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俺、ペガサスになります

(それで、モードペガサスってどうやって変身するんですか)

(プリンセスパフュームにドレスアップキーをセットして、プリキュアプリンセスエンゲージと叫ぶのじゃ)

(だから、それ絶対違いますよね)

 それで変身するお覚悟はよろしくないですよ。


(冗談じゃ。まずは馬を唱えよ)

(またですか)

(つべこべ言わずに唱えろクソ)

(なんでまた暴言になってるんですか)

 逆らっても仕方ないので、俺は素直に「馬」を連呼した。ユニコーンと同じく百八回唱えればモードチェンジの準備が整うらしい。幸い、雨音に俺の声がかき消され、玉ちゃんには妙な細工をしていることは気づかれていないようだ。

「さて、そろそろ窒息する頃かしらね」

 悠長に俺たちがくたばるのを待っている。この性悪狐女め。


(馬を唱え終ったらこう叫ぶのじゃ)

 雨で視界不良の中、馬神様から教えてもらったキーワードを頭に入れ、俺は大声で叫んだ。


「天翔昇華、ダバダバダーッ」


 すると、俺の全身を光が包んだ。それとともに、俺の体が軽くなっていく。急気にダイエットしたみたいに、余分な肉が一気にそぎ落とされている気分だ。そのまま天に昇っていきそうな。いや、死にそうってわけじゃないぞ。

 そして、背中がむず痒くなったと思いきや、バサッという羽音とともに、巨大な翼が出現した。全身の毛色も白色に変わり、ユニコーンと比べると全体的にシャープな体型となった。


 そう、これこそ俺の新形態、モードペガサスだ。


 見た目だけは申し分ない。モードユニコーンも見た目だけはかっこよかったし。でも、問題なのは持っている能力だ。とりあえず、ステータスを確認してみよう。

(馬神様、ステータスお願いします)

(君は宇宙を感じたことがあるか)

(聖〇士星矢ですね。見てると思いましたよ)

 段々と馬神様が見ているアニメの傾向が分かるようになった。いらない成長だ。


バーバーババ・バーババ・ババババ・バババリアン(以下略) モードペガサス 6800バカ


 よし、バカは素直に急上昇しているな。それに、さりげなくモードユニコーンよりも高い数値だ。まあ、海王帝邪神の弾丸は邪神の弾丸に退化してたけど。さすがにペガサスでは尻からウニは飛ばせないみたいだ。この技は玉ちゃんには効果がなかったから、特に支障はない。


「いつの間にかおババ様が新しい姿になってますわ」

「それはペガサスかしら。その翼でこの雨をどうにかするのね」

「おいしそう」

 俺もまた、この翼で透明な雲を取っ払おうと思っていたところだ。当然、空を飛べるはずだから、雲を蹴飛ばすぐらい容易なはず。見えなかろうと、俺の蹴りをぶちかませばイチコロだ。

 あと、今更ながらツッコミますけど、マン・ドラ子は場違いすぎる発言していたよな。力が増した分、養分も増えたってそんなことがあってたまるか。


 とりあえず、翼が生えたからにはさっそくこれを有効活用させてもらおう。空なんか飛んだことないから分からんが、これで羽ばたけば浮上するはず。でも、どうやって羽ばたかせるんだ。人間だった頃にも馬である頃には存在しない器官だから使い方が不明ってのが痛い。

 背中に力を入れてみると、わずかながら翼が動いた。おや、意外とすんなりいけそうだぞ。更に背中に力を入れると、激しく翼がはためき、少しずつではあるが俺の体が浮かび上がった。おお、飛んでる、飛んでるぞ、俺。よし、このまま一気に……。


 雲まで飛んでいこうとしたが、すぐに低下して着地してしまう。変わらず翼を動かしているのに、全然高度があがらないのだ。あれれぇ、おっかしいぞぉ~。

 一生懸命羽ばたいているが、それ以上飛べる気配がない。ちょっと、どうして飛べないんですか。

(そりゃ、その羽根はおもちゃみたいなもんだからな。飛べるわけないじゃろ)

(おいおい、飾りじゃないのよ翼は)

(いや、単なる飾りじゃ)

 ユニコーンの角がスナック菓子だったから嫌な予感はしていたけど、やはり蛇足部位だったのね。しかも、本当にただの飾りっぽい。


(じゃあ、このままじゃ空飛べないじゃん)

(いや、飛べるぞ)

(翼が使えないのにどうやって飛ぶんですか)

(人の体には未知の力が溢れている。鍛えれば鍛えるほど、それは無限の力を発揮する)

 いきなり何を言ってるんだ、このバカは。

(要するに、気の力を使って浮上するんじゃ。ほれ、惑星ベジータの戦闘民族もそうしとるじゃろ)

(それって、わざわざペガサスにならなくてもいいですよね)

 気力で空中浮遊しろっていうなら、幾年も修行する必要がある。こりゃ、空を飛ぶのは諦めた方がいいかもしれない。


 それならば、別の手段で雲を追い払うとしよう。有効な技があればいいのだが。そういえば、さっきステータスを覗いた時に見知らぬ技があったな。


不可解な鼻息アンビリバブル・スノース


 奇跡の鼻息の代わりにこんなのが追加されていたんだが、こりゃ一体どんな技なのだろうか。

(その技に気が付いたか。それは、奇跡の鼻息の上位互換。鼻からありえないものを出せる技じゃ)

(今までも散々あり得ないものを出してきましたよね)

(それ以上にありえないのじゃ。実は、奇跡の鼻息で出せるものには制限があり、お前さんの鼻の穴から出せるものしか出せないのじゃ)

 そんな制限初めて知ったぞ。でも、思い返してみれば、俺が今まで出してきたものはその条件に当てはまる。液体や気体はまだしも、固体だと、さくらんぼやサワガニのように、かなり小型のものばかりだ。うん、思い返してみると、俺ってとんでもないものばかり出してきたんだな。


 それよりも更にあり得ないものを出せるとすると、どうなることやら。でも、この技に頼るしか、現状を打破する手段はない。そうなればやるしかないだろ。


「不可解な鼻息アンビリバブル・スノース


 俺は、いつものように大きく息を吸って、それを一気に吐き出した。すると、俺の鼻の穴がはちきれんばかりに広がっていく。とんでもなく大きな鼻くそが詰まっているかのようだ。指でほじくり出したいけど、残念ながら馬には蹄しかないんだよね。

 どうにか懸命に鼻息を吹き出し、ようやく根詰まりしている謎の物体を放出した。それは、俺の鼻の中にあったとは信じがたい代物だった。

 小型のラジコンというか、パソコンのマウスのような素体に、四対のプロペラがついている。全体的に真っ黒のそれは、俺の目の前で滞空しながら羽音を響かす。


(馬神様、俺、何を生み出したんですか)

(あれは無人航空機じゃな)

(なぁにそれぇ)

(無人航空機説明してね)

(ちょっと待て、ちょっと待て、馬神様。無人航空機ってなんですの。説明してねと言われましても、意味分からんからできません)

 って、何をやらせんだよ。つい乗ってしまったよ。


(そうじゃの。ドローンって言えば分かるかの)

(ドローンって、これまたタイムリーなもんが出てきたな)

 あれだろ。遠隔操作できるラジコンヘリみたいなやつ。こんなの出したところで、リモコンがないから使えないような。

(大丈夫じゃ。そのドローンはお前さんのオーラパワーで操作できるぞい)

(すげえな、イミテーション)

 ぶっちゃけ半信半疑だったが、俺は目を閉じて、ドローンに浮上するように命令した。


 すると、俺の視界が切り替わり、アドマイヤたちの頭のてっぺんが見えた。かなり変な気分だ。俺は地面にいるにも関わらず、視線は明らかにそれよりもはるか上空にあるのだ。馬神様の話からすると、俺の視界は今ドローンと共有され、空中浮遊している気分になっているのだろう。いや、本当にすごいな、オーラパワー。


 ドローンと視覚を共有したまま、俺は更に浮上するように命令する。それに従い、ドローンは上昇を続け、やがて柔らかい物体にぶつかって停止した。目には見えないけれども、何かしらの物体が上空に存在しているようだ。これが玉ちゃんの言っていた透明な雲ってわけだろう。

「いいぞ、ドローン。そのままその雲を捕まえてどっかに放り投げろ」

 やっていることがポ〇モンバトルと変わらない気もするが、ドローンは俺の命令に従い、ボディの下部からクレーンのようなユニットを出した。それで透明な雲を挟むと、玉ちゃんの方へ飛んでいく。それとともに、俺たちを襲っていた雨も次第に止んでいくのであった。


「やっと雨が上がりましたわ」

「ああ、早く着替えたい」

「植物には水が必要。でも、やりすぎは毒」

 ドローンのおかげで、雨をやりすごすことができた。

「ええい、なんですの、この雨は。さっさとやみなさい」

 代わりに、玉ちゃんがゲリラ豪雨の餌食になっていた。ドローンさんグッジョブ。


 自分で出した技なので、玉ちゃんは自ら雲を解除して雨から逃れた。炎天下の中全員ずぶ濡れというすごい状況で俺たちは対峙する。これが真冬なら、全員風邪ひき決定だったぞ。

「まさか、召喚獣を使うとは、やりますわね」

「妖怪が召喚獣なんて概念使って大丈夫かよ」

 それ、明らかにファンタジー生物の気がしますが。

「ですが、私の技を打ち消しただけでいい気になってもらっては困りますわ。まだまだ勝負は決していませんもの」

「それはどうかな。俺のこの技の前では、ユーはミーに勝てませぇん」

 とんでもない技を会得したおかげで上機嫌になる俺であった。さて、今度は玉ちゃんを倒すための秘技を生み出してやろう。頼むぜ。


「不可解な鼻息アンビリバブル・スノース


 再び鼻息を吹き出そうとすると、さっきよりも巨大な物体が鼻につかえていた。この技、いちいち鼻くそ詰まりになるのが悩みの種だな。俺は懸命に鼻息を噴出し続け、ようやくその物体を飛ばすのに成功する。

 それはロケットのようなものだった。いや、ロケットそのものかもしれない。鼻の穴から絶え間くその姿を現し続けるそれは、全長が三十メートルに達しようとしていた。

「ちょっと、こんなの聞いていませんわ」

 玉ちゃんは逃亡姿勢に入っている。ずぶ濡れなのか、自ら海へと入水していっているのだ。あれって、あのまま入水自殺しそうなパターンだよな。このまま放っておいても倒せるんじゃ。


 しかし、一度出した物体を止めることはできそうになかった。俺の鼻から生み出された超巨大なロケット。いや、これはもはやミサイルか。とにかく、とんでもないそれは全身を現すと同時に、玉ちゃんへと一直線に飛来していった。


「タミーッ」

 謎の断末魔の叫びをあげ、爆撃と共に玉ちゃんは海へと散った。あのさ、これはやりすぎだろ。ガチでアンビリバブルだよ。

(馬神様、俺って一体何を出したんですか)

(あれは中距離弾道ミサイルじゃな。テポドンと言った方が分かりやすいか)

(今度は国際問題になりそうなものを生み出してしまった)

 一応、日本三大妖怪は全滅したのだが、さすがに玉ちゃんには同情を禁じ得なかった。モードペガサス。俺はとんでもない力を手にしてしまったのかもしれない。

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