナスポイントを全部つぎ込む形になっちゃうんだけど」

「いいんじゃない? ボーナスポイントも拠点作成のために運営側が用意してくれたものって感じだし」

「勇君が全部決めていいよ。僕はそれに従うから」


 ……というようなやり取りを経て、俺は拠点作成を実行するのであった。

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