序章 レベルカンスト99 そして伝説へ…
ここから番外編です。
「グルゥオオォォッ!」
獰猛な雄叫びを上げ、黄金色の前脚を振り下ろしてくる巨大な獅子。
いや、正確には獅子ではない。獅子のようなドラゴン、ドラゴンのような山羊、山羊のような獅子である。
名を“キマイラ”。
獅子の頭と前脚、竜の頭と翼、山羊の頭と後ろ脚、ついでに大蛇の尻尾を持つレベル95のモンスターだ。
「遅いんだよ!」
俺は獅子の顔面に蹴りを入れつつ飛び上がり、化け物の背から生える竜翼を斬り落とす。
目にも留まらぬ二連斬。空中で体勢を整え、着地も綺麗に決まった。
「おっと」
着地の隙に狙いを定め、大蛇の形をした尻尾が牙を剥き出しにして真っ直ぐ伸びてくる。
俺は咄嗟に左へ飛び、地面に手を突いて側転でそれを回避。脇の下を大蛇がかすめていく。
「はっ!」
無防備に伸びきった蛇の首に、我が愛刀【極識】を振り上げる。側転の勢いを乗せて振り上げた刃は大地ごと蛇を切り裂き、
「こいつで、フィニッシュ!」
怯んだキマイラに高速でステップイン。すれ違いざま、必殺の袈裟斬りを叩き込んでやった。
よし、これで……。
『全プレイヤーにお知らせします』
頭の中に響く女性の声。システムボイスを担当する、エクレア姫の声だ。
『キャラクターネーム“ゆうた”さんがレベルキャップに到達しました。ゆうたさんが所属するギルド『円環のオフィウクス』にはギルドポイント1000000ptを進呈します』
「よっしゃあぁぁぁーーっ! 全プレイヤー中最速のレベルカンスト、達っ成っ!」
これでレベル99! ギルドポイント百万! どうだ、やってやったぜ!
でも、こんな風に全体アナウンスされるとは思ってなかったな。ちょっと恥ずかしいかも……。
「さぁて、アッシュに戻るとしますかね」
最寄りの影見の氷輪から、ラミュロス王国の首都・アッシュへと転移する。
転移した先の広場で待っていたのは、
「五味渕君!」
「勇君!」
我がギルド『円環のオフィウクス』のメンバー二人と、
「すげぇ、こいつがゆうたかよ!」
「コーリング『ブレス』!? マジかよ、ぼっち専用ゴミ職が最速カンストしたのか!?」
「おめでとうございますっ! スゴイですね!」
広場を埋め尽くす数えきれない冒険者達だった。
「いえーいっ、ありがとうみんな! 百万ポイントは大事に使わせてもらいます!」
最速カンストプレイヤーとしてゲーム内で一躍有名になった俺は、情報サイトでも伝説のプレイヤーとして取り上げられた。
そして悲願を成就した以上、ケチな隠し事もここまでだ。俺はついに『匂い誘引法』を情報サイトで公開。
その意外なほど簡単な超効率レベリング方法は、瞬く間に全プレイヤーが知るところとなるのであった。