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俺、土砂降りに遭います

 さて、強敵であるティンティン丸を倒したことだし、次なる目的地に向かうとしますか。

「なあ、これからどうする」

「決まってるでしょ、トノサマを倒しに行くのよ」

「そうですわ、目指せ、天守閣ですわ」

「そなたたち、お待ちになって」

 聞き慣れぬ声がした気がしたけど、それはさておき、俺たちの目標は天守閣だ。ここからだと、馬車を使って数十日はかかるらしい。いや、それってかなり遠くない。


「なあ、ここって新幹線とかないのか。日本大好きのトノサマだからそれくらい作ってるだろ」

「新幹線って何? 養分が詰まってるなら根こそぎいただく」

「私も聞いたことがありませんね」

「そうか、ないのか。うーん、残念だ」

「えっと、ちょっと、お待ちになってもらえないでしょうか」

 なーんか、うっさいな。さっきから会話にノイズが混じってるような。まあ、それは置いておいて、そもそも鉄道自体存在していないらしい。いくらトノサマとはいえ、新規で交通インフラを整えるまではいたってないのか。

 それでも、馬車で数十日かかる場所にまで大日本万歳計画を浸透させているんだから侮れないよな。さすがは五十三万バカと言うべきか。


「ここで雑談してても仕方ないだろ。ババ、さっそく馬車を引いてくれ」

「嫌だと言ったら」

「養分奪う」

「私のへ……」

「それ以上は言うな。馬車引いてやるから黙っててくれ」

「それより前に待ってくれませんかね」

「いや、待つって、ここには用事がないだろ」

 もう、うっさいな。要件があるならさっさと言ってくれ。


「待て言うとるやろうが、オンドリャアアアアアアアアア」


 突然怒号が響いたんで、慌てて俺たちは振り返る。そこには、狐のケモ耳姉ちゃんが肩を震わせて睨んでいた。あ、そういやこいつもいたっけな。ティンティン丸にかまけてて忘れてたよ。


「ごめんごめん、一旦ごめ~ん。ガチで存在忘れてたよ」

「日本三大妖怪紅一点の私を忘れるなんて、いい度胸ですわ」

「えっと、十〇夜九〇門だっけ」

「玉ちゃんでございまする」

 そうそう、玉ちゃんだ。やれやれ、面倒くさいな。とっととこの勝負も終わらせて次の町にいくとしようか。


(馬神様、ステータスお願いします)

(後半へ続く)

(まだ続きませんよ。っていうか、ち〇まる子ちゃんなんて見てなくていいですから)


妖狐 玉ちゃん 6200バカ

狐の嫁入り(バイウ・ゼンセン)


 嘘だろ。こいつ、終点童子やティンティン丸より強いじゃないか。これはまた長期戦になりそうな予感。


「この私をコケにしたこと、後悔させて差し上げますわ。狐の嫁入り(バイウ・ゼンセン)」

 そういうと、玉ちゃんはいきなり正座して、両手を地面についた。どうしたんだ。これから儀式でも始めるつもりか。あまりにも神妙な雰囲気に俺たちはたじろぐばかりだ。

 そして、カッと目を開いたかと思ったら、急に両手を上げて大声で叫んだ。


「あーーーほいやああああああああああ、あーーあーーーー」


 こ、この光景は見覚えがある。かのラーメン屋を経営している落語家が習得しているという伝統芸能。座布団を取られるフラグでしかないこの技をいきなり披露するとは。こいつ、できる。

 だが、この勝負は力と力のぶつかり合い。座布団なんか関係ないぜ。そんな珍妙な儀式を披露したところで痛くもかゆくもない。


 そう啖呵を切ってやろうとしたが、いきなり鼻先に雫がこぼれ落ちて来た。別に、泣いてるわけじゃない。むしろ、ここまでの流れのどこに感涙する要素があるのか。あったなら教えてほしい。

 やがて、その雫は大粒の雨と化し、俺たちに降り注いでくる。いや、あり得ない。こんな現象があっていいはずがない。曇天が辺り一面を覆っているなら話は別だ。でもさ、見上げてごらん、この空を。


 辺り一面晴天じゃないか。


 清々しい海水浴日和だというのに土砂降り。しかも、俺たちがいるところのみを集中的に狙ってきている。

「いきなり雨だなんてついてないわ。これなら水着のままの方が良かった」

 アドマイヤよ、そこを嘆く必要はないと思う。だってさ、この雨、次第に息をするのもつらくなるほど強まってきてるもん。

「植物にとって水は大事。でも、やりすぎると毒」

 マンドラゴラであるマン・ドラ子でさえお手上げの始末。くそ、冗談抜きで体が重くなってきたぜ。


「思い知ったかしら。私は自在に雨を操ることができるの。まさに、狐の嫁入りってね」

 説明しよう。狐の嫁入りとは、晴れているにも関わらず雨が降る現象のことである。なんてうんちくは置いといて、とにかくこの雨をどうにかしないと話にならない。

「奇跡の鼻息ミラクル・スノース

 困った時の神頼みってね。さて、雨をどうにかできるやつを出してくれよ。そう願掛けしながら、俺は大きく鼻から息を噴出した。


 すると、スポっという小気味よい音とともに、ピンク色の球体が転がった。それが鼻から出る瞬間、なんとも甘ったるい香りが体内へと澄み渡ってきた。これは、桃の香りかな。

 いや、問題はこの変な球体だ。一体何を出したんだ、俺。

(バカじゃのう。こんな時に飴玉なんか出してどうする)

 完全にスカじゃねえか。飴玉って誰も喜ばねえよ。

「おババ様が生み出した飴玉ですって。例えどぶに落ちようと舐めさせてもらいますわ」

 若干一名の変態を歓喜させただけでした。


「こうなりゃ直接本体を叩くしかない。海王帝邪神の弾丸ポセイディア・バレット

 俺は玉ちゃんへ尻を突き出し、ウニを連射する。最初からこうしておけばよかった。あんな華奢な野郎が、バフンウニ連弾を躱しきれるわけないだろ。


 なんて高を括っていたが、玉ちゃんは一笑するや踊るようなステップを披露した。土砂降りで視界がはっきりしない中でも眼目に焼きつくような美しき舞。それでいて、俺のバフンウニを全発回避している。まじかよ、こいつ、ティンティン丸以上にガチの強敵じゃないか。

「私を無視した罰です。そのまま雨の勢いで窒息してしまいなさい」

 しかも、ガチで殺しに来てるし。バカっぽく見えても性根は妖怪。平気で外道なことを仕出かす輩だったか。


「終点童子やティンティン丸はどうしてこんなやつらにてこずったのかしら。全く歯ごたえがないじゃありませんか。

 このまま倒すのもつまらないですし、あなた方にヒントをあげますわ。この雨は、上空に疑似的に出現させた透明雲によって降らせていますの。それを壊せば止ませることはできますわ」

「カラクリを教えるなんて、随分余裕だな」

「ええ。知ったところで、あなた方ではどうすることもできません。だって、飛べない馬はただの馬ですし」

 ぐほぉ。至極当たり前だけど痛すぎるところを突かれた。そうだよ、馬が飛べるわけないじゃないかよ。くそ、空さえ飛べればどうとでもできるのに。


「アドマイヤ、空を飛ぶ方法ってないか」

「そんな無茶ブリされても困るわよ」

「心臓を止めれば魂は空へ行く」

「二度と戻ってこないからやめようね」

 マン・ドラ子も性根がモンスターだから思考が物騒すぎるな。


(空を飛ぶ方法か。そんなの簡単じゃ)

 馬神様が唐突にそんなことを言い出した。いや、簡単って、できるならとっくの昔にやってますよ。その方法が分からないから苦労してるんじゃありませんか。

(そんな難しいことではないぞ。モードユニコーンとほぼ同じ力を持つ別のモードを使えばいいのじゃ)

(別のモードってそんなのあるんですか)

(もちろん。その名も、モードペガサス)

 モードペガサスか。この状況におあつらえ向きすぎる能力だ。ただ、ユニコーンのことを思うと、素直には喜べないんだよ。まあ、こいつに賭けるしかないけどさ。

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